Figure 1は血を見るのが苦手な人向けではないが、どうやら投資家の心は上手くつかんだようだ。同プラットフォームは100万人以上の医療関係者が登録するソーシャルネットワークのようなもので、ユーザーは珍しい症状や新しい治療法、さらには治療事例を投稿できるようになっている。この度、運営元のFigure 1, Inc.はシリーズBで1000万ドルを調達した。
「医師向けのInstagram」とも呼ばれるFigure 1が行った今回の資金調達では、Kensington Capital Partnersがリードインベスターを務めた。さらに、Samsung NEXTや保険コングロマリットのJohn Hancock(アメリカ以外ではManulifeとして知られている)、スタートアップ向けに貸出を行うWTI、カナダの投資会社Hedgewood、そして既存投資家のUnion Square Ventures、Rho Canada Ventures、Verison One Venturesらがこの度のラウンドに参加した。
先週、Figure 1のファウンダーでCEOのGregory Leveyと話す機会があり、最近のオペレーションについて聞いてきたので、以下にその様子をお伝えしたい。なお、トロントを拠点に4年前に設立され、今では50人の社員を抱えるFigure 1は、これまでに合計で2000万ドルを調達している。
TC:Figure 1に登録できるのは医療関係者だけというイメージが広がっていますが、そうではないんですよね?
GL:はい、誰でも登録できます。実際にサービスに興味を持ってくれているのは、ジャーナリストとVCばかりだと冗談を言っているくらいですから。でも写真やコメントを投稿できるのは医療関係者だけです。それ以外のユーザーは、投稿内容を見ることはできますが、何かを投稿することはできません。医療関係者だという認証を受けたユーザーは、その他にもさまざまな機能を利用できます。
TC:”医療関係者”というのは、医師と看護師のことを指していますよね。学生はどうですか?
GL:プレメディカル(医学部進学課程)の生徒は対象に含まれませんが、看護学生は例外的に医療関係者とみなしています。さらに、アメリカ中の医学生の約70%がFigures 1に登録しています。
TC:つまりユーザーのほとんどがアメリカ国内にいるということですか?
GL:全体の約3分の2がアメリカに住む人たちで、その次にエンゲージメント率が高いのが南米のユーザーです。彼らのニーズに応えるため、(ブラジル人を大量に雇った結果)オフィスの一部がポルトガル語圏のようになっています(笑)。アプリもスペイン語版・ポルトガル語版の両方が準備されています。あとは、イギリスやオーストラリアのユーザーが多く、新興国の人たちもFigure 1を気に入ってくれているようです。ただ、新興国では回線スピードの問題がありますし、一般に販売されている携帯電話の記憶容量が少ないため(Figure 1のアプリを)インストールしておくのもなかなか難しいようです。
TC:具体的な登録ユーザー数やアクティブユーザー数についてはいかがでしょう?
GL:今は次なるマイルストーンに向けて努力を重ねている段階ですが、以前データを公開した時点では登録者数が200万人強、MAU(月間アクティブユーザー数)は数十万人でした。ちなみにアメリカの医師の総数は80万人です。
TC:エンゲージメントに関してはどうですか? 他のソーシャルネットワークのように、一部のユーザーが積極的に情報を発信していて、他の人たちはただ単にそれを覗き見ているという状況でしょうか?
GL:他のソーシャルネットワークとそこまで大差ないと思いますが、もしかしたらFigure 1の方がユーザー同士の議論が活発に行われているかもしれません。最近では、事例をテキストベースで投稿できる機能をローンチし、写真撮影の許可がとれない人たちでも文字で何が起きたかを共有できるようになりました。精神医療を専門とする人たちもこの機能を使って事例を投稿していて、プラットフォーム上の情報量が一気に増えました。
サービスが成長するにつれて、ユーザー行動についても色んなことを学びました。当初私は、ユーザー全員が事例を投稿するべきだと思っていましたが、最近ではFigure 1のサービスはTwitterよりもYouTubeに近いと気づき始めたんです。これはどういうことかというと、私はYouTubeに動画を投稿したことは一度もありませんが、いつも視聴者として動画を楽しんでいます。同様にFigure 1のユーザーも、投稿されている情報に価値を感じている一方で、全員が自分の治療事例を共有したいと思っているわけではありません。でもそれでいいんです。
TC:専門分野によってコンテンツに偏りがでないよう何か対策をとっていますか? それとも、そこはユーザーにまかせていますか?
GL:最初は専門分野をひとつに絞ろうという話をしていたんですが、結局かなり門戸を広げ、臨床検査技師から精神科医までさまざまな専門の人をユーザーとして迎え、そこからは自然と増えていきましたね。意識的にある専門分野に特化していこうとは考えていません。
TC:最近はマネタイズに向けた実験を開始し、スポンサードコンテンツの掲載を始めましたよね。企業の支援の下、ある医師が他の医師にプラットフォーム上で治療法などについて教えるプログラムもあるようですが、そちらの調子はいかがですか?
GL:上手くいってますよ。まだ始まったばかりですが、かなり多くの企業から問い合わせをもらっていて、私たちでは手に負えないほどです。もちろんそれは良いことなんですけどね。また、コンテンツの質にはかなりこだわっているので、今のところユーザーの反応も上々です。むしろユーザーが投稿したコンテンツよりも、スポンサードコンテンツのエンゲージメント率の方が高いくらいです。
TC:今後はFigure 1主導のコンテンツの数を増やしていく予定ですか?
GL:私たちはメディア企業になりたいわけではないので、そうしないように気をつけています。Figure 1の中心はあくまでユーザーです。
TC:調達資金の使い道について教えてください。
GL:まずはユーザーベースの拡大です。現状マネタイズも上手くいっているので、収益面も(さらに)強化していきたいですね。サービス内容の拡充や新しい収益源の獲得も検討しています。4年前の設立時、Figure 1は新しくてワクワクするようなサービスでしたが、今後もそうあり続けたいと思っています。例えば治療事例にはとても価値があるので、このコンテンツを活用するために先日機械学習の専門家をチームに迎えました。これまで私は(一般的に企業が設定している)マーケティング予算について全く理解していませんでしたが、スポンサードコンテンツも収益面で大きな可能性を秘めているとわかりました。さらに、スタッフ向けの特別機能を開発することに興味をもっている医療機関とも話を進めています。
TC:他分野への進出も考えていますか?
GL:笑い話ですが、「競馬業界でも同じサービスをやるべきだよ!」と言う友人がいて、私は「いやー、それはどうかな」と返していました。一方で、歯科業界には独自のニーズがありそうなので、そちらへの進出については現在検討中です。あとは私自身が犬好きということもあり、獣医学にも興味を持っています。Figure 1にもたくさんの獣医が登録してくれていますが、彼らは自身は事例を投稿することができません。でも彼らの中には、(人間の事例に対して)「これは猫科の動物にも見られる症状ですね」といったコメントをする人がいて、他のユーザーから「ここから出て行け」といった具合で追い払われてしまっています。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)