広島大学は、発光効率が最大80%という世界トップレベルの赤色発光シリコン量子ドットの合成に成功し、それを用いたシリコン量子ドットLEDを開発したと発表した。
10nm(ナノメートル)以下の発光性の半導体ナノ結晶「量子ドット」は、すでにタブレットや大画面テレビなどの発光体に利用され始めているが、現在はインジウム系(レアメタル)、カドミウム系や鉛系などの重金属で作られており、自然環境保護の観点から、毒性の少ないものが求められている。それに対してシリコン量子ドットは、砂や石から作れるシリコン製であるため、安全・安価であり、シリコン量子ドット溶液と高分子溶液を基板に塗布するという、簡便な製造法で作ることができる。
カドミウム系や鉛系を使った重金属製の量子ドットは、発光量子収率が最大98%と高いものの、そこには環境適合性と効率性との相反関係がある。欧米の研究グループからは、発光量子収率が60%を超えるシリコン量子ドットが報告されているが、その高効率発光のメカニズムは、よくわかっていなかった。
広島大学は、これまで17年間にわたりシリコン量子ドットの研究を続けており、今回、発光量子収率が最大80%という赤色シリコン量子ドットの合成に成功し、しかもその構造を明確化した。表面が水素で覆われた直径3nmのシリコン量子ドットを合成し、これをコアとして、表面に結合する物質(リガンド)で化学的に変化させ、デシル基修飾のシリコン量子ドットを合成した。このときの化学的変化(化学修飾)を、熱反応と常温反応という2つの種類で行ったのだが、そこで得られたシリコン量子ドットの構造と物性を数値化し、高効率発光のメカニズムに紐付けたことが、この研究のポイントだと広島大学では話している。
今回開発された製造手法は、他のリガンドを持つシリコン量子ドットにも拡張できる汎用的なものであり、高効率シリコン量子ドットとそのLEDの製造における有力モデルになるとのことだ。今後は、さらに高強度、高効率のシリコン量子ドットとLED、その他の発光色への展開を目指すとしている。