バンコクを拠点とするスタートアップのaCommerceが1000万ドルを調達した。同社は東南アジア地域のEコマース企業の支援をする企業だ。今年後半にはシリーズBにて更なる資金調達も予定されている。
タイ、インドネシア、フィリピンで事業を展開する同社によれば、今回の資金調達をリードしたのはインドネシアの通信企業Telkom Indonesiaを親会社にもつMDI Venturesだ。他にも、オーストラリアを拠点とするファンドのBlue Skyや既存投資家のDKSHも参加している。スイスに本社を置く商社のDKSHは昨年12月、aCommerceに戦略的投資を行った。投資金額は非公開ではあるものの、TechCrunchでは2000万ドルから2500万ドル規模の投資だったと考えている。
今年の始めにはAlibabaがLazadaに10億ドル出資するなど、東南アジアのEコマースには大きな可能性が秘められている。Eコマース企業や小売店に対する支援事業を行うaCommerceは、在庫の保管や管理、流通支援、デジタルマーケティングなど様々なサービスを提供している。同社は2013年に創立され、2014年6月のシリーズAで調達した1070万ドルや、2015年5月のブリッジ・ラウンドでの500万ドル、同年12月のDKSHからの出資金などを合わせ、これまでに約5000万ドルの資金調達を完了している。
昨年5月のブリッジ・ラウンドで調達した資金と同様、今回調達した資金は今年後半に予定されている5000万ドル規模のシリーズBに向けた「つなぎの」成長の起爆剤となる。言い換えれば、aCommerceの銀行口座にはまだ資金は残っているものの、規模をさらに拡大して次のラウンドをより有利に進めるためにその資金を利用したいという思惑があるのだ。具体的には、マレーシアとベトナム、そしてシンガポールへの事業拡大のための資金だ。
「希薄化を最小限に留めながら、バリュエーションを最大化させたいと考えています」と語るのはaCommerce Group CEOのPaul Srivorakulだ。「(今の時点で)シリーズBでの資金調達を行うのではなく、その前に追加的な出資してもらうよう、投資家と交渉してきました」。
(ところで、すでに5000万ドルの資金を有しながら更にシリーズBを実施するというのは、東南アジア企業としては異例のことだ。Srivorakulは同社の資金調達の努力に値札をつけるつもりはないと話す。「ただ、私たちにとって都合のよい時に資金を調達しているまでです」)
SrivorakulはEnsogoとAdMaxの創業者でもある人物だ。その後、EnsogoはLivingSocialに、AdMaxはオンライン広告のKomliに売却している。彼によれば、今回の資金調達についての話は前回のラウンドを行う以前からあったという。今回の資金調達はすでに予定されていたものだったのだ。しかし、シリーズBでは新たな出資者を募集する意向であり、そのためのピッチを行っていくと話している。
今回新しく出資者となったMDI Venturesとの関係は、同社にとってタイと並ぶ最大の収益源となったインドネシア市場において大きな戦略的価値を持つとSrivorakulは考えている。
「インドネシア市場には巨大な需要があります」と彼は話す。「その一方で、同国の商慣習やEコマースに関連する法律は年々複雑になっています。その点において、MDI Venturesの親会社であるTelkom Indonesiaは国有企業であり、彼らと協働すればインドネシアの商慣習に則ったプロダクトを生み出し、インドネシアで更なる成功を収めることができると考えたのです」。
aCommerceは2014年に撤退したシンガポール市場にも再度挑戦する予定だ。前回のシンガポール進出は時期尚早だったと認めつつも、今のaCommerceには新しい「パートナー」であるDKSHがついていると彼は語る。DKSHがもつコネクションによって新しい顧客を獲得し、それに他市場で獲得した既存顧客からの需要を合わせれば、今回のシンガポール進出が成功する可能性は高いと見ているのだ。
また、新興市場へ事業を拡大する際にはサステイナビリティを第一に考えるようになり、一時的にビジネスや資金調達が上手くいかなかったとしても、しばらく持ちこたえる自信があると彼は語る。
「今回調達した資金があれば、来年には損益分岐点に達することができます」と彼は話す。「今ある3つのマーケットを黒字化させることは可能です。しかし同時に、私たちは新たに3つのマーケットにも進出しなければなりません。今回調達した資金はそのために利用する予定です」。
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