任天堂が11月29日、公式サイトに「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」を掲載しました。
その主な内容は「ゲームからキャプチャした動画や静止画等をネットで収益化しても、公式ガイドラインに従う限り、任天堂は著作権侵害を主張しない」というもの。かなり緩やかな約束事のもとで、ゲーム実況動画などが解禁されることになります。
これに伴って、同社のコンテンツを収益化するために必要だった「Nintendo Creators Program」のサービス終了も公式サイトにて告知されています。
ゲームをプレイしていない視聴者向けに自社コンテンツの内容を明かすゲーム実況動画に対しては、各ゲームメーカーやパブリッシャーにより賛否があり、様々なスタンスが取られています。
そんななか、任天堂は今回の発表で「その体験が広く共有されることを応援したいと考えております」と、”公開したい人”を基本的には後押しする姿勢を謳っており、時代の節目になる可能性も秘めていると言えるでしょう。
任天堂の姿勢が端的に言い表されているのが、冒頭にある次のくだりです。
任天堂は、個人であるお客様が、任天堂が著作権を有するゲームからキャプチャーした映像およびスクリーンショット(以下「任天堂のゲーム著作物」といいます)を利用した動画や静止画等を、適切な動画や静止画の共有サイトに投稿(実況を含む)することおよび別途指定するシステムにより収益化することに対して、著作権侵害を主張いたしません。
ただし、その直後に続けて、その投稿に際しては、このガイドラインに従っていただく必要があります……と、約束事がリストアップされています。
他の注目点としては、「任天堂以外の第三者が有する知的財産権」については権利者から別途の許諾が必要な点、「事実に反して、任天堂や任天堂の関係者から、協賛や提携を受けているようなことを示唆したり、誤信させたりしないでください」というところ。これらは常識の範囲内と言えます。
そして動画や静止画の内容については、Nintendo Switchのキャプチャーボタン等の機能によるもの以外は「お客様ご自身の創作性やコメントが含まれた動画や静止画が投稿されること」という期待も表明されています。
単なるネタバレの垂れ流しではなく、任天堂へのフィードバックやファン同士の交流を促す意図でしょう。
時節柄、目を引くのが「正式な発売日またはサービス開始日を迎えていないものに関しては、任天堂が公式に公開した任天堂のゲーム著作物のみを投稿に利用することができます」という一文でしょう。
ちょうど「大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL」が発売2週間前にスポイラー(ネタバレ動画)などがネットに大量流出している事態が念頭にあるのかもしれません。
このように、基本的には寛大なスタンスですが、一方でこうした姿勢を打ち出しながら「任天堂は、違法または不適切な投稿や公序良俗に反する投稿、このガイドラインに従わない投稿に対して、法的措置を講じる権利を保持しています」と、万が一の際には同社の法務部がお仕事をする可能性も示唆し、釘を刺しています。
ほかQ&Aでは、プレイ動画やスクリーンショット以外に同社の知的財産権に基づいて創作された、いわゆるファンアート(最近だとクッパ姫等でしょうか)についても言及しています。
それらはガイドラインの対象外として「各国の法令上認められる範囲内で行ってください」としつつ、「お問い合わせにはお答えいたしかねます」と述べて、ファン同士の通報合戦をエスカレートさせない配慮も伺えます。
そして先にも触れましたが「Nintendo Creators Program」のサービスも終了します。これはゲームプレイ動画の広告収益を投稿者が60%、任天堂が40%の割合で分配する仕組みでしたが、今後は投稿者が収益の100%を得られることになります。
関連記事:任天堂、YouTube動画の広告収益を投稿者と分配するNintendo Creators Program ベータ開始 (2015年1月)
ゲーム実況動画に対して様々なメーカーの姿勢がある中で、あえて全面支持を決断したと言える任天堂の公式ガイドライン発表。この施策により、共有されたゲーム体験を通じてファンの交流が促進され、任天堂ばかりか国内ゲーム市場の売上も活性化される……といった好循環が生み出されることを願いたいところです。
Engadget 日本版からの転載。