次のVCの見つけ方

スタートアップとマーケットのニュースレター The Exchange(ザ・エクスチェンジ)へようこそ。

ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えしていこう。

12月も半ばを迎えて普通ならニュースサイクルも鈍化してくるはずだ。ところがそれがむしろ加速していて、2020年のホリデーサイクルはほとんど仕事で埋まるのではと真剣に心配をしているところだ。

ともかく、いつものような戯言を言っている暇はないので、さっそく仕事に取りかかろう。

次のベンチャーキャピタリストの見つけ方

New Stack(ニュー・スタック)というVCがある。同社はサンフランシスコやニューヨークに拠点を置いていないスタートアップのための、最初の機関投資家向けラウンドを主導することに注力している。ご想像の通り、その仕事の一部は、投資先企業が次の投資家を見つけることを支援することだ(現在の投資先企業がどのようなものかはここで見ることができる)。

New StackのNate Pierotti(ネイト・ピエロッティ)氏がThe Exchangeに語ったところによれば、彼のチームは現在、投資しているスタートアップたちが新しいラウンド探しのために無駄な時間を過ごさなくて良いように、「次のラウンド」の企画を練っている最中だという。ピエロッティ氏によれば、この企画は創業者たちとVCの両者に人気があるという。

少し前に、New Stackは約400人の創業者に対して、それぞれのベンチャーが困っているポイントは何かと質問した。これは多くのVCが市場をよく理解するために行っていることだと思う。この調査を通して、多くの創業者が次の投資家を見つけるための支援を求めていることがわかった。

この結果を受けて、New Stackは「次のラウンド」用ツールの公開版をまとめることを支援することにした。それはVC Rank(VCランク)と呼ばれるもので、内容はここでチェックすることができる。そこにスタートアップが自社についての情報を入力すると、1700を超えるファンドの中から連絡すべきファンドをアドバイスしてくれる。

なぜこんな話を持ち出したのかって?常に中西部のスタートアップの活動を取材する口実を探していることはさておき、日頃このニュースレターでは、ベンチャーキャピタルに頼っていた日々はとうに過ぎ去った企業の話に多くの時間を費やしている。今回のものは、まだVCに頼っている創業者たちが、実際に使えるリソースについて紹介できるチャンスだったのだ。

The Exchangeで取り上げるのは何もパブリックSaaSの話題ばかりではない。

マーケットノート、マーケットニュース

もうすでに読者のみなさんは、DoorDash(ドアダッシュ)のIPO(価格[未訳記事]、取引将来[未訳記事])、C3.ai(価格[未訳記事]、取引[未訳記事]、将来[未訳記事])、Airbnb(エアビーアンドビー)(価格取引[未訳記事])についてはご存知のことと想像している。以下はそれを前提として書く。

今回のマーケットノートはいくつかのマーケットニュースから始めよう。Braze(ブレイズ)は、会計年度の最初の3四半期で60%の成長を遂げた。

このニューヨークに拠点を置くカスタマーエンゲージメントソフトウェアのスタートアップは1年弱前に(未訳記事)ARR(年間経常収益)が1億ドル(約104億円)に達していたが、残念ながら単純に現在ARRが1億6000万ドル(約166億4000万円)になったということはできない。なぜできないのか?実は同社はARRではなく、GAAP(米国会計基準)による計算に移行したために、成長の数字が古いメトリックと一致していないのだ。

この60%の成長をした期間は2020年2月から10月までだ(SaaS企業では、第4四半期がクリスマス直後に終了しないように、1月以降に会計年度を開始するのが一般的だ)。しかし、もしBrazeのARR が 1億6000万ドル(約166億4000万円)以上になっていたとしても不思議はない。

CEOのBill Magnuson(ビル・マグヌソン)氏によれば、同社は2018年10月に8000万ドル(約83億2000万円)のシリーズEを行って以来、資金調達を行っていないという。このスタートアップは、成長のための資金を、これ以上の調達に頼る必要なく急速に成長してるのだ。

同社に対する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響は?マグヌソン氏によれば、Brazeはおそらく新型コロナ前の計画を上回っているものの、経済の変化にともない、2020年は状況に応じて再予測を行っていると語った。顧客という面では、新型コロナがなくても成長度合いは似ていたかもしれないが、内容は違っているとCEOはいう。彼は風船に例えて話した。新型コロナは風船のある場所(市場の一部)を絞りこんだが、同時にまた別の場所を膨らませた。つまり新型コロナを経ても、風船の体積は同じなのだが、その形(市場)が異なるものになったということだ。

GAAPへの移行はIPOに向けた動きを示しているのだろうか?そうではない、とマグヌソン氏はいった。Brazeは、他社と結果を比較して、どのように改善できるか、どこを改善できるかを検討するのが好きなので、標準的な測定基準があると助かる、と彼は付け加えた。

しかし、はっきりさせておこう。Brazeは株式公開をできる位の十分な規模を持っており、支出も大きくはなく、他の企業がほとんど冗談のような数字で公開するところも見ている。IPOへの誘惑は確かにあるはずだ。

そしてIPOに関して、少し話をしてみよう。私は先週AirbnbとDoorDashの公開に関して、それぞれの関係者と電話で話したが、それぞれの話のキーポイントを凝縮して話すと以下のようになる。

