有力VCと17人の起業家が千葉で「合同合宿」、Incubate Campはアクセラレータから脱皮

2010年から始まった「Incubate Camp」は、日本のシードアクセラレーターの中でも草分け的存在の1つだ。もともとはプログラム名が示すとおり、独立系VCのインキュベートファンドが300万円の資金提供を主眼に置いたシード投資プログラムだった。過去6回の開催で合計500名規模の応募者から100名超を選出して70社のスタートアップを創出し、27社への投資を実行しているという。

今回で7回目を迎えたこのプログラムは性格を変えつつある。日本の有力VCと若手起業家が一同に会して、シード・アーリーの起業家へのメンタリングや資金提供を検討する1泊2日の「合同合宿」となっている。参加VCの顔ぶれを見ると、インキュベイトファンドのほかに、Globis Capital Partners、Infinity Venture Partners、ITV、WiL、Anri、サイバーエージェント・ベンチャーズ、グリーベンチャーズ、アーキタイプ、B Dash Ventures、ベンチャーユナイテッド、ニッセイ・キャピタルといったVCから17人のパートナーや投資担当者らが参加していたほか、LINE、コロプラ、DeNA、mixiから経営陣らが参加するなど、日本のネット系のスタートアップ界で有力な投資プレイヤーがそろった印象もある。参加していたあるキャピタリストは、「日本でスタートアップの投資をしているのは、だいたいここにいる人ぐらいの数しかいないんですよ」と、まだ比較的サイズの小さな日本のスタートアップエコシステムについてやや自嘲的に苦笑いしていた。

1日目となった金曜日の11月24日には起業家らに対して、ベンチャーキャピタリストが付いてメンタリングを行い、ビジネスモデルや事業計画、マーケティングメッセージのブラッシュアップを実施。2日目の土曜日の午後にはスタートアップ企業17社が一斉にリファインしたピッチ大会を行った。

会場は、企業などが研修に使う千葉のオークラアカデミアパークホテル。審査員の1人にチラッと審査シートを見せてもらったのだけど、ピッチによる評価を書き込む欄のほかに、投資を希望するかどうかの欄、すでに額面が記入済みのバリュエーションの欄があるなど、投資検討も前提にした面もあるプログラムとなっている。デモの発表形式も、起業家がプレゼンした後に、横に立ったメンター役のVCが補足説明や事業計画の妥当性について起業家に代わって回答するという姿が繰り返し見られた。各担当VCは必ずしも当該チームに対して投資検討をしているわけではないというが、1日かけてプレゼンや事業計画の改善したこともあってか、心情的には思い切り応援モードだったようだ。「儲かると分かれば大手ネット企業が内製してくるだろうから、やるなら速くやったほうがいい。価格競争が起こる前にユーザーを囲い込めばいい。そこまで走り切るためにも、(投資資金をここにいる皆さんに)ぶっこんでいただいて……」と、居並ぶ投資家たちに共同投資を半ばジョーク、半ば本気のような調子で呼びかけて笑いが生まれるような場面もあった。

デモ直前に主催者であるインキュベイトファンドのジェネラル・パートナー、赤浦徹氏は、「半分ぐらいのチームでタームシート(投資契約の条件を項目別にまとめたもの)が出るのではないか。投資は(複数VCの)相乗りがいい」と話していたが、終わってみての総評では、DeNAで投資を担当している戦略投資推進室室長の原田明典氏が「17社のうち投資したい会社が14社、バイアウトしたいのが4社」と参加スタートアップ各社の事業性を高く評価。懇親会の場で話を聞いたら、14社という数字は投資を検討する対話を始めたい会社の数だが、実際の投資に至るだろうというのは「7社程度になるのでは」と話していた。

ピッチ後の質疑応答では、起業家と投資家、それに大手ネット企業の経営者らが加わり、事業アイデアについて活発に、そして笑いがあふれるほど楽しそうに議論を交わす場面が繰り広げられたが、こうした「呉越同舟的なピッチイベント」は、日本のスタートアップ界隈の現状を良く表しているように思う。まだシリコンバレーほどプレイヤー数が多くなく、VCや経営者らは、みな顔なじみ。キャンプ終了後の総括でも、インキュベイトファンド代表パートナーの和田圭佑氏が「VC業界みんなでスタートアップを応援していく場にしたい。タームシートの調整なども引き続きやっていく」とVC間の共同投資について積極的な態度を表明していた。

さて、そんな和気あいあいとしたキャンプのピッチコンテストだが、17社がプレゼンを行った中で1位に輝いたのは……、現在ステルスで急成長中のモバイル向け、特定ユーザー層向けのメディア・コミュニケーションサービスだった。これはステルスモードなので、これ以上は書けない。

