Facebookは、モバイル戦略においてHTML5に取り組んだのは無意味な遠回りだったと認めたが、クロスプラットホーム化による開発コストの激減に大きな魅力を感じるゲームデベロッパ、たとえばLudeiやGameClosureなどは、まだこのテクノロジへの賭け金を引っ込めない。
彼らが期待しているのは、多様な機種によるAndroidの分裂(多態化)の激化とiOSの新しいフォーマットという今後のコスト増大要素に対して、HTML5のスタンダードの進化、この二者を天秤にかけた場合に、デベロッパにとって後者の価値がどんどん増してくることだ。
サンフランシスコで、デベロッパたちにゲームの開発プラットホームを提供し、自らもゲームを作っているLudeiによれば、同社は今日(米国時間2/22)、iBasketというゲームを単一のコードベースから7つの異なるアプリストアへ一斉にプッシュした。すなわちそのゲームのHTML5バージョンを、一つのコードベースから、iOS App Store、Google Play、Amazon Appstore、Nook store、Facebook、Firefox、Chromeの各ストアへと送り込んだのだ。
“HTML5がわれわれを裏切った、とか、われわれがHTML5で失敗した、という感触がある”、LudeiのCEO Eneko Knorrはこう語る。“否定的な感触がとても大きい”。
Ludeiの実動プロジェクトは今およそ1500あるが、同社は一つのアプリで概念実証をやろうとしている。そのために選んだのが、同社でもっとも成功したゲームiBasketだ。これは1500万回ダウンロードされたが、今それをHTML5ベースに改作して7つの異なるストアとプラットホームで同時に発売したのだ。
“今の現実はここまで来ている、とみんなが納得したとき、うちはよそのデベロッパたちが自分たちのゲームの改作を3〜5か月でフィニッシュするのを、指をくわえて見ているわけにはいかない”、と彼は言う。“だから、やるなら今からやるのだ”。
同社と競合するGameClosureも、HTML5向けに先週SDKを一般公開し、1200万ドル以上のベンチャー資金を調達した。このほか、SpaceportやMarmaladeなども、いくつかのクロスプラットホームツールを提供している。
iBasketのフレームレートは60fpsで、さらにその中には、支払決済、広告、マルチプレーヤーモードのようなソーシャル機能、などの層もある。同社にはさらに、ゲームのパフォーマンスを上げるための拡張API、ゲームエンジンCAAT、プッシュ通知のための拡張、アップデートとアクセス分析を管理するクラウドサービス、などがある。
“必要があれば、元のパッケージに戻すことも、すぐにできる。AmazonとGoogle PlayならAndroid用のAPK、iOSならApp Storeのパッケージだ。うちはインフラ屋だから、ゲームエンジンもある”、Ludeiの社長Joe Monastieroはそう言う。彼が前にいたスタートアップappMobiは、その一部をIntelに売ったばかりだ。
同社のプラットホームから生まれたHTML5ゲームは、すでに150あまりある。Lost Decade GamesのOnslaught DefenseやLunch Bug、shortblackmoccaのRhino Hero、 D LewisのReady to Rollなどだ。
同社はそのインフラサービスを今年のたぶんQ2までは無料にする。“大半のデベロッパには今後も無料だ。成功したゲームには課金する予定だが”、とMonastieroは語る。“デベロッパの80%は、永久に無料だと思うね”。
Ludeiは、Knorrと、彼のインキュベータIdeatecaから、200万ドルの起業資金を得ている。
“とてもおもしろい世界になるね。冷たい水にうち一人で長年入っていたけど、水がぬるくなったらほかのみんなも飛び込んでくるだろう”、がMonastieroの説だ。
Facebookも昨年の半ばまではゲームデベロッパにHTML5をプッシュしていたが、それはライバルのGoogleやAppleに開発の主導権を握られたくないからだ。でも、自らのアプリも、そしてサードパーティのゲームも、パフォーマンスに問題があることが分かって以来、HTML5を見限った。だが、今後はどうなるか。
HTML5のゲームのデモはLudeiより(ビデオはVimeo)。