愛する任天堂への私の贈り物―ヒトリデハキケンジャ コレヲ サズケヨウ

「だからそう言っただろう」とは言いたくないが…

私が正しかったのはうれしいが、任天堂のためには悲しむべきことだ。私は任天堂が本当に好きだ。任天堂を愛している。それだけにこの現状を見るのが辛い。

そこで私なりのアドバイスをしたい。多くの識者は「スマートフォン対応を急げ」と言っているようだが、私の処方箋は違う。一部は前回述べたことの繰り返しになるが、読者からも支持が多かったので、ここでさらに敷衍してみたい。なぜなら私は任天堂の復活を心から願っているからだ。

現在任天堂が早急に必要としているのは新たなゲーム機だ。Wii Uのサポートは続けなければならないだろうが、ここで失敗は失敗として認め、新システムの開発に全力を集中しなければならない。

その内容はレトロな任天堂ゲームがプレイできる99ドルの新しい専用マシンだ。マリオ、ゼルダ、イカルス、ドンキーコング、ポケモン等々。任天堂にはまちがいなく数を売れる無数のヒットタイトルがある。相当の期間にわたって次々にリリースしていくことができるだけの蓄積がある。販売チャンネルは店売りではなくオンラインのみとする。

新ゲーム機用のゲームは物理的メディアでは販売しない。カートリッジなし、光学ドライブなし。ハードディスクとオンラインストアのみだ。ゲームの価格はタイトルの人気度によって5ドルから15ドル程度とする。ローンチ後数ヶ月で数百、1年後には千本くらいのタイトルをリリースできるはずだ。これはゲーム業界を震撼させるだろう。

ここまでが第一段階。

第二段階では古い人気ゲームタイトルを新しいハードウェアに合わせてアップデートする。グラフィックスを高精細度にし、ゲーム内に新しいレベルを追加する。新バージョンのマリオ、ゼルダ、イカルス、ドンキーコング、ポケモンを登場させる。新バージョンは1タイトルあたり15ドルから25ドルとする。これでまたライバルは震撼する。

ここで第三段階に入る。

他のクラシック・ゲームのメーカーと提携するのだ。つまりAtariやSegaなどとライセンス契約を結んで新ゲーム機で発売する。任天堂の旧タイトルと同様、グラフィックスをバージョンアップし、新しいレベルを追加する。こちらも15ドルから25ドルとしてオンラインストアで売る。金が奔流のように流れ込んでくる。

誰が考えてもこういうゲーム機が売れないわけがない。99ドルならライバルはすべて消し飛ぶだろう。

Wiiもバーチャル・コンソールで多少これに似たことをしているが、十分ではない。遅すぎるし、操作が直感的でない。しかもWiiという石臼に縛りつけられている。旧タイトルこそ主役でなければならない。

任天堂の圧倒的な強みはノスタルジアにある。任天堂はその強みを活かすべきであり、ソニーやMicrosoftとの競争に入り込むべきではない。私がここで提案しているような戦略はもちろんライバルも真似ができる。ただしライバルには任天堂の知的財産がない。

ライバルを棒立ちにさせたところで、最後のアッパーカットを食わせる。

任天堂は新ゲーム機のSDKを全デベロッパーに公開する。大手ゲームスタジオだけでなく、インディーのデベロッパーにも公開するというのが重要な点だ。そして大メーカーもインディーも公平に取り扱う。料金は1タイトルあたり5ドルから25ドル。任天堂は一律30%のコミッションを徴収し、デベロッパーが70%を得る。

と、ここまで書いてきて私は少しバカバカしくなってきた。もちろん、もちろん、これは任天堂にとって最良の戦略である。しかし任天堂はこの戦略を採用しないだろう。その代わりに最低のスマートフォンマーケティングアプリやらフィットネスなんとかにキャラをライセンスするといった方向に迷い込むだろう。なぜ彼らは正しい戦略が見えないのだろう?

困ったことに、誇りが高過ぎるのだ。任天堂はスマートフォンゲームのメーカーになりたがっている。それはそれでなんとかなるかもしれない。しかしその場合には以前の任天堂ではない。Atari、Segaなどと同様、往年の姿の抜け殻になって終わるだろう。

99ドルの任天堂ボックスはゲーム機が軒並み500ドルもする世界で間違いなく圧勝できる。最近のiOSゲームを見てもわかるようにARMチップはゲームに十分使えるようになった。あと任天堂に必要なのは本当に使い勝手のいいコントローラーの開発だが、任天堂にはそれをする能力が十分あるはずだ。

新しい任天堂ボックスが成功したら同じゲームをモバイルでプレイできるデバイスを投入すればよい。iPhoneもAndroidも気にすることはない。任天堂が自分の強みを活かせば十分に我が道を行ける。

そしてそこが鍵だ。任天堂はソニーでもMicrosoftでもAppleでもGoogleでもない。任天堂はゲーム会社であり、業界で最良、最大のゲーム資産を持っている。任天堂は軍拡競争に敗れつつあるが、それはそもそもそんな競争に参加したのが間違いなのだ。

そろそろ別の道を選ぶべき時だ。他の会社なら弱みとなるところを任天堂なら強みに変えることができる。新しい任天堂ボックスは起死回生の一手となりうる。

任天堂よ、ヒトリデハキケンジャ コレヲ サズケヨウ!

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


投稿者:

TechCrunch Japan

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