企業や政府機関による有害な「話」の追跡を支援するPendulumが6.8億円を調達

Pendulumは、企業や政府、その他の組織が、ソーシャルメディアプラットフォームやウェブ上の他の場所で有害なナラティブ(話)を追跡するのをサポートしている。同社は米国時間1月7日、シードラウンドで590万ドル(約6億8000万円)を調達したと発表した。同ラウンドはMadrona Venture Groupがリードし、Cercano Managementなどが参加した。PendulumはMadrona Venture Labsでインキュベートされた。

「Pendulumのプラットフォームは、AIとNLP(神経言語プログラミング)の技術を応用し、ナラティブに含まれる脅威とチャンスをその形成初期段階に発見し、オンラインで拡散する際に追跡します」と、MadronaのマネージングディレクターであるHope Cochran(ホープ・コクラン)氏は説明する。「ソーシャルメディアプラットフォーム上のテキスト、ビデオ、オーディオコンテンツに含まれるナラティブを分解・分類することで、企業はこれまで以上に準備し、コミュニティと自由に関わることができるようになります。現在、YouTube、BitChute、Rumble、Podcastsをサポートしており、今後数カ月の間に重要なソーシャルプラットフォームを網羅します」。

Pendulumを支えるチームは、このようなプロダクトを構築するのにうってつけのようだ。例えば共同創業者のSam Clark(サム・クラーク)氏は、以前はDecide.comでデータマイニングのエンジニアとして働き、その後eBayがその会社を買収してからはeBayに勤務していた。また、YouTubeの政治チャンネルを分類・分析するプロジェクトTransparency Tubeも共同開発した。Transparency TubeはPendulumとかなり多くのDNAを共有しており、クラーク氏はその後、オンラインで誤情報や偽情報を追跡するという一般的なアイデアをもとに商用プロダクトを作るためにMadronaと手を組んだ。そこで共同創業者であるMark Listes(マーク・リスティーズ)氏とチームを組むことになった。リスティーズ氏は政府機関での豊富な経験をチームにもたらしている。同氏は以前、米選挙支援委員会の政策担当ディレクターを務め、National Security Innovation Network(国家安全保障イノベーションネットワーク)ではスタッフ責任者として、米国防総省のベンチャー企業との関わりを管理する役割を担っていた。

Pendulumの共同創業者、サム・クラーク氏(左)とマーク・リスティーズ氏(右)(画像クレジット:Pendulum)

リスティーズ氏は選挙支援委員会でかなり落ち着いた時間を過ごすことを期待していたが、2016年に加わった同氏は明らかにそのタイミングを間違えていた。「2016年の11月と12月には、選挙分野はずいぶん異なるものでした」と同氏は筆者に語った。「我々は、外国の干渉や情報概要、その他多くのものを扱っていました。かいつまんで話すと、その後2年半の間、私と同僚は米国の選挙システムから外国からの干渉を排除するための取り組みを主導しました。我々は個人的にも組織的にも干渉を経験し、そして私たちのシステム全体から排除するための戦いを支援しました。有害なナラティブと、それが誤情報であれ偽情報であれ、悪意あるナラティブが社会全体に与えうる影響の排除です」。

とはいえ、Pendulumは政府機関がネット上のナラティブを追跡するために使うこともできるが、商業サービスがメーンだ。「商業第一です。もちろん、簡単で直感的な政府機関向けのサービスもありますが、まず商業部門に特化し、そこで本当に強力なパートナーシップを構築しています」とリスティーズ氏は述べた。

画像クレジット:Pendulum

リスティーズ氏は、Pendulumのようなプラットフォームが機能するためには、できるだけ多くのプラットフォームをカバーする必要があると強調した。人口の代表的なサンプルを提供しないTwitterや、YouTubeを追跡するだけでは不十分だ。このため、Pendulumは例えばBitChuteやRumbleも追跡している。

しかしリスティーズ氏は、Pendulumが真否を判定するビジネスをしているわけではないとも指摘した。「実際には、真実か嘘かには依存しない、実に強力なナラティブ追跡エンジンを持っています」と説明する。「真否の判定をしないことで、より幅広い用途に対応できます」。例えば企業は、コミュニケーションだけでなくセキュリティのためにも、役員や資産に関するナラティブを追跡したいかもしれない。

Pendulumは何かが真実かどうかを判断することを望んでいないため、悪意ある人物にも利用される可能性がある。しかしリスティーズ氏は、同社が個人を特定できる情報を追跡しているわけではなく、チームはこの可能性をかなり認識していると主張する。「我々のツールの使用を通じて、不公平な競争の場を作り出したり、悪意のある人物に力を与えたりすることがないように価値を高めています」と同氏は述べた。

画像クレジット:Thodsapol Thongdeekhieo / EyeEm / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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