週の大半をたまたまアブダビで過ごしていた私は、今週、今月、今年、いやこの10年で最も重要なニュースに都合よく遭遇した。そう、アメリカの選挙以上。待ち望まれる機械学習の進歩以上。Elon Muskの宇宙旅行と電気自動車のワンツーパンチ以上 ― だが、それに関係している。
もちろん私が言っているのは、Ramez Naamがエレガントにこう表現しているもののことだ:「地球上のあらゆるテクノロジーを使ったものの中で、史上最も安い電力」。そしてその信じられないほど安いエネルギーの源が、この石油にまみれたアラブ首長国連邦、ペルシャ湾の縁、世界の石油の1/5が眠るこの地のどこににあるというのだろうか。
そう、ご想像の通り。ソーラーパワーだ。〈助成金なし〉のソーラーパワー。
Naamの記事を通読して、その想像を越える内容を考えてほしい。今起きているソーラーパワー価格の急落を「並外れた」と呼ぶのは控え目すぎる。これは「革命的」と呼ぶにふさわしい。
The Economistの観測によると、ソーラー電力の価格は過去6年間に80%下がっている。〈80%!〉だ。一方、Tesla、GMを始めとする、電気自動車メーカーのおかげで、「発電」は、ゆっくりと ― しかし確実に ― 「電気自動車推進」の同義語になりつつある。
しかし重要な疑問は、〈どれほど〉ゆっくりなのかだ。どうやら人類は、使い尽すよりずっと前に、化石燃料から離れられそうだ。しかし、それだけでは十分でない。今われわれが突進している崖は、もっとずっと近くにある。
New Republicが書いているように、人間が壊滅的な気候変動を避けたければ、「現在運用されている炭鉱とガス田は、取り尽くすよりずっと前に全面閉鎖する必要がある」。
安価なソーラー(および風力)電力でそれが可能になる日は来るのか?おそらく来ない。エネルギーの生成だけでなく、エネルギー〈蓄積〉のブレークスルーが必要だ。(加えて、少なくとも可能性としては、原子力発電の大幅な増加も)。
そこには、劇的なアイロニーがいくつかある。もちろん一つは、湾岸の産油諸国が再生可能エネルギーの最前線にいること。
…そしてもう一つ、今人類は、太陽がわれわれの文明を焼き尽くすのと、同じ太陽が、われわれをその運命から救ってくれるのと、どちらが先かのレースのさなかにいること。
これは、人類が自らもたらした脅威として、初めて直面するものでも最大のものでもないが ― それは冷戦中の核兵器の脅威だったろう ― 最も扱いにくいものであることは確かだ。それでも明るく振舞っていられる理由がある。つまるところ、安いソーラーエネルギーは空から降ってくるドーナツようなものだ。長期的な「コモンズの悲劇」を招くことなく、長期的に主要なエネルギーが供給される世界は、少なくとも〈存在しうる〉。
何よりも、今週のニュースの出所が象徴的だ。もしアラブ首長国連邦がソーラーエネルギーを活用し、油田の上に立つ国から投資と貿易と移民を糧とする国へと、徐々に変わることができるのなら ― 他の国々にも間違いなくできるはずだ。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook)