エネルギー費が上昇し、多くの住宅所有者が太陽光発電などの実現可能性に注目している中、間違いなく消費者はエネルギーの使用を制御する方法を模索している。スマートホーム機器がこれほど普及した世界で、なぜエンドユーザーへのグリッドエネルギーの普及はなかなか進まないのか。元Tesla(テスラ)のエンジニアだったArch Rao(アーチ・ラオ)氏が設立したSpan(スパン)という会社は、こうした問題に応えようとしている。
3年前の今頃に設立されたSpanは、まだ若い会社だ。2020年の今頃はシリーズAラウンドで1010万ドル(約11億円)を調達し、年末までに全米の家庭に向けて製品を展開していった。そして2021年1月にはさらに2000万ドル(約21億8000万円)を調達した。
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実際の数字は公表していないものの、ラオ氏は、Spanが「米国のストレージ市場で、特に重要な市場であるカリフォルニアで、有意義なシェアを獲得し始めている」と筆者に語った。この言葉をどう受け取るかはともかく、しかし同社が特にターゲットとしているのは、太陽光発電と蓄電池システムを組み合わせているユーザーだ。
米国時間5月19日に発表されたSpanの第2弾の製品は、より小型で汎用性の高いユニットで、名称はシンプルに「Span Smart Panel(スパン・スマート・パネル)」という。希望小売価格は3500ドル(約38万円)と、第1世代の製品の5000ドル(約54万円)より大幅に安くなっている。もっとも、電力会社はこの技術を太陽光発電パネルなどの他の製品とセットで提供することが多いため、最終的な価格については顧客によって異なる可能性がある。
「これは、Nest(ネスト)で私たちが考えていた当初のビジョンの一部と重なります」と、Nestの共同設立者で、Spanの投資家であるMatt Rogers(マット・ロジャース)氏は、TechCrunchによるインタビューで語った。「自分の家できることはたくさんあります。NestとGoogleが目指す方向は異なるものの、家の中のエネルギーを理解し、それらをつなぎ合わせ、制御できる製品は、今も本当に求められています。特に、エネルギーコストが上昇し、太陽光発電や蓄電システムが普及していくこの世界では。Spanのようなものが存在しない未来の世界は想像できないでしょう」。
このシステムは、ほとんどの家庭用電気ブレーカーと連携でき、回路を細かく制御できる他、イーサネット、Wi-Fi、携帯電話通信網、Bluetooth接続にも対応している。同社が提供するモバイルアプリを使って簡単にコントロールすることもできる。
「私たちがやったことは、家庭の分電盤を根本的に再構築することです」と、ラオ氏はTechCrunchに語った。「私たちは単一のユースケースに縛られることなく、家庭内のあらゆるもののバックボーンとなります。サーモスタットがある家もあれば、ない家もあります。太陽光発電がある家もあれば、ない家もあります。しかし、ほぼすべての家庭には、100年前の技術を使った分電盤があります」。
カテゴリー:ハードウェア
タグ:Span、スマートホーム、電力
画像クレジット:Span
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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)