胃がんの発見を支援するAIベースのソフトウェアを開発する東京拠点のAIメディカルサービスは10月4日、シリーズBラウンドで4290万ドル(約46億円)を調達したことを発表した。主な投資家には、グロービス・キャピタル・パートナーズ、WiL(World Innovation Lab)、ソニーイノベーションファンド(Innovation Growth Ventures)がいる。調達した資金により、内視鏡の動画からリアルタイムでがんの兆候を発見するソフトウェアの臨床試験、製品開発、海外展開を進める。
2017年に創業のAIメディカルサービスは、これまでに5700万ドル(約62億円)を調達。2018年8月の前回ラウンドではインキュベイトファンドから900万ドル(約10億円)を調達した。同社のソフトウェアは食道、胃、腸といった消化器のがんの兆候を対象とする。医師などの医療専門家が画像をチェックする時間を削減することが狙いだ。同社は現在、約80の医療機関と共同で製品の薬事承認に向けた研究を行っている。
AIメディカルサービスのCEOである多田智裕医師はTechCrunchにメールで、内視鏡の世界市場は毎年10%成長しており、日本のメーカーは約70%の市場シェアを占めていると語った。 多田氏は成長戦略について、最初は胃がんの発生率が高いシンガポール、タイ、インドネシアなどのアジア諸国に、その後米国とカナダに注力すると述べた。
内視鏡検査では病変の約15〜30%が見逃されるという調査結果もある。AIメディカルサービスの目標は画像診断の精度を高めること。CNN(画像認識に使われるニューラルネットワークの1つ)によって医療画像を分析する同社最初の製品は、まもなく薬事審査における承認申請に入る。
AIベースの内視鏡検査技術に取り組む企業にはai4gi、オリンパス、Shanghai Wision AIなどがあるが、多田氏はAIメディカルサービスの競争相手とはみていないと言う。ai4giやWision AIは大腸内視鏡検査用のソフトウェアを開発しているが、AIメディカルサービスはAIによる胃がんの発見に注力しているからだ。
Globis Capital Partnersの福島智史ディレクターは声明で「近い将来、医師がAIと力をあわせてガンを診断するようになる。その流れは元には戻らないとみている。世界をリードする医療機関と専門家に支えられて、AIメディカルサービスの経験豊富な経営陣が開発を進める内視鏡AIは、世界中の内視鏡医と患者を支援する大きな可能性を秘めている」と述べた。
画像クレジット:Hispanolistic / Getty Images
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(翻訳:Mizoguchi)