新卒CEOが指揮を執る「声」でつながるマッチングアプリ「koely」が誕生するまで

日々数多くのマッチングアプリが誕生しており、LoveTech Mediaが発表した「出会い支援サービス カオスマップ2019」によると、LGBT用や飲食でマッチするなどジャンルも細分化している。そんな中、2月13日に「声」でマッチングするアプリ「koely」(コエリー)がリリースされた。

相手のプロフィールを見て8秒経つと自動的に電話がかかる仕組みが最大の特徴。相手の着信を受け入れると3分間の会話が可能で、時間の延長も可能だ。koelyを運営しているのはサイバーエージェントの子会社CAmotion。CEOの村岡紗綾さんは内定時にCAmotionのCEOに就任していたという異色の経歴の持ち主。「エモい夜に寄り添うマッチングアプリを作りたかった」と語る彼女にkoely誕生の経緯を聞いた。

マッチングアプリのコピペ文や作業的なコミュニケーションに課題を感じていた

村岡さんは大学3年生のときにサイバーエージェントの選抜制インターンシップに参加。選抜制インターンシップとは「新規事業提案で優勝したチームが子会社を設立する選択肢が得られる」というもの。とはいえ、彼女はもともと起業家ではなく広告代理店希望だった。

「就活の一環でインターンをしていました。ただ、新規事業を提案するにあたり、経営者目線でクリエイティブの設計や数値目標などを設定するのがとても楽しくて。純粋に経営者をやってみたいと思うようになり、経営に興味を持ち始めました」。

新規事業のプレゼンでは、「koely」の基となる声によるマッチングアプリを提案。この内容は彼女自身の原体験が基になっている。

「自分も友達もいろいろなマッチングアプリを日常的に使っていました。ただ、相手からくるメッセージがコピペっぽい文章だったり、作業的なコミュニケーションになってしまっていることに課題を感じていました。もしかしたら、コピペだからとスルーした相手が運命の相手だったかもしれませんよね。ひとつひとつの出会いをもっと感情が動くものにしたいという思いで声のマッチングアプリを提案しました」。

開発のスケジュールが遅れるも、自信はあったので細部までこだわりたかった

村岡さんのチームは見事優勝。2019年の入社を待たずして、2018年4月に会社を設立した。創業時のメンバーは全員同期で、プロダクトマネージャー1人・プランナー1人・デザイナー1人・エンジニア2人と自身を入れた計6名。

「『同じ価値観や世界観を持っている人と事業をやっていきたい』という気持ちが強くあったので同期を採用しました。開発もデザインも社内のメンバーが作りました」。

UIで特にこだわったのは「エモさ」。夕暮れどきから夜のリラックスしたときに使ってほしいという思いから、その時間帯の空気を想起させる紫や青を基調としたデザインになっている。しかし開発に手間がかかり、完成までは時間を費やした。

「通話機能の持ったアプリ開発の知見を持っている人がいなかったため、リリースまで時間がかかってしまいました。日々スケジュールが後ろ倒しになってしまいましたが、焦りはなかったですね。焦ったほうがよかったんですけど(笑)、自分の中でこのサービスに対する自信はずっとあったので」。

夜に気になる人と電話することを「コエリーする」と呼ばれるようにすることが目標

新卒経営者という立場でわからないことだらけの中、社内はもちろん社外の経営者にもアドバイスをもらいに行ったとのこと。

「toCサービスを運営している経営者の方10名くらいに、TwitterのDMで『こういうことで悩んでいるのですが、どう思いますか?』と聞いて回りました。全員面識のない方々なのでダメモトだったのですが、4名の方から返信をいただけたり、直接お会いする場を設けていただきました。社内にはない知見をいただけたので、そのときのアドバイスはかなり役に立っています。厚意でアドバイスをくださった方々のために、私自身もそうですし、事業成功という形でのパフォーマンスで恩返しをしたいとさらにやる気になりました」。

今後の課題は、電話機能に対する抵抗をなくすこと。

「相手のことが早く深く理解でき、仲良くなれることに価値を感じ、声から生まれる熱量をもっと感じてもらえるようにしたいです。そして、検索することを『ググる』物を売ることを『メルカリする、と言うように、夜の暇な時間に誰かに電話すること『コエリーする』と言われるようになることが目標です」。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。