中国で自動運転レースが過熱する中、配車サービス大手のDidi(ディーディー、滴滴出行)はUber(ウーバー)の元パートナーであるスウェーデンの自動車メーカーVolvo(ボルボ)を味方につけてフリートの拡大を急いでいる。
Didiは中国時間4月19日、2010年から中国の自動車会社Geely(ジーリー、吉利汽車)の傘下にあるVolvoのXC90 SUVを、同社ロボタクシーのグローバルネットワークに長期的に使用すると発表した。Didiは2020年、自律走行に特化した子会社を設立し、その後、SoftBank Vision Fund(ソフトバンク・ビジョン・ファンド、SVF)やIDG Capitalなどの投資家から約8億ドル(約865億円)を調達している。この子会社は現在、500人以上の従業員を擁する。
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Didiは2012年にライドシェアアプリとしてスタートし、2016年にUber Chinaを買収した。現在では、タクシー配車、自家用車の手配、ライドシェア、自転車シェアリング、スクーターシェアリングなどのモビリティサービスに加え、ドライバー向けの金融サービスも提供している。ロイターが2021年3月に報じたところによると、同社は新規株式公開(IPO)で1000億ドル(約10兆8000億円)を超えるバリュエーションを目指しているという。
Didiの自動運転部門は過去2年間、中国と米国でロボタクシーのテストを行ってきたが、VolvoのXC90モデルは、Didiが開発したばかりのGeminiと呼ばれる自動運転ハードウェアシステムを初めて採用することになる。Geminiには、短距離・中距離・長距離用LiDAR、レーダー、カメラ、サーマルイメージャなどのセンサー、フォールバックシステム、そして5Gネットワークを通じたリモートアシスタンスが含まれている。
Didiは、GeminiプラットフォームとVolvoのステアリング、ブレーキ、電力などのバックアップ機能を組み合わせることで、最終的には同社のロボタクシーが安全ドライバーをなくすことができると述べている。走行中に主要システムのいずれかで障害が発生した場合、Volvoのバックアップシステムが作動して車両を安全に停止させることができるという。
DidiはPony.ai(ポニーAI)やWeRide(ウィーライド)といった、中国の主要都市やカリフォルニア州でのテストを盛んに進めると同時に、自動運転レベル4を目指して多額の研究開発費を投じている、資金力のあるロボタクシースタートアップと競合している。同じく中国のロボタクシー企業であるAutoX(オートX)はつい先週、中国でのテスト走行にホンダのACCORD(アコード)とINSPIRE(インスパイア)のセダンを使用すると発表した。Didiの強みはアジア、ラテンアメリカ、アフリカ、ロシアにまたがるネット配車事業で蓄積された山のような走行データだと指摘する向きもある。
また、Nio(ニオ、上海蔚来汽車)やXpeng(シャオペン、小鵬汽車)といった新興EVメーカーも自動運転レースに参入しており「自分たちも近いうちに安全ドライバーをなくすことができる」と豪語している。一方、従来の自動車メーカーも遅れをとるまいとしており、例えば中国政府系の大手メーカーBAIC(北京汽車)は、Huawei(ファーウェイ)の高度な自動運転システムとスマートコックピットを搭載した新型EVを発表している。
カテゴリー:モビリティ
タグ:Didi、中国、Volvo、ロボタクシー、電気自動車
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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)