新型コロナ時に不可欠なVRのトレーニング施設を製造工場の現場にもたらすTransfrが12億円調達

新型コロナウイルスにより米国全体で何百万人もの労働者が職場を追われた。企業が業績を回復するためには、良く練られた、持続可能な方法で従業員に再びスキルを身につけてもらう必要がある。ただし、トレーニングと採用は企業にとって数十万ドル(数千万円)の費用がかかる可能性があり、不安定な時期には正当化が難しい多額の投資になる。

Transfr(トランスファー)の創業者であるBharani Rajakumar(バラニ・ラジャクマール)氏にとって、職場を追われた労働者のジレンマは仮想現実テクノロジーを使う完璧なケースだ。Transfrは仮想現実(VR)を活用して、トレーニングのために製造工場の現場や倉庫のシミュレーションを作る。同社のプラットフォームの入門レベルでは、労働者には安全かつ効果的に作業を学ぶ方法が提供され、企業には大人数のスキルアップのニーズに対するソリューションが提供される。

Transfrはその中核に「教室からキャリアへのパイプライン」を構築しているとラジャクマール氏はいう。企業は必要なトレーニングに影響力を持っており、学生は職業訓練学校、現場、トレーニング施設内で入門レベルの従業員になることができる。以下は、研修生の体験についての同社のプレゼンテーションだ。

Transfrのコアテクノロジーはソフトウェアだ。ハードウェアに関しては、同社はFacebook(フェイスブック)のOculus QuestヘッドセットとOculus for Businessを使用している。これは一般的な顧客が店舗で入手できるハードウェアではない。

Transfrは、サービスとしてのソフトウェア(service-as-a-service)のライセンス料を企業に請求することで収益を上げている。ライセンス料は、従業員の規模によっては最大1万ドル(約100万円)になる。

Transfrは、メンターによるVRトレーニングプログラミングとして始った。以下に示すように、同社はバーテンダーから手術スキルまであらゆるコースを提供している。

職場を追われた労働者の訓練へと移行したのは、入門レベルの従業員との関係において誰が購買力を持っているかを理解したからだとラジャクマール氏はいう。つまり、より高度なスキルを持つ労働者から最も多くを得たのは企業だったのだ。

仮想現実は新型コロナのパンデミックにより全体として盛り上がり(未訳記事)を見せ、評価を上げたが、まだEdTechの創業者の間では広く採用されていない。 ラジャクマール氏は仮想現実がこのセクターにとって革命的になる可能性があると考えている。同氏は2017年にサンフランシスコで開催されたゲームの会議に参加したときに初めて仮想現実に触れた。

「ゲームとポルノがこのテクノロジーの2大産業だとは思いません」と同氏は述べた。「これが教育と学習にどう役に立つのか、誰も理解していないと思います」。

理科の授業で使える仮想現実シミュレーションを学校に提供しているLabster(ラブスター)は、2020年3月以来プロダクトの使用量が15倍に増加した。同社は8月にアジアに進出に向け資金調達を行った。

LabsterのCEOで共同創業者のMichael Jensen(マイケル・ジェンセン)氏は、Transfrのゲーミフィケーション(ゲームの要素を他の分野で活かすこと)とシンプルなUXは採用に向いていると述べているが、開発コストが同社の規模を拡大する上で最大の障壁になる可能性があると述べた。

「今日でも、安定していて洗練されたVRアプリケーションを開発するにはコストがかかりすぎます。当社を含むすべてのプレーヤーは、真に成功するために、再利用性、テスト可能性、スケーラビリティについて考える必要があります」

Transfrは作業シミュレーションのカタログを作成することでコストを削減しようとしている。「Transfrバーチャルリアリティトレーニング施設」といったところだ。同じ教材をさまざまな顧客が再利用できるため、新しい顧客ごとにゼロから始める必要がない。毎月、需要のある新しい仕事をトレーニング施設に追加し、拡大を続けている。3月以降、Transfrの顧客は4倍になった。

ただし最も注目すべきは、アラバマ州でのTransfrの最近の仕事だ。同社はアラバマ州全体のイニシアチブを支援している。同社のソフトウェアがスキル取得の目的でコミュニティカレッジシステムや産業労働者委員会で使用されている。そうした大規模な契約があって初めて、Transfrは労働者を訓練するという使命のために成長することができる。ラジャクマール氏は来年、2021年には10〜15の同様の契約を締結したいと考えている。

これは野心的な目標だ。達成に向けた資金調達の価値がある目標でもある。Transfrは米国時間11月19日、Firework Venturesがリードするラウンドで1200万ドル(約12億5000万円)を調達したと発表した。この資金は主に、Transfrのバーチャルリアリティシミュレーションのカタログ作成のために使用される。同社はまだ利益を上げていないが、ラジャクマール氏は、もっとゆっくりとした成長率で進むならば利益を計上できる「可能性がある」と述べた。

「新型コロナの前であれば、人々は当社のことを労働者の訓練に取り組む『善きサマリア人』だといったでしょう」と同氏は述べた。「新型コロナ後の世界で人々は、当社が不可欠だと言っています」。

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カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:Transfr資金調達

画像クレジット:wacomka / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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