2位に輝いたのは、最速で英単語が覚えられるアプリ「mikan」を開発する宇佐美峻さん。mikanはTechCrunch Japanでも7月末に詳しく記事で紹介しているが、ローンチ間近のアプリだいて、先ほどリリースされたばかりのアプリだ。

3位の座を勝ち取ったのは、スマフォによる店舗予約が簡単にできる「スマート予約」を提供するBeer and Techの森田憲久さん。森田さんのメンター役となった独立系VC、Anriの佐俣アンリ氏は、「今日このプレゼンをやってバレるのが嫌だった」というほど、この事業アイデアに可能性を感じているという。何かというと、「飲食業界のアドネットワーク」を作るというスマート予約の構想だ。一見、ユーザー向けの便利アプリを8月にリリースしたスタートアップという風に見えるが、これはあくまで第1ステップにすぎないのだという。

森田さんは以前、ネットの広告代理店にいて広告を売りまくった経験があるという。オンラインの広告の世界は、かつてメディアが広告主に「手売り」をするところから始まった。やがて、メディアレップと呼ばれる代理店が各種媒体のページビュー在庫を抱えて広告クライアントと結び付けるビジネスとなり、今はDSP、SSP、RTBなどアドテクの興隆で、ここの自動化が進んでいる。

店舗予約をする飲食店利用者と飲食店の関係は、このオンライン広告ビジネスに構造が似ているのではないかと気付いたのが、森田さんがスマート予約というサービスを8月に開始した理由なのだという。

スマート予約のターゲットユーザー層は30代男性。業務時間中に今日とか明日という差し迫った会食を設定するというのは良くあると思うが、電話したら予約がイッパイとか、業務時間中に食べログやぐるなびのページを何店舗分も見るのは気分的にはばかられるというようなことがある。スマート予約では、日付や人数、利用目的などを入力すると、10分以内に空席かつ人気のお店を3店舗紹介してくれる。利用者はこの3つから選択するだけで予約できる。実際の予約は在宅ワーカーが店舗へ電話して代理しているという仕組みだ。競合となり得る食べログや、リクルートの「スマート幹事くん」などはどれも、送客ビジネスのモデル。予約成立の場合に1件で300円、もしくは売上の8%を店舗情報掲載サイト側に支払うのが相場だそうだ。ここまで聞くと、食べログや店舗開拓の営業力で勝るリクルートに対して勝ち目がないように見えるが、スマート予約が強い理由はいくつかあると森田さんは言う。

幹事ニーズではなく、2、3人で行くような当日・前日の予約に特化していてターゲット層が違うこと。限られた数の店舗を集中的に紹介するというモデルは、人気店舗以外の店舗にとっては送客してくれないサービスなのでお金を払う理由がない。つまり、リクルートがこれを真似るとホットペッパーの300億円の売上が吹っ飛ぶので彼らにはやれないはず、というのだ。

もう1つ、スマート予約が面白いのは、最初はテクノロジーが関係ないことだとVCの佐俣氏は言う。AirbnbやUberなどと同じで、最初は人間によるオペレーションでスケールさせて、後に自動化する。これはオンライン広告ビジネスで起こったことと相似形。しかもスマート予約と契約する在宅ワーカーが電話をして予約するので、必ず「スマート予約」と名乗ることができ、店舗側に送客が実際に起こっていることが分かる仕組みとなっていて、これは店舗開拓の営業では効果的だろうということだ。現在、スマート予約は東京・恵比寿の1エリアだけでリリースしているという。

上位入賞以外のスタートアップ・起業家と投資家のやり取りも紹介

上記3社以外のスタートアップについても、以下、発表順に簡単にまとめておこう。中には、起業したばかりで事業計画やプロトタイプ以前という発表もあったが、どの起業家も内発的動機から来る、世の中を「面白くしたい」「良くしたい」というパッションを感じさせるものではあった。ちなみに、ぼくが個人的に気になったのは、ターゲットユーザーになり得るという意味で、Cozre、マンションマーケット、airClosetあたり。「世の中のほうが間違っている!」という憤りにも近い感覚で共感するのは、KAUMOとLife Event Navi。完成度が高まればTechCrunchで個別に取り上げたいなと思ったのはmeleapだった。

Masquarade(Treadecraft、松村有祐氏)
従来のTinderのような出会いアプリは「高顔面偏差値」のリア充向けで、非モテ顔同士は互いに選ばれることがほとんどなくショックな思いをするばかり。この問題を解決するために、顔の一部を隠した写真を登録することをルールとしたマッチングサービス。起業した松村氏は「人工知能研究者あがりで、Uberからのスカウトを蹴っての挑戦」だそうだ。

