世界中の風景を楽しめる“未来の窓”の新型がMakuakeに登場、京都のアトモフが開発

自宅マンションの一室、実家のリビング、オフィスの会議室。そこがどんな場所であっても、たった1台の“窓型スマートディスプレイ”を設置するだけで「世界中の美しい風景」を眺めることができたらどうだろうか。

実際にその場所を訪れた感覚と全く同じとまではいかなくても、それに近しい感動や日常にはない癒しを得られるかもしれない。

そんな体験を味わえるプロダクトを開発しているスタートアップが京都にある。元任天堂の2人の起業家が立ち上げたアトモフだ。

以前紹介した通り同社では2015年に「Atmoph Window(アトモフウィンドウ)」を発表。クラウドファンディングサイトのKickstarterで約2000万円、Makuakeで約680万円を集めた。

その初代モデルのお披露目から約4年。「Atmoph Window 2」として大幅にバージョンアップした新モデルが本日5月23日、Makuake上に登場した。

先駆けて実施していたIndiegogoのプロジェクトでは目標額を大きく上回り、約5000万円(約45万ドル)を調達。世界の風景を楽しめるのはもちろん、スマートウィンドウを謳っているように、普通の窓にはない機能も搭載されている。

デジタル窓から楽しめる1000本以上の風景動画

Atmoph Windowの大きな特徴は、美しいオーシャンビューからロマンチックな夜景、落ち着いた森の中、爽快感の味わえる草原まで世界各国1000本以上の風景を4K動画として楽しめること。

動画はアトモフが独自に撮影してきたオリジナルのもので、同じ場所から撮影した15分程の風景がループされる仕組みだ。最初から10本の風景動画がインストールされていて、そのほかの動画については1本590円で購入する。

実際に窓から景色を見た体験に近づけるため、静止画ではなく動画にしている点がポイント。3台の窓をつなげて「より大画面で迫力のある世界を楽しむ」、なんて使い方もできる。

スマートディスプレイらしく、映像以外にも時間や天気、カレンダーを表示することも可能。Googleカレンダーと同期しておくことで、忙しい時に効率よくスケジュールをチェックするためのツールとしても活躍するだろう。

アトモフの創業者でCEOを務める姜京日氏によると、初代モデルはこれまでに累計で約2000台ほど売れているそう。内訳としては個人が7割、残りの3割が法人。自然から離れた都市部の在住者でなく、地方も含めて広いエリアにユーザーがいる状況だ。

法人ではオフィスのほかクリニックの待合室や診療室、JAXAの宇宙センターなどにも置かれているという。

そもそもAtmoph Windowを開発するに至ったのは、姜氏自身が学生時代にアメリカへ留学していた際に「部屋の窓から見える景色がいつも同じで変わり映えがなく、悶々としていた」ことが1つのきっかけになっている。

当時はPCのデスクトップを変えたりDVDで映像を流してみたりしたが、なかなか腹落ちしなかった。その後も最適な形を模索する中でたどり着いたのが、デジタル化した窓型のディスプレイだったという。

「風景映像を配信しているプレイヤーは他にも存在するが、今は一般家庭でそのコンテンツを見る媒体がテレビくらいしかない。自分たちも『テレビではダメなんですか?』と言われることもあるが、そうなると普通にテレビ番組を見たい時には使えないし、実際の窓のような開放感や癒しの効果を生み出したい場合には適していない。だからこそ、それに最適なハードウェアが必要だと考えた」(姜氏)

今回発表したAtmoph Window 2はこの初代モデルにさらに磨きをかけ、よりリッチな体験をできるようにしたものだ。

カメラやスピーカーのアップデートでより実物に近い感覚を

ディスプレイの大きさ自体は27インチと大きな変更はないが、今回のモデルではフレームを変えたり、カメラモジュールやライトモジュールを付けたりといったように色々な追加オプションが用意されている。

中でも姜氏が「1番大きなアップデート」と話すのがカメラモジュールだ。これを取り付けるとセンサーがユーザーの顔の位置を認識。どの角度から窓を眺めているのかを把握した上で、ディスプレイに表示される風景が連動して動くようになった。

「実際に窓から景色を見る場合、その位置やのぞき方によって景色の見え方も変わる。これは本当の窓にはあって、既存のAtmoph Windowにはなかった体験。顔認識をできるカメラの搭載で、よりリアルな世界に近い体験を楽しめるようになる」(姜氏)

ちなみにこのカメラは外出先から自宅の様子を確認するインドアカメラにもなるそう。たとえばペットが自宅で留守番している時など“見守り用途”でも活用できる。

そのほかハード面では「窓辺から木漏れ日の光を浴びるような体験に近い感覚を味わえる」(姜氏)というLEDライトモジュールが追加されたことに加え、スピーカーもアップデートされている。

内臓のスピーカーが2個に増えたほか、画面全体を揺らす振動スピーカーを搭載。ナイアガラの滝や波の音をよりリアルに感じられるようになった。もちろんこのスピーカーを用いて、BluetoothやSpotifyで好きな音楽を、好きな景色とともに楽しむこともできる。

ソフト面では視聴できる映像の幅が広がった。アトモフが提供している風景動画に加えて、自分で撮影した動画もアップロードできるようになる。

実家から見える慣れ親しんだ景色や生まれ故郷の癒される風景、新婚旅行や家族旅行で訪れた思い出の場所など、自分にとっては貴重な映像をデジタル窓を通じて再び味わえるという。

また過去に撮影した映像だけでなく、リアルタイムの様子がわかるライブストリーミング機能も追加される。

初代モデルよりも安い約4万円で提供

Atmoph Window 2はMakuakeでは3万円代から、10月を目処にしている一般販売時には4万6800円で提供する予定。初代モデルが約7万円だったことを考えると、そこからかなり価格を抑えたことになる。

同社にとってはハードウェア自体の普及が進めば、風景などのコンテンツで利益を出してビジネスを拡大することもできるのでプライシングは非常に重要な要素だ。

「まずは1人でも多くの人に手にとって体験してもらうことが重要。それを考えた時に7万円という価格はハードルが高かかった」(姜氏)ため、本体は初代よりもかなり安く販売する計画。一方でフレームや追加モジュールなどオプションを用意して、各ユーザーが用途に応じて楽しめる設計にした。

「(据え置き型のタブレットのような形で)去年頃からスマートディスプレイが徐々に増え始めているが、現時点ではそれを使って何をしていいのかがはっきりせずにユーザーもメーカーも困っている状況。個人的には1つの鍵になるのが『大きさ』だと思っていて、大きな画面だと視認性が良くなり、家族みんなで楽しむことができる」

「一方でテレビのように大きな黒い画面を壁に誕生させるのはインテリアとしてあまり良くないので、常に何かを写しておく必要がある。そこで想起されやすいのが『窓』や『アート』だが、アート作品の上にカレンダーなどの情報を表示するのは作者に失礼すぎて難しい。そう考えると大きいスマートディスプレイは必ず窓になるという仮説を持っているので、(それを示していく上でも)今回のプロダクトは非常に大きなチャレンジだ」(姜氏)

アトモフのメンバー

投稿者:

TechCrunch Japan

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