2016年はVR元年と言われている。今年10月にはPlayStation VRも発売され、一通りのVR向けハードウェアが出揃う。けれども、VRが本当に立ち上がるためにはVRコンテンツが鍵となる。徐々に360ChannelなどのVR番組やゲームといったエンターテイメント領域でのコンテンツが立ち上がる中、KABUKIが提供を目指すのはVR内でのショッピング体験だ。KABUKIは「VR Shopping with Voice Chat」を8月下旬から提供開始するにあたり、本日、記者発表会を実施した。
「VR Shopping with Voice Chat」と銘打つこのサービスでは、どこからでも友人と一緒にファッションショーを見ながら、買い物を楽しめる体験を提供する。このサービスの利用方法は次の通りだ。専用アプリをダウンロードし、VRを視聴できるヘッドマウントディスプレイにセットする。LINEやFacebookなどでつながっている友人同士がアプリにアクセスすると、ファッションショーのランウェイが目の前に広がる。ランウェイには、マネキンが最新ファッションを着用して登場し、ユーザーは友人とおしゃべりをしながらファッションショーを楽しむことができる。ランウェイに登場するファッションアイテムは、ファッション情報サイト「コレカウ」のスタイリストによるスタイリングだそうだ。気に入ったファッションアイテムがあれば、VR画面内で詳細を確認することが可能だ。詳細画面では洋服を回転させたり、拡大表示させたりすることで細部まで確認し、そこからアイテムの購入もできる。
KABUKIの代表取締役CEOを務める大城浩司氏は前職、楽天市場の営業部長を務め、複数の新サービスを手がけた経験を持つ。大城氏はインターネットショッピングが普及するにつれ、ECサイトはUIや検索の精度に重きが置かれるようになったが、ショッピングの楽しみもあるサービスを作ることを考えたという。例えば友人とデパートに行って会話をしながら買い物をするのもショッピングの楽しみだ。「VR Shopping with Voice Chat」では、沖縄と東京にいる友人同士でも場所に関わらず、そういった会話をしながらショッピングする体験を提供するという。
このVRショッピング体験は、同社が提供するメディア型ECモールである「kabuki ペディア」と連動していくと大城氏は説明する。「kabuki ペディア」は単に商品のECページだけでなく商品のストーリーを伝えることで、潜在的な需要を喚起するサービスだという。例えば、バルミューダーのトースターを紹介する記事では、商品の機能だけでなく、このトースターで「素敵な朝を迎える」ライススタイルをストーリーとして伝えることに重点を置く。KABUKIが目指すのは、そういった生活スタイルのストーリーを伝えることで商品が売れていく世界とし、VRショッピングもストーリーを伝える手段として取り入れるという。
具体的には、「kabuki ペディア」のECページの上部に「VRで見る」といったボタンを設置し、VR上で商品の詳細を見るための動線を置く計画だという。今回、重点的に紹介されたのはファッションという切り口だったが、今後はアウトドア関連商品やインテリア商品もVRショッピングに対応していく予定だそうだ。
今回私もVRショッピングのデモを視聴してみたが、残念だったのは全体の解像度が低いためにファッションアイテムの魅力を伝えきれていないように思えたことだ。もちろんこういった部分は技術の進歩とともに改善することだろうし、視聴コンテンツに関してもクオリティー面も内容も充実していくことが期待できるだろう。また、VRコンテンツは自分1人で視聴するとVR空間が広いために寂しさを感じることもある。けれど、今回の友人と一緒になってファッション談義に花を咲かせることを勧める「ソーシャル」な体験を強調したVRショッピングはコンテンツとしては面白いかもしれない。