アプリの名前がすべてを物語っている「Remove China Apps」(中国アプリを削除)。
インドのスタートアップを自称するOneTouch AppLabsが開発したこのアプリは、5月に公開されて以来10日間で100万回のダウンロードを超えた。突然の成功はヒマラヤ山脈の国境を巡る激化する中国とインドの抗争が背景にある。
アプリのインストール先はほとんどがインド国内だが、アプリ調査会社のApp Annieの分析データによると、ここ数日オーストラリアでも勢いを増していてAndroidのツールアプリ部門で第5位に上昇した。
使い方は単純で「scan」をタップすると、中国アプリがなければ祝福メッセージが、TikTokなどの中国由来アプリがあれば、それらのアプリのリストが表示される。
インドは中国テック企業の海外進出先として世界のトップクラスにある。Xiaomi(シャオミ)とOppo(オッポ)は一時期当地の携帯電話市場を支配(Counterpoint記事)していたし、インドの有力Androidアプリのかなりの数を中国企業が開発したことは、TechCrunchのJon Russell(ジョン・ラッセル)が強調していた。しかしムードは一気に反中国に変わりつつあり、政府はスタートアップに対して中国投資家を通じて調達した資金は厳しい監視を受けると伝えた。
Google PlayでのRemove China Appsの評価は、約18万件のレビューで星5つ中の4.9と満点に近い。アプリの出自は市場調査に基づいて決めることができると開発元は述べているが、結果の正確性は保証していない。印のついたアプリを削除するかどうかはユーザーの判断に任されており、非商業的利用のためのサービスだと説明している。
急激な人気の一方、アプリの背景は謎めいている。会社のウェブサイトはWord Pressベースのシンプルなもので、Remove China Appsは同社初の製品とのこと。これは「モバイルおよびウェブアプリケーションのデザイン、開発、管理で8年以上の経験をもつ」としている壮大な宣言と比べてずいぶんと迫力にかける実績だ。
開発者が何をもって「中国アプリ」とするかの定義もはっきりしない。例えば、国外の中国人が開発したアプリは警報を発するのか?中国企業の海外で完全現地化している子会社は?ユーザーが試したところ米国のビデオ会議の巨人であるZoomに印をつけた。創業者のEric Yuan(エリック・ヤン)氏が中国生まれの米国市民であるという事実によって、Zoomが「中国アプリ」になったのだろうか?一方で、スマートフォンに標準搭載されている中国アプリのように明らかな標的を見つけ損なっている。
本稿執筆時点で「中国アプリ」を見つける手法に関して会社から返答はない。ただし、ユーザーからどんな情報を収集しているかは、端末の機種、言語設定、製造元、アプリのバージョンやパッケージ名などオンラインで公表している。
アプリは国際市場をターゲットにしている中国の開発者の間で白熱した論争を呼んだ。Baising誌や中国のアプリ輸出業者の人気オンラインコミュニティーであるBeluga Whaleは、Remove China Appsは「一種の市場破壊」であると報じ(白鲸出海記事)、中国の開発者はこのアプリをGoogleに通報するよう呼びかけている。
海外で高まる反中国感情を心配する向きは多い。あるアプリ輸出業者の創業者は私に「インドで起きていることは将来他の国でも起きると思っているので、これは中国デベロッパーを評価する際考慮に入れるべき長期的な影響因子だ」と語った。
中国デベロッパーには安心材料もありそうだ。検出アプリのユーザーたちはその使命を称賛しながらも、特定の中国アプリに代わるアプリがないことに対する不満は少ない。ちなみに、ユーザーの間で代わりとして推奨されているインド原産のトップ企業にJio Platformsがある。豊富な資金をもつRelianceの子会社(未訳記事)でさまざまなモバイルアプリを運用している。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook )