業界に革命を起こすか?ゲーム開発のバックエンドツールキットを提供するPragma

いまや新しいゲームを開発しようと思うと、その多くはソーシャルでマルチプラットホームで拡張性が必要だ。しかし毎年世に出る膨大な量のゲームに対して、それだけ高度な能力のあるゲームデベロッパーの数は極めて少ない。

しかしこれからは、そんなゲームスタジオはPragmaを利用するといいだろう。同社はゲーム企業のためにバックエンドのツールキットを作り、デベロッパーが彼らの最も得意なことに専念できるようにする。そう、ゲームを作ることに。

PragmaのCEOを務めるEden Chen(エデン・チェン)氏に言わせると、アプリケーション開発の世界にはそんな出来合いのツールキットが昔からいろいろあり、アプリケーションが市場に出るまでの時間を数カ月も短縮していた。Pragmaはその考え方の応用だ。ゲーム業界では、デベロッパーが次々と限りなく妙案珍案を出すので、ベータに数年かかることもざらだった。

チェン氏は「ゲームの世界では、マルチプレイヤーが標準になってから開発時間がものすごく長くなった。ベータから立ち上げまで5年とか10年かかることもある」と語る。

同氏と元Riot Gamesの主席エンジニアだったChris Cobb(クリス・コブ)氏が作ったPragmaは、同社によるとBaaS(バックエンド・アズ・ア・サービス)を提供し、アカウントの作成管理やプレヤーのデータ、ロビー、対戦組み合わせ、ソーシャルシステム、テレメトリー、ストアのフルフィルメントなどの部分をゲーム企業に提供する。ある意味でそれは、Fortnite(フォートナイト)を作ったEpicのようなフロントエンドのゲームエンジンを補完する立場だ。

実はEpicもかつて、独自にゲームデベロッパーのためのバックエンドシステムを作る計画を発表したが、チェン氏によるとそれは本来、競合他社ではなく独立の企業が提供すべきサービスだ。

Pragmaの投資家たちも、その意見に賛成だ。同社は一群の品位の高い投資企業と個人投資家から420万ドル(約4億3500万円)を調達した。その投資ラウンドをリードしたのはロサンゼルスのUpfront Venturesで、これにAdvancit Capitalとエンジェル投資家のJarl Mohn(ジャール・モーン)氏(NPRの名誉会長でRiot Gamesの元取締役)、Dan Dinh(ダン・ディン)氏(TSMの創業者)、William Hockey(ウィリアム・ホッケー)氏(Plaidの創業者)らが参加した。

Upfront VenturesのパートナーでPragmaの取締役Kevin Zhang(ケビン・チャン)氏は、声明で「ゲームスタジオは長年、サードパーティ製のゲームエンジンを使ってゲームのフロントエンドを開発してきた。そんな財政的に非力なスタジオが数百万ドルを費やして彼らが独自にバックエンドシステムを作るなんて、とうてい考えられない。この最初から壊れているようなシステムがあまりにも長年続いたのは、再利用性があって特定のプラットホームに依存しないバックエンドを作ることが、きわめて難しいだけでなく、ゲームそのものに比べてプライオリティがあまりにも低かったからだ」と説明する。

ゲーム業界は1390億ドル(約15兆円)の怪物だが、同じ規模のテクノロジー業界に比べて、出来合いのツールによる生産性の向上やスピードアップが遅れていた。今のゲーム業界はFacebookやSnapのようなソーシャルメディアと大型予算の映画プロダクションを合わせたようなものなのに、開発工程を簡素化して製品の寿命とスケールと、ダウンタイムのない機能の複雑さを確保するためのツールを欠いていた。Pragmaによると、とくにダウンタイムによる費用の増大と売上の喪失が大きい。

同社CTOを務めるコブ氏は声明で「オンラインのマルチプレイヤーゲームはますます複雑で制作費の高いものになっている。ゲームスタジオは、魅力的なゲームを作ることがプレッシャーになるだけでなく、ゲームを動かすための独自のサーバー技術の構築が重い課題になっている」と語る。

同社の現在の顧客は1社だが、2020年後半には数社のベータユーザーによる非公開テストを立ち上げる予定だ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

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TechCrunch Japan

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