最大で50億円規模目指す「ドローンファンド2号」が設立へ、初期投資家として本田圭佑氏やKDDIらが参画

インターネットに接続されたドローンが当たり前のように空を飛んで、モノを運んだり、監視をしたり、それをクラウドで管理できる「ドローン前提社会」が5年以内に実現すると思っている——少し先の未来を見据え、個人投資家として知られる千葉功太郎氏がドローン領域に特化した「Drone Fund(ドローンファンド)」を立ち上げたのは2017年6月のこと。

それから約1年が経過した本日7月31日、千葉氏は新たに2号ファンド(Drone Fund2号 / 正式名称は千葉道場ドローン部2号投資事業有限責任組合)を8月1日に設立することを発表した。

1号ファンドから目指していたドローン前提社会の実現に加え、空飛ぶクルマを用いた「エアモビリティ社会」の実現を目指し、ドローンスタートアップ企業に特化して投資を加速させていくという。

今回立ち上げた2号ファンドには初期の投資家としてみずほ銀行やKDDI、セガサミーといった大企業に加えて、サッカー日本代表の本田圭佑氏(個人投資用のKSK Angel Fund)やマブチモーター創業家一家の馬渕喬氏、麗子氏、健彦氏が新規投資家として参画を表明。

合わせてMistletoe、キャナルベンチャーズ、日本アジアグループ、FFG ベンチャービジネスパートナーズ、オークファン、リバネスといった面々が1号ファンドから継続して出資する。

千葉氏によると2018年9月末をファーストクローズ、12月末をファイナルクローズとして「最大で50億円規模のファンド」に向けて動いているそう。すぐに中国やアメリカでそれ以上のファンドができる可能性はあるとした上で、これが実現すればドローンに特化したファンドでは世界でも最大級の規模になるという。

「想定よりも1年前倒しで進んだ」日本のドローン市場

Drone Fundを立ち上げてから約1年。この期間で日本のドローン市場はどのように変わってきたのだろうか。総額16億円規模の1号ファンドを通じて20社のドローンスタートアップに投資をしてきた千葉氏は、「当初2年ぐらいかかると思っていたイメージが、1年前倒しで実現している」と話す。

「1号ファンドを立ち上げた際は、まだ市場も法整備も進んでおらず手探りで始めたような状態だった。この1年を振り返ると、まずはこんなに日本国内で(投資の対象となる)ドローンスタートアップが生まれていたことに驚いている。もちろん実証実験や法整備が進んだことに加えて、大企業の動きも活発になってきた」(千葉氏)

法整備に関しては自民党の議員で構成されるドローン議連や官民協議会のような場において、ドローンを取り巻く制度や今後の方向性に関する議論が定期的に開催されている。また政府では年内を目処に経産省と国交省に「空飛ぶクルマ」に関して官民で議論する協議会と、ロードマップを策定する予定だ。

もともとドローンに関しては空の産業革命に向けたロードマップが準備されていたけれど、それとは別でエアモビリティのロードマップが作られるのは珍しい。「そんな国は先進国でもまだ例がなく、かなりアグレッシブ。製造では中国、ネットサービスではアメリカの勢いがあるが、法整備においては日本はかなり良いペースできている」(千葉氏)という。

茨城県にある竜ヶ崎飛行場で行われた記者会見ではドローンの飛行デモも実施した

実証実験に関しても農業や物流、検査などさまざまな分野で実施が進んだ。千葉氏いわく「次の1年は社会実装の段階。大企業が自分たちのビジネスの中でドローンを取り入れていくフェーズ」になる。

大企業内でドローンビジネスへの関心度が高まっていることはDrone Fundへ投資している企業を見ていてもわかるだろう。35社が投資家として参画した1号ファンドに続き、今回の2号ファンドではKDDIやみずほ銀行、セガサミーが加わった。

「まだ先が見えづらい市場にも関わらず35社が投資家として一緒にチャレンジをしてくれたことは、ひとつのムーブメントとして大きい。当初はふわっとしていた状態だったけれど、次第に投資家と投資先がひとつのグループになって活動できるようになってきた」(千葉氏)

Drone Fundでは設立時からスタートアップと投資家や大企業をつなぐ役割を目指していたけれど、同ファンドがハブとなることで、大企業がドローンビジネスにエントリーしやすくなる土壌が少しづつできてきているようだ。

ドローンの日本国内市場は2024 年までに2530億円を超える規模に成長すると予想されていて、世界で見ると2022年におけるドローンの潜在利用市場は18兆円を超える規模にまでなるという予測がある。今後の成長を期待して、これから大企業とドローンスタートアップのコラボレーションもさらに活発になっていくのではないだろうか。

2号ファンドの投資家にもさらなる国内の大手企業や個人投資家が参画予定だという。

日本企業が世界のドローン業界をリードする未来を目指して

Drone Fundが目指すドローン前提社会のイメージ。2023年に六本木ヒルズから見た景色だという

冒頭でも触れた通り、Drone Fundが目指すのは「ドローン前提社会を創る」こと。これは東京のような都市で多数の自立飛行ドローンが活躍する社会(レベル4)を指している。このドローン前提社会と同じく期待が集まるエアモビリティ社会に向けて、世界で戦える日本のスタートアップを育てることが2号ファンドの目標だ。

今回、日本マイクロソフトの業務執行役員でDrone Fundのアドバイザリーを務める西脇資哲氏にも少しだけ話を聞けたのだけど「(ドローン市場において)日本企業にも勝てるチャンスはある」というのが、千葉氏と西脇氏双方に共通する見解のようだ。

「日本では移動手段として自動車が定着していて、自動車メーカーだけでなく部品やタイヤに至るところまで技術力があり、世界でもトップクラスのシェアを築いてきた。だからこそ空でもできないわけがないはず。今後ドローンが機体登録制になれば日本の優れた車検制度の仕組みは生きるだろうし、同じように発展している自動車教習所の仕組みも活用できる。あとは『ドローンでイノベーションを起こして、世界を取っていくんだ』という気持ちだけ」(西脇氏)

Drone Fundではこれまでも千葉道場ドローン部としてスタートアップ経営手法を取り入れるための合宿を実施。特許共同出願を専門としたDrone IP Labやリバネスとの連携も通じて投資先のサポートを行ってきたが、今後もこのスタンスは崩さず「日本ドローン株式会社」のようにひとつのチームとして投資先を支援していきたいという。

「ドローン産業における『日本の台風の目』を目指していく。この業界に関わるありとあらゆる大企業とスタートアップが集結するような場所を通じて、国内のドローン関連企業が世界の第一線に立ち、ドローン業界をリードする未来を作っていきたい」(千葉氏)

最後に今回Drone Fundが発表したドローン前提社会やエアモビリティ社会の近未来予想図に関するイラストをいくつか紹介したい。千葉氏によると実現される年度についても実現可能性を踏まえて作成しているとのこと。今後ドローンがどのように身の回りで普及していくのか、これを見ながら想像してみるのもよさそうだ。

  1. VRと組み合わせたドローン観光(2020年)
  2. プロジェクターとなる室内型のドローン。スマートスピーカーと連携(2021年)
  3. ナンバープレートを付けて公道を走るホバーバイク(2022年)
  4. 消費者向けのドローンサービス。子供見守り、忘れ物配達、犬の散歩、自動追尾の日傘(2024年)
  5. 幼稚園送迎サービス(2025年)
  6. 墨田区のビル屋上で離発着するドローンタクシー(2025年)

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TechCrunch Japan

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