(本稿の執筆はEvan Fleischer)
MITのメディアラボにて、Roy ShilkrotやJochen Huberらが「FingerReader」の研究を行っている。これを指輪のように指につけておくと、搭載されているカメラで印刷された文字を認識して、合成音声で読み上げてくれるものだ。オープンソースのソフトウェアに改造を加えて機能を実現している。
上のビデオでもわかるように、FingerReaderの音声は、機械的でやや聞き取りにくいものとなっている。あまり口を動かさずにもごもごと話しているような感じだ。もちろん開発者もこの点を十分認識していて、他の機能も含めてさらなる改良を行っているところだ。プラスチシン素材で作られている現在のFingerReader自体もまだまだ試験段階のものなのだ。現在のところでは重さは普通の指輪程度となっている。この指輪を付けた指で読みたいテキストを指すと、リングに搭載された小さなカメラが文字を認識して読み上げてくれる。
薬の入った小さな瓶や、雑誌などに掲載される野球の成績データほどに文字が小さくなると、さすがに読み取りはできない。しかし12ポイント程度の文字であれば、コンピュータ上のものでも認識して音声化してくれる。文字の書いてある部分から指が外れてしまえば、それを通知してもくれる。文字が書いてあるところに戻れば、再度、読み上げ作業が始まる。ここまでの説明を読んで「Reading Pen」を思い出した人もいることだろう。HuberおよびShilkrotは、リアルタイムのフィードバックが行える点でReading Penより優れるものだとしている。FingerReaderでは「行」を読み取りの対象としており、この点でも「単語」を読み取るReading Penとは異なるものだと主張している。
ShilkrotとPh.Dの学生にインタビューしたところ、FingerReaderは視覚障害を持つ人のみを対象としたものではないと述べていた。万人向けのデバイスとして進化させていく予定で、たとえば翻訳機能を持たせるというような方向性を考えているのだそうだ。視覚障害者専用のものでないというのは、障害を持つ人の心理的障壁を低める効果もあるのだとのこと。ちなみにイギリスの王立盲人協会(Royal National Institute of the Blind)が行った2011年の調査によれば、大活字版や音読版ないし点字版が用意されている書籍は、電子版も含めて全体の7%に過ぎないのだとのこと。大活字版を有効に活用できるデバイスが登場してくれば、これまでは大活字版などを考えたこともなかったような書籍も前向きに検討されるようになるかもしれない。
先にも記したように、FingerReaderは、直ちに市場に出てくるというものでもない。Shilkrotは、コスト面でもまだまだ実用には遠いのだと述べる。今のところは最終的にどの程度の価格で出てくることになるのか予想もできない段階ではある。製品はまだまだ発展の余地を多く残しており、さらなる小型化や、スタンドアロンのデバイスとしての進化も、またPCやスマートフォンとの連携を深める方向でもも、可能性が探られているところだ。
Video credit: FingerReader – Wearable Text-Reading Device from Fluid Interfaces on Vimeo.
[原文へ]
(翻訳:Maeda, H)