業界注目のデスクトップ光造形3Dプリンター「Form2」を日本市場で拡販、国内にサービスセンターも

Form2(1)デスクトップ3Dプリンターの最先端といえる機種「Form2」の製造元であるformlabs Inc.は、日本市場への取り組みを本格化させる。従来から同社の代理店となっていたBRULÉに加えて、新たにデジタルファクトリーを代理店に加えた。さらにこの2016年秋にはformlabsが日本国内にサービスセンターを設立する予定だ。製造業での開発部門のような要求が厳しい顧客に対応できるよう、アフターサービスの体勢を整えていく。

formlabsは、光造形(SLA)3Dプリンターで注目を集めている企業だ。formlabsはMIT Media Lab出身エンジニアと「MITのデジタルものづくりラボ」であるCenter for Bits and Atoms出身のデザイナーが設立した。2012年に1号機「Form1」をKickstarterで予約販売し300万ドル近い資金を集め、その後1900万ドルの資金調達に成功している(関連記事)。

Form2の出力サンプルをいくつか見せてもらったが、従来の低価格3Dプリンターとは明らかに異質の仕上がりだ。表面が滑らかで、1mm以下の小さな刻印の文字もきれいに造形されている。最大造形サイズは、ちょっとしたワイングラスやビールジョッキを作れる程度には大きい。

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Form2の出力サンプル。光造形(SLA)の特徴は仕上がりがきれいで高精細なことだ。直径2cmほどのサンプルに細かな文字を刻印している。

最新機種のForm2は、Form1、Form1+に続く第3世代で、多くの改良が施された。光造形方式は光硬化樹脂のレジン(液体エポキシ樹脂)をレーザー光線の照射で硬化させて造形する。安価な3Dプリンターでよく使われる熱溶解積層方式(FDM)と比べて精度が高く、表面の仕上げも滑らかという特徴がある。その一方で液状のレジンを用いるため、FDMと比べ取り扱いが面倒で、造形サイズ、製造時間、素材のバリエーションに制約があった。これらの点を改善したことでformlabs製品は高く評価されている。Form2のレビュー記事がTechCrunchMake:に載っているが、いずれも興奮気味の筆致だ。

今回新たに代理店となったデジタルファクトリー代表取締役社長の阿井辰哉氏は、「KickstarterでForm1を入手し、その時点で『代理店をやらせてほしい』とメールを打った。2年ほど経って、日本でのパートナーになってほしいという連絡が届いた。Form2を実際に入手して調べてみると、非常に出来が良い。改めて代理店になりたいと返事した」と話す。阿井氏は、Form2では樹脂をカートリッジに入れ交換を容易にした点や、専用ソフトウェアの出来の良さなどを高く評価している。デジタルファクトリーは、3Dデータ制作や3Dプリンターによる試作、金型作成に至る製造工程のコンサルティングを業務としている。顧客にはおもちゃメーカーや自動車部品メーカーもいて、製造業との関わりは長い。

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造形サイズの最大値に近い出力サンプル。大きめのビールジョッキ程度のサイズを造形可能だ。

3Dプリンターに詳しい業界筋によれば「Form2は、指標として表に出にくい安定性と安全性でも評価が高い」とのことだ。3Dプリンターは製造に失敗することも多いため、安定して造形ができるかどうか(安定性)は重要だ。また光硬化樹脂の中には発がん性物質が含まれる素材もあるが、Form2で使う素材は安全性が高い。取り扱いが楽なので作業効率にも良い影響がある。前機種と比べ、Wi-Fi経由でPCと接続できるようになった点も実用面では有用だ。3Dプリンターを使い倒す場合、ワイヤレスで接続、製造管理できる利便性はありがたい。

ただし「価格がもっと下がれば、さらにありがたい」との声も聞いた。デジタルファクトリーによれば「Form2は高精細な光造形方式を採用しつつ利便性を高めた点で、コストパフォーマンスは高いと考えている」としている。同社は「企業の設計部門、開発部門などが2台目の3Dプリンタとして購入する場合にちょうど良い製品だ」と付け加えた。

Form2のスペックと価格は次の通り。本体外形寸法は35×33×52cm、本体重量13kg。造形サイズは145×145×175mm、積層ピッチは25、50、100μm。レーザースポットサイズ140μm。レーザーパワーは250mW。専用ソフトウェアはWindows7以降、MacOS X 10.7以降で動作する。価格は54万9000円(税別)。カートリッジは1万8800円(税別)より。

投稿者:

TechCrunch Japan

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