新型コロナで人々は建物の人口密度を計測するDensityの技術を求め始めた

新型コロナウイルス(COVID-19)が大流行する前から、いくつもの企業がDensity(デンシティー)の技術を利用してきた。例えばTechCrunchの親会社であるVerizon(ベライゾン)も、Yahoo!(ヤフー)とAol(エイオーエル)の統合後のオフィス空間を効率的に利用するために、以前から導入している。そして今、新型コロナ禍の影響で建物や部屋の人口密度を測定しようと、誰もがDensityの技術を欲しがるようになった。

同社が新しい投資ラウンドで5100万ドル(約54億円)を調達できたのも、ひとつにはそのお陰がある。このラウンドはKleiner Perkins(クレイナー・パーキンス)が主導し、Dick Costolo(ディック・コストロ)氏の01 Advisors(ゼロワン・アドバイザー)や、ロサンゼルスを拠点とする投資会社Upfront Ventures(アップフロント・ベンチャーズ)など、以前からの投資会社が参加している。

この需要の「第1の牽引力は、プライバシーを侵害することなく建物の利用を安全に再開できる点です」と、Densityの最高責任者Andrew Farah(アンドリュ−・ファラー)氏はいう。

同社はデータを愛するテック企業、小売店、コーヒーチェーンのためのサービスを提供する企業としてスタートしたものの、今では共有スペースを持つあらゆる事業所、つまり出荷センター、食料品店、倉庫、食肉加工場そしてTechCrunchの本社のような場所で必要とされる普遍的なテクノロジーの提供者になったとファラー氏は話す。

今回調達した資金は何に使われるのか?ファラー氏によればセールス、マーケティング、さらにはその技術を顧客の建物に導入する目的に使うという。

「私たちが計画している投資の大半はカスタマーサクセス、基幹インフラ、製品とセールスの拡大です」とファラー氏。「お客様が私たちの企業名を初めて知るのは、営業で訪問してデモをお見せしたときです」。

同社のハードウェアとソフトウェアサービスへの注文が殺到していると、彼はいう。注文は2万〜5万ドル(約200万〜520万円)程度の試験導入から、100万ドル(約1億円)単位の1000ユニット初期導入まで幅がある。「すべての顧客は初期導入後、その3倍の規模に拡大しています」と彼は話す。Densityでは、最初のセンサーの設置に1回かぎりの料金として895ドル(約9万4000円)かかる。その他に必要な年間のデータアクセス料金は、センサー1台あたり800ドル(約8万4000円)となっている。

Densityはチャンネルパートナーと直接販売の両方で成り立っており、潜在顧客が急増したことで、投資が大幅に膨らんだのだとファラー氏は話している。

「多くの顧客が、1週間前に遭遇した問題を解決しようと奮闘しています。不動産部門と保安部門からは、これまでにない緊迫度が伝わってきています」とファラー氏。

この背景には、いまだに米国で暴れ回る新型コロナウイルスとの戦いが続く中、公共スペースで安全なソーシャルディスタンスを確保したいと願う会社従業員の要請がある。

新型コロナは現在の最大のセールスポイントになっているが、Upfront VenturesのMark Suster(マーク・サスター)氏などの投資家は、Densityの技術の価値をもっと早い時期から見抜いていた。「私の投資方針は、次世代のI/Oとしてのコンピュータービジョンを信じる気持ちと、投資家のジレンマつまりインターネットでの大成功はすべてデフレ経済に動かされているという信念を掛け合わせたものだ。現在、人をトラッキングする技術は極めて高価であり、ほとんどが小売り環境で使われている」とサスター氏は、2016年にDensityへの初めての投資を発表した際のブログ記事に書いている(Medium投稿)。「コストが普及を大きく妨げている。そこを大胆に変革しなければならない」。

 

Densityのトラッキング能力を示した2016年のアニメーション(GIPHYより)

最近になってDensityのコンピュータービジョン技術に資金提供を行った投資会社Kleiner Perkinsは、この投資に1年間を費やした。

「彼らが投資家と話を始めるという噂を聞きました」と話すKleiner Perkinsのパートナーの1人で同社の新ディレクターであるIlya Fushman(イリヤ・フッシュマン)氏がファラー氏と会うようになったのは、およそ1年前だ。

フッシュマン氏によれば、Kleinerは不動産市場に興味があり、カードや認証装置もいらない建物の入退館管理のスタートアップであるProxy(プロクシー)に最近行った投資の路線に、Densityが重なったのだという。

私たちのように市場規模で見るならば、不動産と同程度の市場はそうありません」とフッシュマン氏。「また、歴史的にテクノロジーが浸透しにくい市場もあります。ビル管理は、空間利用となるとほとんどが紙と鉛筆で行われる世界です」。

入退館管理も空間利用も、新型コロナ禍以来、多くの企業がもっと効率的にコントロールしたいと考えている分野だ。Densityのような企業への支援は、まさに自然の成り行きだったと彼は話していた。

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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