近未来のテクノロジーについて議論しようとするとき、まず疫学について話さなくてはならないのは決していい兆候ではない。しかしながら、今はその時だと言わざるをえない。1週間前私は「パンデミックがやってくる」と書いた。残念ながら、それ以来私が間違っていたことは証明されていない。
現時点の推測では、中国のような厳格な措置がなされないかきり、コロナウィルスは今後一年のうちに世界の成人の40〜70%に感染する(ただし、これは非常に重要なことだが、ほとんどのケースで症状は軽微あるいは無症状である)。
当然さまざまな疑問が湧いてくる。最も重要なのは「伝染を阻止することはできるのか?」ではない。答えはすでに明確なノーだ。最も重要なのは「伝染は速いのか遅いのか?」だ。この違いは極めて重要だ。先週のツイートとグラフを再掲する。
急激に立ち上がっているように見える曲線は、医療システムに過大な負荷がかかるリスクを生み、あらゆる状況を悪化させているが、実際には感染者のうち医療措置を必要とする割合はごくわずかだ。幸い、少なくとも私にとって優れた医療システムと強力な社会一体性、そして有能な指導体制のある国では、曲線を対応可能な勾配まで引き下げられる可能性が高い。
残念ながら、筆者のようにこの世界一裕福な国に住んでいる人には、上記3つの条件が「ひとつも」当てはまらない。しかしここは楽観的に米国の強大な富が最悪のシナリオを回避してくれると仮定しよう。それでどうなるのか?
では、世界のサプライチェーンは破綻しているのか、および、人々の多くは引きこもり生活を行っているかを月単位で見てみよう。前者はすでに始まっている。
ロサンゼルス港では、コロナウィルスが船舶運航と海外サプライチェーンに与える経済打撃によって今月のコンテナ量が25%減少すると予測している。4つに1つ、アジアからの輸入品が突然来なくなることを想像してほしい。影響はもう始まっている
需要と供給の同時ショックを前にして、不況を避けられることは想像できない。さらに、もしCovid-19が伝染したニュースが出るたびに株式市場が数%下がり続けるとすれば、1~2カ月のうちにダウ平均株価は300、FTSEは75になっているかもしれない。しばらくの間その手のニュースは定常的にやってくると私は予想している。トレーダーたちもいずれ気づくだろう。では、テクノロジー、そしてテック業界には何が起こるのか?
わかりきったことは、リモートワークやコラボレーションを可能にしたり便利にしたりするテクノロジーは成長する。バイオテクノロジーとヘルステックは新たな注目を浴びるだろう。しかし、全般的にみて、これが世界中のテクノロジーによる変化を加速するだろうか?
1年と少し前、私は「テクノロジー・スタートアップは景気後退に備えよ、今やるべきことはこれだ」という記事を書いた(専門家は2019年終わりか2020年始めと予測した)。拙文を以下に引用する。
一方、「ソフトウェアが世界を食い尽くす」現在、すべての産業はソフトウェア産業になりつつあるので景気後退はこのシフトを加速する」という理論がある。こうした過激なディスラプトによって苦しめられる個人の数を考えると無条件に喜ぶことはためらわれる。しかし一部の起業家はこのプロセスから利益を得るし、長期的かつマクロの観点からはこうした展開はあり得る。景気後退は隕石の衝突のようなもので、それが恐竜を滅ぼし、身軽な哺乳類―ソフトウェア企業―の繁栄をもたらすかもしれない。
仮にこうした理論が事実であっても、多数の個別企業が激しく揺さぶられることは間違いない。起業家は支出を抑えることが至上命題となる。長期的には大きな価値を生む可能性があるが、短期的には利益を生まないプロジェクトはまっさきにコストカットの対象になるだろう。消費者は財布の紐を固く締めるようになるだろうし、アプリを購入したり広告をクリックしたりする回数は現象するだろう。誰もが万一に備えてキャッシュを後生大事と抱え込み、リスクの大きい投資をしなくなるだろう。
どれをとっても、経済的でなく物理的ショックによって起こる不況より重要でないとはいえない。私が予想するに、不況は比較的短期で急激にやってくる。そして今度はパンデミックと景気後退が事実上同時に起きている。しかしそれまでの間、怖くなるほど面白い月日を経験することになる可能性は高い。面白さの度が過ぎないことを願うばかりだ。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook )