本当の姿を表しだしたWorkplace by Facebook

A potted plant sits next to a Workplace logo during the global launch event of "Workplace" at the Facebook Inc. offices in London, U.K., on Monday, Oct. 10, 2016. Workplace is meant to help employees collaborate with one another on products, listen to their bosses speak on Facebook Live and post updates on their work in the News Feed. Photographer: Jason Alden/Bloomberg via Getty Images

Workplace by Facebook正式リリースから2ヶ月ほど経った今、Facebookがエンタープライズ向けのソーシャルプロダクトに関して、大きな野望を抱いているのが明らかになった。今週ロンドンで行われたTechCrunch DisruptでFacebookは、Workplaceにエンタープライズ向けアプリケーションを統合できるような新プラットフォームを発表し、現在エンタープライズ向けソーシャルプロダクトの先頭を走っているSlackに勝負を仕掛けた。

しかしFacebookは、Slackのように知的労働者が情報共有するためのツールとは違った形で、Workplaceを売り出そうとしている。Facebookでプラットフォームパートナーシップ担当ヴァイスプレジデントを務めるSean Ryanによれば、同社はWorkplaceを倉庫からフロントオフィスを含め組織全体で使われるようなプロダクトにしたいと考えているようだ。「私たちはWorksplaceが会社全体をつなげ合わせることのできるプロダクトだと考えています。一方、競合とされるプロダクトは、チーム同士をつなぎ合わせることに重きが置かれています」と彼は語り、Slackや最近Microsoftが発表したTeamsアプリを一蹴した。

ちょうどコンシューマー向けプロダクトであるFacebookの使命が世界中をつなげることであるように、各企業で働く従業員全てをつなげることがWorkdplaceの使命だとRyanは考えているのだ。そしてターゲットの中には、これまでソーシャルツールを使ったことがない人たちも多く含まれている。「私たちはこれまで特別なコミュニケーションツールを利用したことがない人たちに向けたツールの開発も進めています。私たちと同じ業界にいる企業のほとんどは、現状その部分には力を入れていません」と彼は話す。これはソーシャルネットワーク企業であるからこその考え方だとRyanは見ている。システムを使う人が増えるほど、そのシステムの価値が向上するというのはまさにソーシャルネットワークプロダクトの考え方だ。そして、特定の人だけが使うシステムでは、利用者の広がりに制限がかかってしまう。

全ての人がいつでも使えるサービス

Facebookのやり方自体は間違いではないが、これまでにWorkplaceのようなプロダクトを開発していた企業も既に同じアプローチを試みており、彼らが成功することはなかった、とDigital Clarity Groupでアナリストを務め、早くからエンタープライズ向けソーシャルプロダクトの動向を追っているAlan Pelz-Sharpeは話す。「Facebookが会社全体のソーシャルツールになろうとしているのは間違いないのですが、JiveやYammerを含めた数々の企業も同じことをしようとしていました」

私たちはWorksplaceが会社全体をつなげ合わせることのできるプロダクトだと考えています。一方、競合とされるプロダクトは、チーム同士をつなぎ合わせることに重きが置かれています。

— Sean Ryan, Facebook at Work.

Pelz-Sharpeは、Facebookが強固なブランド力やおなじみのインターフェースで有利な立場にあることを認めている一方で、それだけでは同じアプローチをとっていた先代の企業と同じ問題に直面する可能性が高いと考えている。「通常の場合、管理や運営、セキュリティ面で問題が発生することが多いです。アプリケーションの利用者が組織内で急激に増えるということは、Facebookにとってはプラスですが、組織にとってはさまざまな面での混乱や煩雑さにつながる可能性があります」

逆にポジティブな側面として、利用者は役職を問わず誰にでもコンタクトできるため、エンタープライズ向けのソーシャルツールが組織のフラット化につながるということはよく知られている。ソーシャルツールがマネジメントというレイヤーを取り払い、利用者全員に自分の考えを共有する力を与え、従業員はより自分たちの会社に関与していると感じることができるのだ。実際に生鮮食料品店の運営企業で行われたテストでも、Workplaceを用いることで従業員の満足度が向上したとRyanは話す。

アプリケーションの統合が鍵

今週発表されたアプリケーション統合が、現状のWorkplaceを次のレベルへ押し上げることになる。企業に務める人はコニュニケーションを取りたいと考えている一方で、複数のアプリケーションを切り替えるのを嫌う。そこでFacebookは、APIという統合のポイントをWokrplaceに組み込むことで、エンタープライズ向けのソーシャルプロダクトをツールへと変換する方法を提供しようとしているのだ。

プライベートでFacebookを使っている多くの人たちのように、会社にいる人が勤務時間の多くをWorkplaceに費やすようになれば、ツールが統合されることでWorkplace自体の利便性が高まることになる。

現在オンラインコミュニティプラットフォームの7Summitsでチーフストラテジーオフィサーを務め、エンタープライズ向けソーシャルプロダクトに造詣の深いDion Hinchcliffeは、Facebookが成功する上でアプリケーションの統合が大きな鍵を握っているかもしれないと話す。「シンプルで全てが一か所に集約していて、他の業務を行う際に別のアプリケーションを開く必要がないようなコラボレーションツールであれば、多くのユーザーを獲得することができます。ここでの価値とは、たったひとつのツール上で、仕事の流れを継続しつつ一元的により多くの仕事をより簡単にこなせるということです」と彼は説明する。

確かにSlackはこの理論に基づいて成功を収めてきたが、Pelz-Sharpeはさらに悪魔は細部に宿ると話す。「一般に普及しているアプリケーションを統合することで、ツールのユーザー数を増やすことはできますが、本当に大事なのはどのくらい深いところまでそのアプリケーションが統合されているのかということです。具体的には、(ポータルのように)ただ統合されているアプリケーションがツール上に表示され、ユーザーはそれをクリックすることができるだけなのか、それとも統合されているアプリケーションからツールにデータやプロセスを引っ張ってきて、情報を一元管理できるようになっているのかという点を指しています」とPelz-Sharpeは話す。

RyanがWorkplaceのゴールは会社全体をつなげることだと明言する一方で、Pelz-Sharpeは、Facebookがそのゴールを達成する中で、今後も深刻な課題に直面することになると話す。「時間を浪費するだけのコンシューマー向けソーシャルツールというFacebookのイメージ(Workplaceは若者向けのツールではないため熟年層が持つイメージの影響が大きい)が、Workplace by Facebookへの抵抗につながることが考えられますが、それ以上に、Facebookがこれまでとってきた、成長第一でその結果は後から考えるというアプローチに多くの人が抵抗を感じるようになると考えています」

Ryanはそんな意見にもひるまずに「Workplaceは全ての企業人のためのツールです。これこそ私たちがこのプロダクトに関してワクワクしているポイントなんです。Workplaceは世界中の企業人をつなげるようになるでしょう」と話す。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

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TechCrunch Japan

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