オレゴン州ポートランドからカリフォルニア州マーセドまで車で行くなら、自分の位置を知るためにはGPSを使うだろう。しかし、月を走っていて嵐の大洋から静かの海まで行くときは?実はやっぱりGPSが使える。ただしNASAのこの研究が成功すればの話だ。
宇宙で自分のいる位置を正確に知ることは、他の天体を利用しても簡単ではない。幸い、星の位置は固定されているので、星やその他の目印を使って三角測量すれば、宇宙船は自分の位置をかなり正確に割り出すことができる。
しかし、それは結構手間のかかるな作業だ!地球では、かなり前から使うのをやめて、今は数メートル精度で位置を教えてくれるGPSに(おそらく過剰に)頼っている。
独自の恒星(対地同期軌道衛星)を作り、決められた信号を定常的に発信させることによって、われわれの端末はこれらの信号を受信して直ちに自分の位置を決定できる。
月でもGPSが使えれば便利なことは間違いないが、40万キロという距離は、超精密なタイミングで信号を測定するシステムにとっては、大きな違いを生む。それでも、理論的にはGPS信号を月面で測定するのを妨げるものはない。実際すでにNASAは、数年前のMMSミッションでその約半分の距離でテストしている。
「NASAは高高度GPS技術を何年も前から研究している」とMMSのシステムアーキテクトであるLuke Winternitz氏(ルーク・ウィンターニッツ)がNASAのニュースリリースで言った。「月のGPSはネクスト・フロンティアだ」。
宇宙飛行士は自分の携帯電話を持っていってももちろん使えない。われわれが使っている端末は、自分たちの上空で一定の距離以内にあることがわかっている衛星から信号を受信して計算している。軌道から信号が届くまでの時間は1秒の何分の一かだが、月の近くでは1.5秒ほどかかる。大したことではないと思うかもしれないが、GPSの受信・処理システムの作り方に根本的な影響を与える。
NASAゴダード宇宙飛行センターの研究チームがやっているのがまさにそれだ。特殊な高利得アンテナや超精密時計を使い、従来の宇宙GPSシステムである NavCubeや、一般の携帯電話用GPSシステムに改善を加えることで新しいナビゲーション・コンピューターを作ろうとしている。
目的は、NASAの地上と衛星測定システムとを結ぶネットワークの代わりにGPSを使うことだ。従来の方法は宇宙船とデータを交換しなてくはならないため、貴重な通信帯域と電力を消費していた。そうしたシステムの負荷を軽減することで、GPS対応衛星の通信能力を科学実験やその他の優先度の高いデータ通信に割り当てることができる。
チームは年末までに月面探査用のNavCubeハードウェアを完成し、月へのフライトを見つけてできるだけ早くテストしたがっている。幸いなことに、アルテミス計画が注目を浴びていることから、候補探しに困ることはなさそうだ。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook )