情報化時代は終わった、ようこそ体験型時代へ

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編集部記:執筆者のMike WadheraはSports Feedのファウンダーである。

ウェブの登場から25年が経過し、情報化時代は終わろうとしている。モバイル画面とどこでもインターネットが使えるようになったおかげで、私が「体験型時代」と呼ぶ時代に突入しようとしているのだ。

最後にFacebookのステータスをアップデートしたのはいつだろうか?もうステータスなんてアップデートしていないかもしれない。この記事では、Facebookの16億人ユーザーによるFacebookの元々のステータスアップデートの回数は21%下落しているという。

ステータスの入力ボックスは情報化時代の象徴だ。情報化時代はデスクトップ・コンピューターが支配し、企業のミッションは世界の情報を整理することにあった。一方、体験型時代を象徴するものはまるで違う。体験型時代はマイクロ・コンピューター、モバイルセンサー、そして高速インターネット接続から誕生した。

ステータスの入力ボックスの終焉は、情報から体験へのシフトにおける小さな要素にすぎない。このシフトを主導していものは何か?簡単に言えば、インターネット接続可能なデバイスによって、ユーザーのオンラインにおけるやりとりの文脈が変わったことだ。

プロフィールに書いてあることは本来のあなたではない

これがどのように現れるかについて説明するのに、FacebookSnapchatを例に挙げる。

Facebookは情報化時代に根付いたサービスだ。その時代の他のソーシャルネットワークと同じように、Facebookは「情報集積」というデスクトップ時代の基本原則に則って構築されている。

情報集積においてユーザーのアイデンティティは、ユーザーがこれまでに保存した情報の集積によるデジタルプロフィールにあるとみなす。テキスト、写真、動画、ウェブページといった情報の集積だ。(Evan Spiegelが2015年に公開したWhat is Snapchat?のYouTube動画でこれについて初めて言及している)。情報化時代で私たちはデジタル・プロフィールで自分を表現していた。

しかしモバイルの台頭は、人のデジタルなアイデンティティの捉え方を変えた。インターネットに接続したカメラから私たちは人生の瞬間をその場で捉えることができるようになり、継続的な自己表現のための情報集積は二の次になった。「仮想世界の自分」は曖昧なものになった。私という存在は、これまで私が行ってきたことの「結果」ではあるが、これまでの「集積」ではないということだ。Snapchatはこの現実観に根付いたサービスを提供する。

人はプロフィールではない。あなたはあなたなのだ。

多くの人はSnapchatの中核は「秘密主義」にあると考えているかもしれないが、Snapchatの短期間のメッセージがもたらす本当のイノベーションはただ自動でメッセージが消えることではない。Snapchatのイノベーションは、デスクトップ・コンピューターの時代から持ってきてしまった集積するという習慣を破るよう人々に強制することにある。その結果、プロフィールはソーシャル世界の主軸ではなくなった。体験型時代で人はプロフィールではなくなった。あなたはあなたなのだ。

語るのではなく、見せる

体験型時代の中心となる考えはこうだ。私の見ている世界を見せるので、あなたにはそれを見て欲しい。読者が「ソーシャルとはそもそもそういうものでしょう!」と叫ぶかもしれないし、確かにその通りだ。変わったのは、ストーリーの最初から最後まで視覚的に伝えるようになったことだ。これで伝えたいストーリーがより正確に表現できるようになった。

情報化時代、コミュニケーションは情報で始まった。Facebookではまずステータスの入力ボックスに何か入力して、位置情報などのメタデータを付ける。そしてどう思っているかの感情をいくつかの選択肢から選ぶ。第一に情報というアプローチはFacebookのフィードバックの仕組みにも見て取れる。6つの予め用意された反応ボタンとスレッドによるコメント欄がそれだ。

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Snapchatはそれとは対照的にいつもカメラから始まる。フィードバックは受動的なものだ。ストーリーを上にスワイプするとどの友達がスナップを視聴したのかがわかる。体験型時代で主要なインプットは視覚的なものであり、重要なフィードバックは他ユーザーからの「注目」である。

現在、コンテンツ共有と他ユーザーからの注目というフィードバックのループはモバイルで始まり、モバイルで終わる。将来的には例えば、コンタクトレンズで始まり、VRで終わるということになるかもしれない。

体験型時代の構成スタック

Facebookの近年の投資もこの現実観に沿う。Facebookはライブ動画、360度カメラとプロダクトとしてのVRを単一のポートフォリオに集約した。しかしFacebookだけが先を見て、これらのテクノロジーがどのような役割を持つのかを検討しているのではない。ステルスで開発を進めるARスタートアップMagic Leapの話を聞いたことがあるかもしれない。Magic Leapのバリュエーションは45億ドルであり、GoogleAlibabaといった企業から出資を受けている。

世界的な競争は進行中で、私が「体験型時代の構成スタック」と呼ぶテクノロジーの階層を形づくり始めている。

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体験型時代の構成スタック

一番下の層「Layer 0」は現実世界を指す。構成スタック全体で現実世界の瞬間を捉えて、コミュニケーションをすることを実現する。現実が全ての土台にある。

階層を登るごとに、物理的な要素から理論的な要素に移行する。最上位のアプリケーションのレイヤーはSnapchat LiveやPeriscopeのようなプロダクトで構成される。将来登場するプロダクトはさらに没入的になるだろう。例えば、Sean ParkerのAirtimeのリローンチやMagic LeapのA New Morningを見てみるといい。

体験型時代の構成スタックにおいて各階層が独自に成長するごとに市場にプロダクトが届くのが早まるだろう。同時に、各階層は下の階層の進歩の恩恵を受ける。例えば、高速3G回線がAppleのApp Storeの普及に貢献し、それがモバイル全体の進化に貢献したと説明することができる。体験型時代の最良のプロダクトは、下の階層における段階的な進歩をタイムリーに新しいアプリに反映させるだろう。いくつかの階層はまだ誕生したばかりであることを考えると、将来的な展望は大きく開けている。

私たちのオンラインとオフラインのアイデンティティは結びつこうとしている。私たちは友人に話すストーリーの一部始終を視覚的に表現できる。新しいスタックの各レイヤーへの投資が体験型プロダクトの開発を加速させている。これらのトレンドが全て合わさって、新たなテクノロジーの黄金時代の扉が開かれるのだ。

開発にこれ以上良い時代はないだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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