設立当初のAirbnbは、ホテルの代わりに空いているソファーやベッドを安く貸りられるというサービスにフォーカスしていたが、高所得者向けサービスの拡充も大々的に進めており、今まさにその動きをさらに加速させようとしている。情報筋によれば、現在同社はLuxury Retreatsの買収話の大詰めに入っており、買収額は2億ドル近くなると言われているのだ。なおLuxry Retreatsは、Airbnbと似たサービスを提供しており、高級住宅を主に扱っている。
Bloombergが最初にこの話を報じ、そのときは買収額は3億ドルを下回るくらいだと言われていた。
あるソースによれば、Airbnbは「高級住宅の分野で豊富な経験を持つ、Luxury Retreatsの才能あふれるチームに強い興味を示しており、彼らの高級住宅に関する類を見ない強さは、Airbnbの強みと相互補完関係にある」。Luxury Retreatsが扱う物件の中には、フランシス・フォード・コッポラが保有するイタリア・プーリア州のヴィラや、リチャード・ブランソンのネッカーアイランドも含まれている。
Luxury Retreatsの買収は、できればIPO前にユーザベースや収益源の多様化を進めたいという、Airbnbの目的にもかなっている。なおAirbnbのこれまでの調達資金総額は30億ドル近く、昨夏には300億ドルの評価額で8億5000万ドルの調達を申請していた。
関係者からの情報以外にも、この話を裏付ける別の証拠がある。私がLuxury RetreatsのCEO兼共同ファウンダーであるJoe Poulinに、何か話を聞けないかメールを送ったところ、なぜかAirbnbの広報担当者から返信が返ってきたのだ。私はAirbnbにはコンタクトしていないのにだ。
ちなみに彼からのコメントには「私たちは常に、Luxury Retreatsのユーザーに新しいオプションを提案しようとしていますが、現在発表すべき事項はありません」と書かれていた。
カナダのモントリオールに拠点を置くLuxury Retreatsは、これまでに1600万ドルの資金調達を行っている。また、2015年に行われた1100万ドルの資金調達を報じたときにも触れたが、同社は既に何年間も黒字をキープしている。
Airbnb式の宿泊施設探しに対する、消費者の興味を上手く利用したばかりか、Luxury Retreatsは富裕層を狙ったサービスでビジネスを展開してきた。
「シェアリングエコノミーの爆発的な人気をうけ、私たちは期待通りのサービスを一貫して提供するということに商機を見出しました」とPoulinは資金調達時に話していた。
富裕層をターゲットにしているサービスとしては、最近AccorHotelsに1億7000万ドルで買収されたOneFineStayや、Index VenturesやGoogle Venturesの投資先で、高級宿泊施設のフラッシュセールをメンバー限定で提供しているSecret Escapes、さらにHomeAwayのサブブランドで、Luxury Retreatsに名前の似たLuxury Rentalsなどがある。
しかしLuxury Retreatsは、先述のどのサービスとも少し違っている。というのも、彼らは物件(Poulinは”キュレーション”と呼んでいる)を入念にチェックし、掲載する物件にさまざまな条件を儲けているのだ。Airbnbもサービスの品質向上にむけて、同じような仕組みを導入しようとしている。
「サイト上にたくさん物件を載せればOK、というわけにはいきません」とPoulinは話す。「私たちの秘密は、他のサービスよりも厳しく物件をコントロールしていることにあります。Luxury Retreatsのサービスは本当の意味でのP2Pではなく、全ての物件は認証を経ています。さらに富裕層向けの市場でも、シェアリングエコノミー系のサービスは求められています。高級感というのは、販売されるものではなく、届けられるものなんです」
物件の所有者のニーズに応じて、同社は20%もしくは「場合によってはもう少し多い」手数料をとっている。実はこの数字は、Airbnbや他の競合サービスが設定している種々の手数料を足し合わせたものとそこまで変わらない。Airbnbは5%前後を物件の所有者からとり、さらに6-12%を利用者からとっている(クリーニング費用を除く)。
現在Airbnbは、Luxury Retreatsの他にも、クラウドファンディングプラットフォームのTiltを5000万ドル以上で買収しようとしていると言われている。
興味深いことに、昨年末トルドー政権を代表して、在米カナダ大使がAirbnbに対して、カナダへの投資を行い雇用創出に貢献して欲しいとアピールした後に、今回の買収話が浮上した。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)