KAUMO(カウモ、太田和光氏)
ECの口コミサイトがPCからモバイルへの移行で勝者不在となっているタイミングで、スマフォ向けに新世代の「口コミキュレーション」として6月にローンチ。10月で70万UUとトラクションが出ている。これまで価格コムに代表される口コミECサイトは、スペック比較を基本とし「マニアの自己満足的レビューが良いとされる文化」が問題だったと太田氏。リアル店舗では、店員に「運動会で子どもを撮りたい」と利用シーンで相談するほうが一般的だが、現在オンライン口コミサイトはいきなりスペック情報が出てきて、そうなっていない。そこで自社コンテンツとCGMで、商品動画や画像で商品のハウツー記事を作っていくのだという。

Sket(スマートキャンプ、古橋智史氏)
Sketは2014年7月ローンチのクラウド資料作成支援サービス。海外ではVisual.lyという類似サービスがある。IRの資料作成で実績があるという。利用料は、どの程度聞き取りに基いて資料を作るかによって1枚あたり1000円から5000円。この3カ月で40社の利用があり、大手企業も増えてきてニーズに手応えを感じているという。古橋氏はマッキンゼーのような戦略コンサルファームが資料作成の専門部隊を抱えていて10億円ほど費用を使っていることに触れ、市場性をアピール。もともとは、こうした資料作成サービスを若手ビジネスマンが使えないという課題を解決するつもりだったが、今後は「いくら予算をかけてもいいからサービスを使いたい」というハイエンド層にフォーカスし、IR資料作成などをコンサルティングも含めてやっていくという。IRは、資料の分かりやすさが株価に影響するような話でもあるので、完成資料を納品して終わりというサービスではなく、その資料によって効果がどの程度あったかという効果測定も含めてサービス化していくのだそうだ。

空飛ぶ処方箋(ファーサス、山口洋介氏)
元薬剤師の山口氏が取り組み、現在プロダクトがアプリストアに申請中というステータスの「空飛ぶ処方箋」は、患者が処方箋をスマフォで撮影することで、好きな薬局で薬が受け取れるサービスだ。待ち時間の短縮と、好きな薬局で受け取れる利便性を患者側に提供する。一方、「大手が店舗数4%なのに売上ベース8%のシェア」と経営に苦しむ中小薬局にとっては、リピーター客が得られるサービスになるという。ターゲットユーザーは、スマフォを持つ都市部の20〜50代で、年間1億枚の処方箋を想定、都市部の薬局2万7000軒への普及を目指すという。月額3000円、送信料金は処方箋1枚で50円。4年で導入店舗5000店、17億円程度の売上を見込むというのが事業計画だそうだ。ちなみに日本の全処方箋は約8億枚あるそうだが、まず300店舗程度が取れれば売上が1000万円となってビジネスとして立ち上がるのでは、とメンター役を勤めたベンチャーユナイテッドの丸山聡氏は概算していた。

Synapseサロン(モバキッズ、田村健太郎氏)
SynapseはFacebookの非公開グループを使った月額課金型コミュニティーサービスで、田村氏は「募集開始したらすぐに埋まる。これはサロン革命」だと鼻息が荒い。著名人のコンテンツ力をマネタイズするプラットフォームとしては、アメブロやモバイルのファンサイト、メルマガなどがあるが、いまアツいのはサロンだという。実際、売上の例としてホリエモンが1万800円の課金で利用者600人、月商650万円となっているほか100万円クラスのサロンも続々登場しているという。「時代がおいついてきた」といって次々と売上の数字を披露すると、苦戦する著名人の多いメルマガと大きく異る単価の高いビジネスであることに会場がどよめいた。サロンのポイントは実名、リアルタイム、安心というところだそう。Facebook依存は事業リスクだが、来春には専用アプリをリリース予定という。現在35サロンで月商1400万円。4年後には売上100億円、営業利益10億円を目指すという。

Cozre(トウキョウアイト、松本大希氏)
Cozreは、子連れの外出に必要な情報を提供するWebメディアで、キュレーションマガジンとCGM機能を持つ。8月時点で40万UU、80万PV。親子の時間を楽しくするライフスタイルメディアを目指しているそうで、遊ぶ・食べるをフックにして、おけいこ、ファション、雑貨、子育て課題、美容健康料理とジャンルを増やし、回遊率を高める。5年後に50億PVのメディアを目指すという。メンター役を勤めたGlobis Capital Partnersの高宮慎一氏は「子連れファミリーは、均質性の高い1700万人がいる市場で、かつシックスポケットと言われる」とマネタイズ視点から事業の可能性を語っていた。シックスポケットというのは両親と祖父母の合計6つの財布のこと。カテゴリをヨコ展開してスケールさせるというのは、高宮氏が投資していて先日KDDIに売却したnanapiでの成功体験から出てきた方法論だそうだ。

