VCの老舗Draperは最近、研究開発部門を作ったが、そこから産み落とされる最初の卵は、船外作業をした宇宙飛行士が安全に帰船できるための宇宙服だ。すでに特許を申請しているその技術は、本船に帰還する際の宇宙飛行士自身による、ぎごちない‘手作業ナビ’をなくして自動化する。
その機能を宇宙飛行士自身やそばにいるほかのクルー、あるいは地上にいるスタッフがonにすると、宇宙服が内蔵している補助エンジンが作動し、自動的に、指定された安全な場所までガイドする。宇宙ではGPSが使えないから、本船帰還のナビで間違うと、酸素不足など生命の危険にさらされる可能性もある。本製品は、そういうヒューマンエラーを自動的に防ぐ。
そのシステムは帰還過程の100%をコントロールするわけではないが、宇宙服の中にいる飛行士のHUD(ヘッドアップディスプレイ)上に、視覚的な情報や指示を表示する。また進行方向を変えるべき箇所では音声による指示も行われる。さらに、船外活動中で起きた異状に関しては、触覚へのフィードバックも行われる。それらのサインが、最初から決まっているプランからの逸脱を緊急要請する場合もある。
応用範囲は宇宙だけでなく、地上での危険作業やスカイダイビングなどにも利用できる。またブーツやグラブについても研究が進められており、それらの末梢器具からのさらに精密な位置/動き情報を期待できる。
多くの場合、これまでの宇宙服は着用者にとって邪魔物である。しかしこのような研究によって機能が強化され、邪魔物を卒業できるかもしれない。火星の植民地化など、宇宙の適正な商用化が軌道に乗るためには、多機能で安全性の高い宇宙服がどうしても必要だ。