事前のリークが正確になってきて発表の驚きがなくなった、と言われながらも話題は尽きることのないiPhone。驚きは少なくても、結局リークの分だけ騒ぎ(=記事)が続く期間は増えている気がする。今週もiPhoneの話題は止まらなかった。
iPhone折曲げ狂騒曲
iPhone 6/6 Plusの売れ行きは新記録―発売直後の週末で1000万台というのは、今や殆ど「ニュース」とも言えないだろうが、ブログ界を一番喜ばせたのは、iPhone 6/6 Plusが「曲がる」という、いわゆる「Bendgate」事件だろう。
(蛇足ながら「xxxgate」というのは、1972年に始まった政治スキャンダル、「ウォーターゲート事件」に由来する。Appleに関連してこの表現が使われたのは、おそらくiPhone 4発売直後に起きた「antennagate」が最初)。
Jordan Crook記者は、「iPhone 6 Plusは、曲がる」という記事で、Apple製品が発売されるたびに、ささいな問題を大きく取り上げて騒ぐことが恒例になっているとして、あちこちに掲載された「曲がったiPhone」の写真を紹介した。
その2日後には、Appleが「iPhone 6/6 Plusが曲がったという苦情は10件未満」という声明を発表し、iPhone 6/6 Plusが十分な強度を持ち、厳しいテストに耐えたものであることを明言した。
並行して、YouTubeの投稿者による、スマホ折り曲げ対決:iPhone 6 vs HTC One M8 vs Moto Xなる「あまり科学的とは言えない」テストも行われたが、その後Consumer Report誌が本格的な強度試験を行い、いずれの端末にも強度的問題はないことを「科学的に示した」こともあってか、騒ぎは驚くほど早く収束したようだ。
iOS 8.0.1に重大なバグ
Apple、iOS 8.0.1アップデートの公開を中止。iPhone 6/6 Plusに重大障害が発生
新型iPhoneが発売されてから1週間もたたない9/24(米国時間)に公開されたOSアップデートに致命的バグがあり、一部のユーザーは通話、指紋認証等が行えなくなるという大きな問題が起きた。Appleは障害を認識し、直ちに公開を中止すると共に、修復方法を提示し、Apple Storeでも対応した。結局翌日にはAppleが謝罪を添えてiOS 8.0.2の提供を開始した。
・公開されていた期間は約1時間のみ(日本では深夜)
・該当機種はiPhone 6/6 Plusのみ
・WiFi経由のアップデートのみで発生する
など、条件が比較的限られていたため、影響を受けたユーザーは全世界で4万人程度と推定されている。
日本では深夜ということもあり、被害にあったユーザーはごく少数と思われるが、テレビや一般紙でも報道され、そこには詳しい情報が省かれていたため、多くの人がアップデートをためらう結果となった。
iPhoneカメラの変遷
先週の「まとめ」では、Umihiko Namekawa氏が「新iPhoneはカメラがすごい」と書いていたが、ここでは「iPhoneカメラの世代別比較、これはわかりやすい!」をご紹介したい。
これまでに発売されたiPhone全8世代、それぞれて撮影した写真を並べて比較できる。上の写真でも雰囲気はつかめるが、オリジナルの完全インタラクティブ版比較画像がおすすめだ。
他には、先週「iPhone 6のカメラでコンデジを捨てる決心がついた」と書いたEtherington記者に続いて、実は「プロのフォトグラファーだった」と言うPanzarino記者が、「ついにiPhoneのカメラがマニュアル操作可能に―アプリはその名もManualがオススメ」を書いている。最新iPhoneでなくても、iOS 8からカメラの内部機能がサードパーティーに公開されたため、マニュアル操作できるカメラアプリが作れるようになったそうだ。
聴覚障害を越える技術
今週紹介されたKickstarterプロジェクトはちょっと感動的だった。
耳の聞こえない人でも電話できるようになる「RogerVoice」は、聴覚障害者が電話て会話するためのアプリだ。相手の声がリアルタイムでテキスト化して表示される。
プロジェクトのファウンダー、Olivier Jeannelは聴覚の80%を失っている。そんな自分を含めて世界中の耳の不自由な人にも電話を使えるようにしたいと考え、プロジェクトを立ち上げた。
システムは一種のVoIPサービスとして動作し、通話の音声をサーバーで捕獲し、サードパーティー製の音声テキスト変換ソフトを使って「リアルタイム」にテキスト化する。聞こえない人の側は専用のアプリ(Androidのみ、将来はiOS、Windowsも)を使うが、相手側はアプリを必要としないので、誰とでも話すことができるのが特長だ。リアルタイムという点がポイントだが、Kickstarterページ説明によると、ニューヨーク、ロサンゼルス間の通話は、通常でも67ミリ秒の遅延があり、RogerVoiceでテキスト変換を行ってもそれが100ミリ秒に増えるだけだという。
Kickstarterでは、2万ドルを目標にしているが、現在23日を残して1万6387ドルと、まだゴールに届いていない。プレッジ(寄付、出資)に物質的見返りはなく、純粋な寄付または名誉のみが返ってくる。私(高橋)も、本稿を書いている最中にページを見に行き、思わずささやかながらプレッジしてしまった。
ちなみに、記事を翻訳したHiroaki Maeda氏は、Kickstarterのビデオを見ながら涙を流してしまったそうだ。
聴覚障害者以外への応用も期待できる。成功してほしいものだ。
Elloは広告のないSNS
広告のない(ユーザデータを利用しない)ソーシャルネットワークElloが突然急成長。
Elloは今年3月にスタートしたソーシャルネットワークサービスで、あまり話題になることもなく忘れられていたが、先週突然爆発的に賑やかになった。広告がない(ユーザーのデータを利用しない)こと以外にさしたる特徴もないのだが、急成長の要因の一つは、「本名と‘ペルソナ’名の両方を持つLGBT(同性愛者、両性愛者、性転換者等)ユーザに対する、Facebookの厳しい態度だろう」とも言われている。
マイク・ブッチャー記者は、「まともなVCは寄り付かないかもしれないが、それがどうした。人が集まれば、それで十分じゃないか」、「短期間にユーザが急増したことは、きっと何かを意味しているのだ」と応援しつつも、「でもFacebookやTwitterと同じ土俵に立とうとしたら、負けは必至だろう」と結んでいる。
当然だろう。
Nob Takahashi / facebook