Maverick(ウィンクル、武地実氏)
「Googleが考えているスマートハウスはダサい!」と終始ハイテンションで会場から笑いを取りまくっていたウィンクルは、IoT系のスタートアップに分類されるのだと思う。ブランド名のmaverickは一匹狼のことだそうで、Googleなどテック系企業が提示するやたらリア充ぽいファミリーなスマートハウスより、「非リア充の独身貴族たち。自宅警備員のためのスマートハウス」がコンセプトだそうだ。maverickシリーズの1つ目のプロダクトはTwitterのタイムラインを音声化する小型キューブデバイスというネタっぽいプロトタイプ。声優の声でタイムラインが……という説明はぼくにはネタにしか思えなかったが、軽快なトークで会場からダントツで笑いを誘っていた。「これ、そもそもハードウェアである必要ってあったんですかね?」という審査員のマジレスで会場がどっと湧くのが見どころだったのだと思う。会場の審査員や投資家は苦笑いするものの、NestやGoProのようなプロダクトを日本からどうやって出していくかという議論や、スマートハウスが汎用より特定ターゲット層で立ち上がるかもしれない、という愛のある前向きな議論が続いていた。少しだけだけど。

LaFabrics(ライフスタイルデザイン、森雄一郎氏)
LaFabricsはファッションECプラットフォーム。色、素材、サイズなどがカスタマイズでき、1億通りの服が選べるという。カスタマイズ性が高いとはいえ、森氏は「サイズを選ぶのは昔の話」だといい、zimpleという機能で30秒でサイズ指定ができると話す。既成品のカスタマイズや、お気に入りの服を事務局に送って、その通りの服を仕上げてもらうようなサービスもやっているのだという。競合にオリジナルスティッチがあるが、カスタマイズの自由度ではLaFabricsのほうが勝るのだとか。2月のローンチ以来、累計182着、420万円の売上。ビジネスマンは1年間にシャツを3.5着、スーツを1.5〜2着ほど購入していて、リピート率も高いため、初期ユーザー獲得コストが1人当たり4000円程度であっても十分にビジネスとして立ち上がると計算しているという。ファッションアイテムをオススメするキュレーターのプリセットプランの提要やファンション系メディアとのタイアップも予定しているそう。利便性を提供する「ツール」であるよりも、「競合はユナイテッド・アローズ」というように、ファッションに対する意識が少し高めの層がターゲットという。

マンションマーケット(マンションマーケット、吉田紘祐氏)
マンションマーケットは、マンションに特化した個人間取引サービス。起業した吉田氏は、もともとリクルートのSuumoで300社を担当する法人営業をやっていたこともある不動産のプロ。「不動産市場はまだまだレガシー、変革が起きていない」という意識から、現在業者を通した取引費用が300万円程度のところを96万円に下げることを目指すという。不動産会社が介在しなければ、マンション売買のプロセスはぐっとシンプルになり、たとえば「重要事項説明」というプロセスを省くことができる。「実は誰でもできる。業者が個人間トラブルを煽ってると思う。実際にはトラブルは、そんなにない」と背景を語る。特にマンションは一軒家と違って管理組合や管理会社があるため査定もシンプルなのだという。ではなぜ、これまでマンション売買のC2Cマーケットが立ち上がっていないのか? 1つは不動産に特化しないと取引成立がスムーズにいかず、汎用C2Cサービスに不動産が不向きなこと。ヤフオクには結構不動産情報が載っているが、吉田さんは「現地見学や登記手続きなど不動産業務をサービスに落とし込まないとC2Cは立ち上がらないと思っている」という。サービス開始は2015年2月。ユーザー獲得のためのマーケティングツールとなる中古価格査定アプリはローンチ済みで、今後はタワーマンションへのポスティングなどで売主を開拓するのだという。まず首都圏のマンション市場を狙う。

