目の動きでコントロールできる仮想現実(virtual reality, VR)ヘッドセットFOVEが、Kickstarterで予約販売を開始した。この東京のスタートアップは、昨年のTechCrunch Disrupt San Franciscoでファイナリストになり、今回Kickstarter上では締め切りまで44日を残す今日(米国時間5/20)、目標額25万ドルの2/3以上を達成している*。〔*: 日本時間5/21 12:00では21万ドルを突破。〕
FOVEという名前は網膜の中心を意味するfoveaに由来し、消費者製品としてのアイトラッキング(eye-tracking, 目を追う)VRヘッドセットはこれが世界初だ、と同社は主張している。
FOVEはfoveaを中心とするレンダリングを行うことにより、ユーザが今見ている方向の光景を高精細で描画する。協同ファウンダでCEOのYuka Kojima(Sonyエンタ出身)によると、高精細の描画を視界の中心部に限定して、レンダリングのための計算力を節約すると、スマートフォンなど、強力なPC以外のデバイスでも駆動できるようになる。
またゲームにおいては、プレーヤーがキャラクターとアイコンタクトをしたり、銃の照準を敵に合わせる、などのことができる。したがって、ゲームの没入性が増強される。
ゲームをFOVEに移植するためのSDKが来年リリースされるが、このヘッドセットの用途はゲーム以外にもっと広い。
たとえば、運動ニューロン疾患(ALSなど)の子どもが目でピアノを弾けるソフトウェアを、FOVEなら実装できる。同じく運動失調の人が、目でキーボードをタイプしたり、ゲームをプレイしたりもできるだろう。日本の研究者たちは、アスペルガー症候群や自閉症の人たちを支援するために、FOVEのアイトラッキング技術を利用することを、研究している。
このヘッドセットは、2016年5月の発売を予定している。Kojimaがこのスケジュールに確信を持っているのは、東芝とSamsungが“ハンズオンで”支援しているからだ。ディスプレイなどの主要部位は、彼らが作ってくれる。実動プロトタイプはすでに数種類あり、Kojimaによると、Kickstarterで集まったお金はアイトラッキング技術の磨き上げに投じる。とくに、両目の距離など、人の顔立ちの違いに合わせることが難題だ。また、使用している赤外線の安全対策にも取り組んでいる。製造は、そういうテストが完了してから開始される。
FOVEの昨年のDisruptでのプレゼンを、ここで見ることができる。