労務管理クラウド「SmartHR」に社労士向け機能、公認アドバイザー制度も開始

SmartHR for Adviser

KUFU(クフ)は9月26日、労務管理クラウド「SmartHR」に社労士向け機能を搭載した「SmartHR for Adviser」の提供を開始した。またこれと同時に、「SmartHR公認アドバイザー制度」を開始した。

「社労士とともにサービスを伸ばす」というメッセージ

SmartHRは、労務関連の書類自動作成、オンラインでの役所への申請、人事情報、マイナンバーの収集・管理やWeb給与明細などの機能を備えたクラウド型の労務管理ソフトウェア。これまで中小企業を中心にサービスを展開してきたが、SmartHR for Adviserの開始により、社労士向けの機能も拡充。社労士が顧問契約している中堅から大手の企業にも利用を拡大していく構えだ。

スタート時点では、社労士が顧問先の複数の企業を1アカウントで閲覧・管理できる機能が提供される。また、これまで役所へのオンライン申請時には、企業に特定の社労士を紹介してその電子証明書を利用していたが、これを一般の社労士にも解放。自身が所有している電子証明書を使って、顧問先企業の社会保険・雇用保険の手続きをSmartHR上から電子申請することが可能となった。

今後は、顧問先企業の離職率を経時変化や世間動向との比較で確認できたり、制度が変わりやすい助成金の受給要件に合致しているかどうかなど、タイムリーに情報を把握できる機能などを拡充していくという。

「SmartHRは、社労士の仕事を奪うのではないかと考えられているが、我々はリリース当初から一緒にうまくやりたいと思っていた」とKUFU代表取締役の宮田昇始氏は話す。「例えば、クラウド会計ソフトのfreeeが登場した時には、『税理士の仕事がなくなる』という見方があったが、今や税理士がfreeeを利用して企業にも紹介している。うまくやれているサービスは専門家と競業しないと考えていた。実際、SmartHRも初めは中小企業をターゲットにサービスを展開してきたが、すでに社労士を顧問に持つ中堅以上の企業での併用も多くなってきた。さらに、社労士が顧問先企業にSmartHR導入を勧めるケースも増えている」(宮田氏)

今回のSmartHR for Adviser提供は「社労士といっしょにサービスを伸ばしたい」というKUFUからの正式なメッセージでもある、と宮田氏は言う。「多くの社労士は顧問先を月次で訪問していて、少ない情報と短いコミュニケーションの中で、スタンダードな提案しかできないのが現状。我々のサービスを使ってもらうことで、個々の顧問先企業に寄り添った、よりよい提案ができるように支援していきたい」(宮田氏)

またKUFUでは、SmartHR for Adviserと同時に「SmartHR公認アドバイザー制度」開始も発表した。SmartHRの導入企業からは「SmartHRが使いこなせて労務相談もできる社労士を紹介してほしい」との要望が多く、中には上場直前といった規模の会社でも「社労士を紹介して」との声があるのだという。これまでも個別では紹介してきたということだが、制度化によって、SmartHRへの理解が深い社労士を公式に育成・紹介していく形をとる。

制度開始にあたり、KUFUでは社労士向けの無料セミナーを随時開催し、参加した社労士をSmartHR公認アドバイザーとして認定していく。企業への社労士の紹介料は無料。社労士側も紹介料、加入料金、月額料金などの費用は不要だ。

労務管理をDisruptするサービスを

KUFUでは先日、従業員5名以下の小規模企業向けにSmartHRの¥0プランを発表したばかりだ。このときにも「大企業向け機能の強化も同時に進めることで、収益増を図る」としていたが、今回の社労士向け機能の解放も、エンタープライズ企業向けサービス強化の一環だと宮田氏は言う。

「¥0プランは、社労士顧問契約など結べない小さな企業にも、とにかく使ってもらいたいということで間口を広げた。そうして会社が成長していく中で、社労士に労務環境をチェックしてもらったり、相談する場面が増えてきたときに、公認アドバイザーと手を組んで共に歩んでもらい、ゆくゆくは大きな成長を遂げてもらえれば、我々のサービスも有償で使ってもらえることになる」(宮田氏)

大企業の場合、雇用形態のバリエーションが多く、手続きはより煩雑で、労務担当者が一人ではないことも多い。こうした大企業特有の環境に合わせて、雇用形態別の書類出し分けや、担当者の権限が設定できる機能、組織に合わせて従業員データベースをカスタマイズできるような機能も追加を準備しているそうだ。また2016年5月に公開したAPIを利用した、社内システムや各社のクラウドサービスとの連携もどんどん進める、という。「2016年10月には、さらに大企業にうれしい機能を提供する予定だ」(宮田氏)

2016年初めのインタビューでは「2016年内に3000社、2017年内には2万社の導入を目指す」としていた宮田氏に、その道程を聞いたところ「2016年5月の時点で1000社、現時点で2000社を超える登録を獲得しており、2016年内の目標は4000社に上方修正した。さらに少し先になるが、2019年末には20万社の登録を目指す」と答えてくれた。今月、サンフランシスコで開催されたTechCrunch Disrupt SFに絡めて、宮田氏はこう話す。「Disrupt(破壊)という言葉が気に入って。¥0プランにしてもfor Adviserにしても、とにかく門戸を開いて、多くの企業に使ってもらって広げていく中で、企業、社労士、KUFUの三者が喜べる形にしていきたい。Disruptしたいですね」

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TechCrunch Japan

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