meleap(meleap、福田浩士氏)
スマフォをデバイスにセットすることで、ライフルのような形で使えるARデバイスと、それを活用したゲーム。まずiPhoneで部屋などをぐるっと撮影してゲームの舞台となる世界をシステムに取り込む。続いてプレイヤーは、スマフォ単体、もしくはライフル型のフレームでできたデバイスにスマフォをセットして、ARなFPSゲームを楽しむ。リリースは来年4月を予定。まずは既存のサバイバルゲーム施設と組んで提供する。サバイバルゲーム愛好家は日本に3万人しかいないが、海外ではeスポーツ市場が立ち上がっていることから、「ウェアラブルの一歩手前」とも言えそうな、このジャンルは伸びると見ているという。

airCloset(ノイエジーク、天沼聰氏)
レンタルで多様な服を楽しむ、27歳から35歳の働く女性をターゲットとしたサブスクリプション型コマース。ファッションの好みやサイズを入力すると、数日で3着ずつ専用ボックスで届く。月額6800円。クリーニングや送料は無料。1着1万円のものを3着とすると、年間108着で約8万円。これはターゲット利用者の平均である年間12着で12万円よりも安く、アイテム点数も多くなるといい、「服との出会いを爆発的に増やしていきたい」と天沼氏は言う。1着あたり4回の貸出でコストがペイするモデルだそうだ。当初はコンサバ系ファッションの女性に向けたアイテムを中心に普段着向けサービスを提供するが、1回レンタルのみの「パーティードレス」というサービスも提供予定だそう。服を提供するブランド側が収益悪化を懸念するのではないかとの質問に対しては、「ブランド側の課題として新作のプロモーション先がないという問題を抱えている」と、むしろブランド側のメリットを指摘。「昨今勢いを増すファーストファッションとの戦い方を、ブランド各社に提案したい」と天沼氏は語っている。

工場DB(Emotional Brains、横田洋一氏)
もともと2Dイラストから3次元フィギュアを制作する共同購入サイト「Okuyuki」を1年ほど前にローンチしているが、Incubate Campの場ではピボットを宣言。「工場DBを作る」とした。現在製造業の世界では、IoTスタートアップの勃興やメーカーズムーブメントもあって、金型を起こしてプロトタイピングをするというかつての製造工程が古くなっている。一方、小ロットで作れる仕組みや工場があるものの、取り扱い品目・サービスなどのデータベースや情報サイトが存在していない。その工場が何ができるか、という「工場の食べログ」を目指すのだという。横田氏は富士通やHPでITコンサルタントをしていたが、「いつか絶対に起業する」という想いから50代半ばで実行して挑戦中なのだそうだ。

Life Event Navi(前田一人氏)
お金特化型キュレーションメディアと、お金の偏差値チェックサービスを提供していくという。まだ法人登記もこれからで、走り出したか出さないかという段階の起業家だが、次のようなことを狙っているそうだ。住友信託銀行で個人営業に従事して資産運用やローン、遺言業務などを担当し、「個人の金融リテラシーを上げたい」という思いから起業。富裕層は資産アドバイザーが知恵を入れているのでリテラシーが高いものの、日本は先進国の中でも「中間層の金融リテラシーが圧倒的に低い」という。たとえば日本とアメリカでは人口が3倍も違うのに、個人が支払う保険料はほぼ同額なのだという。だから駄目だというニュアンスで言っているのではなく、払い過ぎの保険料や、期限の長すぎる住宅ローンに苦しめられる個人を見てきて、そして「手数料が高い金融商品を80歳のおばあちゃんとかに売っていました」という売る側でもあった前田氏が抱く問題意識だったよう。日本で金融や保険、不動産、住設の市場は広告費だけでも5900億円もあるが、多くは売り手目線。本質的には「ユーザー側が賢くなるしかない」が、日本ではお金のことを考えるキッカケがないのが問題で、「お金のことを勉強しないまま家を買うという状況になっている」という。「中間層の金融リテラシーが上がって、はじめて個人金融の市場ができてくるのではないか。そのとき家計簿とアカウントアグリーゲーションを超えたFinTech系のサービスが出てくると思っている」と語る。

gamba(gamba、森田昌宏氏)
gambaは、TechCrunch Japanでも何度か取り上げたことのある日報共有サービス。現在4200社が導入済みで、日報共有によって、社員の一体感があがり、何気ない報告から大口案件獲得などの事例が出ているという。190社が有料契約をしていて、このうち85%が1週間に1度以上の日報やいいねが発生していてアクティブという。メンター役を務めたサイバーエージェント・ベンチャーズ代表取締役社長の田島聡一氏は、これまでに見てきたB2B事業の経験から、ソリューションニーズを感じているヒトと決裁者が一致していることが大事だということや、定性的なウリ文句よりも売上向上やコスト削減という定量的なメッセージのほうが響くだろうというアドバイスが出されていた。


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。