ポケモンGOで一気にARに注目が集まるようになったが、ARをゲームではなく仕事の効率化にも役立てようとしている企業も出てきているようだ。本日、小柳建設は、ホログラフィックコンピューター「Micorosoft HoloLens」の活用したプロジェクトを推進すると発表した。このプロジェクトは日本マイクロソフトと連携して進めていくという。
TechCrunchの読者はご存知かと思うが、HoloLensはWindows 10を搭載したメガネ型の端末で、拡張現実(AR)や複合現実(MR)を体験できる。HoloLensは世界で9ヵ国で展開し、日本では2017年1月に開発者向けと法人向けに提供を開始している。現在ダウンロード可能なアプリは150以上あり、「世界の中でも日本のHoloLensへの注目度が高い」と本日の会見で、日本マイクロフトの代表取締役を務める平野拓也氏は話した。
小柳建設と日本マイクロソフトは、建設業にHoloLensを活用するプロジェクトを「Holostruction」と銘打つ。このプロジェクトには日本マイクロソフトのみならず、米国本社も協力して進めるそうだ。具体的には3つのコンセプトでHolostructionプロジェクトを推進する。
1つ目は、建築計画から施工、修繕までの計画を可視化し、業務の透明性を図るプロジェクトだ。建設計画の進捗や設計変更の履歴などもトラックし、情報を一元管理できるようにする。
2つ目は建造物を建てたあとでも、建造物に関わる情報を活用できるようにする。建造物に関する書類や写真といった情報を格納することで、例えば建物の検査時に活用し、検査員の負担を軽くすることなどに役立てるという。
3つ目は、コミュニケーションを効率化することだ。1つの建物を建てるにも、多くの業者が関わっている。HoloLensを使うことで関係者が一箇所に集まらなくても情報が共有できるようになる。視界を共有することで、現場に行かなくても現場判断や事業判断ができるようになるだろう。こうした機能で業務を効率化し、働き方改革を促進したい考えだ。
今回の会見に伴い、体験会も実施された。デモはHoloLensを装着した4人が同時に橋の建設に関わる工程表を見るという内容だった。工程表の各段階を選択すると、建築途中の橋の様子が表示される。橋は縮小サイズでも実物大でも表示できるため、実物大表示をするとまるで橋の上に立っているかのように見えた。紙の図面で橋を見ても分かりづらいが、HoloLensで全員が同じように実物を見れるということは、仕事を進める上で共通認識を持つのに役立ちそうだ。
小柳建設は今回の会見で、建築業のデジタル化で情報の透明化を図り、建築業に関わる人々の働き方を刷新したいと話していた。小柳建設の代表取締役社長を務める小柳卓蔵氏は、「建設業界では少子高齢化で担い手が減っている上、3K(きつい、汚い、危険)のイメージがある。建設に携わる人々の負担を下げ、建設をかっこいい仕事、尊敬される仕事にしたい」と言う。
日本マイクロソフトの平野氏は、今後さらにAIやコグニティブコンピューティングなどの技術面で働き方やデジタルトランスフォメーションを支援することを視野に入れているという。また使い方や運用面での支援など、協業パターンを広げていきたいと話している。