ユーザーが“実名”でオススメな飲食店の口コミを投稿する「Retty」が順調にユーザー基盤を拡大しているようだ。サービス提供元のRettyは12月11日、月間利用者数(MAU)が4000万人を超えたことを明らかにした。
2017年5月にユーザー数が3000万人を突破したことを紹介してから約1年半、機能面のアップデートやコンテンツの拡充もあり継続的にユーザー数が増加。具体的な数字は公開されていないけれど、登録されている飲食店も約80万店舗、口コミ数は数百万件に上る。
今回TechCrunch Japanでは直近のアップデートや今後の展望について、Retty代表取締役の武田和也氏に話を聞いた。
なお先に開示しておくと、僕は2012年から2013年にかけて数ヶ月間ほどRettyで学生インターンとして働いていたことがある(退社してからはビジネス上の関係はない)。
ネット予約機能も好調、導入店舗数が1年で4倍に
Rettyの特徴と言えば実名による飲食店の口コミであり、その積み重ねによってできあがったデータベースだ。
近年ユーザーの飲食店に対するニーズが多様化し、それに伴って新しいコンセプトの飲食店が次々と生まれる中で、Rettyでは蓄積してきたユーザー基盤と口コミを軸に「自分にとってベストなお店が見つかる場所」の構築に向けた取り組みを進めてきたという。
各自の好みに合ったユーザーや飲食店の情報を表示するアルゴリズムの強化に加えて、2017年12月にはiPhoneアプリの全面リニューアルを実施。投稿者によるオススメ度合いが「☆」でわかるデザインの採用や、各ユーザーがお気に入りの店舗トップ10を選べる「マイベスト」機能のアップデートによって“自分が気になる人”を起点に飲食店を探しやすくなった。
2018年4月からはRettyユーザーのオススメから生み出される、ジャンル別の「人気店」表示もスタートしている。
サービス基盤の拡充と合わせて近年Rettyで力を入れてきたのが「マネタイズ」だ。
現在Rettyには飲食店向けの有料プラン(有料お店会員)のほか、アドネットワークやタイアップといった広告事業、Rettyのコンテンツを使ったアライアンス事業という大きく3つの収益源がある。
特に有料会員店舗のみが使えるネット予約機能が好調のようで、2018年11月時点では同機能の導入店舗数が前年同月比で4倍に拡大。月間の予約者数も10倍に成長しているという。
これについてはユーザー数自体が成長したことで店舗に送客できる顧客の数も増加したことや、代理店も含めてセールスの体制が整ってきたことに加え、Rettyならではの価値に共感する店舗が増えてきたことも影響しているようだ。
「Rettyは実名制ということもあり、基本的にポジティブでお店を応援するような口コミが多い。(店舗の視点では)結果的に『自分たちのファンが新しい顧客を連れてきてくれる』という構造を作れると考えている。単なるお店への送客ではなく、お店と顧客が繋がれるような世界観を実現したい」(武田氏)
飲食領域はこれから“大きく変わる”マーケット
2011年6月のサービスローンチから約7年半、実名による飲食店の口コミサービスというジャンルを開拓し、月間利用者数が4000万人を超える規模までその輪を広げてきたRetty。
それでも各社が公開しているユーザー数を見る限りでは食べログ(2018年9月時点で1億1531万人)やぐるなび(2017年12月時点で6500万人)が先行している状況なだけに、まだまだ拡大できる余地はあるだろう。武田氏も「もっと伸ばせると考えている」と話していて、すでに複数の取り組みを始めている。
国内では以前紹介したヤフーとのパートナーシップがその一例。ヤフーのポータルサイト上にRettyへの導線が追加されるといった取り組みに加え、2社で飲食店向けのオンライン予約・集客サービスの開発も検討している。
エリアを拡大するという観点では、アジアを中心とする海外展開にも引き続き取り組む計画だ。
また飲食業界は決済のテクノロジーと密接に交わることで新しい体験が生まれ始めているフェーズでもある。少し先の取り組みにはなるかもしれないけれど、Rettyとしてはそこでも新たな取り組みを模索していきたいとのことだった。
「(グルメサービスを手がけるスタートアップが)自社単体ではなく決済レイヤーのプレイヤーと一緒になって、リアルな体験を作っていくタイミング。これから飲食という領域が大きく変わるのではないかと考えている」(武田氏)
他業種の大手企業とタッグを組んでいるのは何もRettyだけではない。食べログ(カカクコム)はKDDIと、ぐるなびは楽天とそれぞれ資本業務提携を締結。ちょっと別の切り口ではあるけれど、昨日は飲食店向けの予約サービスを展開するトレタがNTTドコモと資本業務提携を通じて新たな事業を展開するというニュースもあった。
「まずは基盤をもっと広げ、(各ユーザーが)自分にとって良いお店が少しでも早く見つかるサービスにしていきたい。そのためにもプロダクトの改善はもちろん、マネタイズや海外展開も引き続き強化する。一方で、マーケットが変わる面白いタイミングでこの領域に関われるのは大きなチャンスでもある。Rettyとしても新しいことにチャレンジしていきたい」(武田氏)