このところ、大型の資金調達リリースが増えていると感じる方も多いのではないだろうか。ジャパンベンチャーリサーチ(JVR)が3日に発表したレポートによると、2015年上半期の資金調達総額が624億円に達した。これは資金調達総額が6年ぶりに1000億円を超えた昨年下半期と同額だった。
調達総額は2014年下半期と並んだが、調達企業数は23%減で326社となり、2014年上半期以降は大幅な減少傾向にある。つまり資金調達の大型化が顕著になったといえる。今回のレポートには含まれいないが、2014のレポートにあるように、引き続きシード・アーリーステージでの投資からシリーズA、シリーズBでの投資に成功するスタートアップが増加しているのが要因だろうか。
投資家別の比率を見ると、事業法人が全調達金額の624億円のうち439.7億円を占めている。このことからも、事業シナジーのある企業へのシリーズA、シリーズBでの投資が増えていること、また最近言われ続けているが、スタートアップのバリエーションの高騰も関係していると考えられる。
1社あたりの調達額(中央値)はこのように、2014年下半期からほぼ2倍ともいえる1億3000万円となり、過去最高額となった。投資領域としては近年好調のITに加え、ヘルスケア、バイオ、医療が多くを占めており、これらは多額の投資が必要なドメインといえる。投資金額の割合としては、全体の投資額のうち、IT領域が28.6%、ヘルスケア、バイオ、医療領域が19.8%を占めた。
また注目すべき点は、会社法改正以前の使い勝手の悪さから日本では優先株はほとんど使われないと言われてきたが、ついに76.9%に達したことだ(この比率は、ジャフコ、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、日本ベンチャーキャピタル、DBJキャピタル、グローバル・ブレイン、産業革新機構、グロービス・キャピタル・パートナーズ、東京大学エッジキャピタル、サンブリッジ グローバルベンチャーズ、大和企業投資の10社を調査対象としたものだ)。
優先株とは、普通株式に優先的な条件が付いた種類株式のこと。普通株式での投資は、投資家のリスクが経営者よりも大きかったが、優先株の条件によって緩和される。それゆえ投資家はよりリスクをとって、高いバリエーションで、多額の投資を行うというリスクをとりやすくなる。つまり大型の資金調達は、優先株の使用と表裏一体の関係なので、これらによってシリコンバレーではほぼ全てが優先株というように、日本でもさらに普及する可能性はあるだろう。