大日本印刷が傷みやすい果物のピッキングロボット向けに伸縮自在な接触センサーユニットを開発

大日本印刷が傷みやすい果物などピッキングロボット向けの伸縮自在な接触センサーユニットを開発

大日本印刷(DNP)は10月9日、AIやセンサーなどを活かしてモノをつかむ「ロボットグリッパー」に対し、樹脂などの柔軟な部分にも直接装着できる、DNP独自の伸縮自在な配線構造を持つ「接触センサーユニット」を開発したと発表した。

このユニットにより、これまで人が行ってきた果物や野菜などのピッキング作業を、柔軟性のあるロボットグリッパーで自動化できるようになり、省人化を実現するとしている。

今回開発した製品は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究テーマ「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/フィジカル空間デジタルデータ処理基盤」の取り組みとして、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)および立命館大学と連携し、ソフトロボティクス分野における有効性の実証研究として開発したもの。

接触センサーユニットは、伸縮配線と感圧ゴムを組み合わせた構造を採用。一般的な接触センサーの方式には静電容量式と感圧式があるが、静電容量式の場合伸縮時の配線の容量変化を考慮して補正する必要があり、駆動回路が複雑化する可能性が高い。そのため今回の実証研究では、配線の容量変化を考慮、補正する必要のない感圧式を採用した。

全体の厚みは約2mmで、配線材料は銅を採用。130%までの伸縮動作を、食品ピッキングに必要とされる100万回程度繰り返しても、電気的・機械的特性が損なわれないことを確認しているという。

近年、労働力不足に対応するため、モノをつかんで移動させるピッキング作業を行うロボットグリッパーが、製造業をはじめ様々な分野で導入されている。特に、傷みが生じやすい果物や野菜などを扱う食品分野などでは、柔軟性のあるロボットグリッパーが用いられているという。

このロボットグリッパーには、モノを握って持ち上げる「把持(はじ)力」を検出する接触センサーを装着する必要があるものの、従来この接触センサーをつなぐ配線ケーブルがピッキング作業の邪魔になり、誤ってケーブルをつかむことで断線することがあった。また作業の邪魔にならないよう、ロボットグリッパーに直接ケーブルを装着した場合、伸縮性のないケーブルが断線するといった課題もあった。

こうした課題を解決するためDNPは、独自の「伸縮性ハイブリッド電子実装技術」を活用することで、柔軟性のあるソフトなロボットグリッパーに直接装着しても断線が発生しない、伸縮自在な配線の接触センサーユニットを開発した。

DNPは、縦・横の方向や曲面の形状で収縮する物の動きに対し、自由に追従できる電子回路基板の開発を進めており、この伸縮性ハイブリッド電子実装技術では、柔軟な基材を曲げ伸ばししても抵抗値が変わらない電極配線を可能としている。また、剛直な部品を電子回路基板上に実装しても伸縮時に断線しにくい工夫を盛り込んでいるとした。

伸縮性ハイブリッド電子実装技術は、接触センサーだけではなく製品化されているあらゆるセンサー部品に応用可能。一般的な電子部品製造プロセスを用いているため、産業界で実績のある量産性に優れた方法で製造できるとしている。

今後DNPは、NEDOおよび産総研、立命館大学との連携を通じて、把持力の検出だけではなく、ロボットのフィードバック制御や駆動においてもさらなる精度向上を図り、きめ細やかなロボット制御を実現し、労働生産性の低い産業への導入を目指す。

カテゴリー: ロボティクス
タグ: NEDO大日本印刷産業技術総合研究所(産総研)接触センサー日本

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