  • DoorDashのCFOがパンデミック後の消費者需要に強気な理由:多弁で明晰なCFOのPrabir Adarkar(プラビア・アダーカー)氏との会話はとても楽しいものだった。誰かから何かを学びたいと思っているときに、多弁で明晰な性質はとても素晴らしい組み合わせだ。私はパンデミック後のフードデリバリー需要について、DoorDashが何を考えているのか知りたかった。私は少し悲観的な見方をしている。だがアダーカー氏は、ご想像の通り強気だった。同社の巨額のIPOは、食品市場に深く入り込み、新たな分野に進出するためのクッションになるだろうと話した後、私たちは本題に入った。アダーカー氏は、一度ユーザーがDoorDashアプリをダウンロードして数回使用すれば、高い習慣性が生まれるのだという。彼は新型コロナウイルス感染症が終わった後も、その習慣性は続くと予想している。そして、ここ数カ月でより多くのレストランが参加しているので、サービス自体が向上しているのだと付け加えた。この先外出が許されたとしても、ユーザーの関心をつなぎ止めておくために役立つだろうということだ。
  • Airbnbの最高戦略責任者(CSO)がパンデミック後の消費者需要に強気な理由:Airbnbの創業者の1人であり、最高戦略責任者(CSO)でもあるNathan Blecharczyk(ネイサン・ブレチャージク)氏が、同社のパンデミック後の需要というテーマについてThe Exchangeに語った。まず第一に、外に出ることが許されれば旅行もすぐに回復する。これはAirbnbにとってはいいことだ。そして、Zoom(ズーム)がなくなるわけではない、と彼はいう。たとえばAirbnbを使って長い週末を取り、金曜日に働いて、また週末に寛ぐ人もいるかもしれない。また海外旅行が復活し、リモートワークへの文化的シフトが進めば、Airbnbは2021年には2019年よりも大きな数字を達成できるかもしれないという。まあどうなるかは、やがてわかるだろう。
  • SequoiaのパートナーであるAlfred Lin(アルフレッド・リン)氏が直近のIPO価格と結果について語る:最後は投資家からの声だ。SequoiaはDoorDashとAirbnbの両方に関わっており、リン氏はそれぞれの会社の取締役だ。私たちは、IPOで目立った点について話をした。一部の企業がIPO後につけた極端な価格についての私の質問に答えて、リン氏はAirbnbは公開前の間も価格が高かったと説明した。傑出しているもののためには、ときには有り金をはたく必要があるというのが、言い分のようだ。ベンチャー的視点からは、その点には共感できるが、一般投資家の視点からすると、共感度は低くなる。でも、だからこそ、株式市場はおもしろいのだ。

さらに細かい話をする前に、OKRにフォーカスするKoan(コウアン)がさらに100万ドル(約1億400万円)を調達したこと(未訳記事)と、以前にも記事にした(未訳記事)OKRにフォーカスするAlly.io(アリーio)の成長について書いておこう。要点はこうだ。Allyは2020年に収益を3.3倍に成長させ、500社の新規顧客を獲得し、既存顧客のうち145社で規模が拡大された。Allyはこの需要の原動力として、ハイブリッド(オフィスとリモート)ワーキング環境のために、より多くの計画ツールが必要されている点を挙げた。Koanは、そのソフトウェアの無料版をリリースする際に、同様の状況を語った。

今年の年頭のOKR市場は熱かったが(未訳記事)、その熱はいまでも続いているようだ。

その他のことなど

さて、以下興味深くはあるものの、まとめて書くことができなかったトピックを順不同でご紹介しよう。

  • デンバーを拠点とするRange Ventures(レンジ・ベンチャーズ)が2300万ドル(約23億9000万円)のファンドを組成した。なぜこれが気になるのか?デンバーに焦点を当てているためだ。デンバーの投資シーンが、ご当地VCを生み出せるほど成熟していたとは知らなかった。これに関しては私は認識不足だった。
  • ブラジルのソフトウェア企業Intelipost(インテリポスト)がRiverwood Capitalの主導で3200万ドル(約33億3000万円)を調達。2020年にはeコマースと物流がホットだが、Intelipostはその両方に対応している。目が離せない会社の1つだ。
  • シカゴのCarDr(カードクター)が、Red Fort Capitalから「ローンチ&シードファンディング」と称する500万ドル(約5億2000万円)を調達。このスタートアップは、AIを使ってクルマの診断を支援できるようにしている。それが自らを「カードクター」と呼ぶ理由だ。同社によれば、消費者やディーラー、銀行などを相手にセールスを行っているという。スタートアップは新しい資金のうち75%をエンジニアリングのために確保する予定だ、すなわちこの先さらに多くのものを開発するということを意味する(良いことだ)。経済面では、良好な利幅を確保しているものの、AIコンピューティング時間のコストのために、一部のSaaS企業よりも若干低い水準であると、同社はThe Exchangeに語っている。そのことも記事にしている(未訳記事)。
  • APIセキュリティに特化したSalt Security(ソルト・セキュリティ)は、今週3000万ドル(約31億2000万円)を調達した。私は、APIに関しては詳しくないので、APIセキュリティ分野の企業が1回のラウンドでこれだけの調達をしたことに興味を惹かれた。Sequoiaが今回のシリーズBを主導したが、Saltは6月に2000万ドル(約20億8000万円)のシリーズA調達も行っている(2020年の2ラウンドのトレンドが続いている![未訳記事])。
  • Beyond Identity(ビヨンド・アイデンティティ)というスタートアップが今週7500万ドル(約78億円)を調達した。私は「 passwordless”パスワードなし)アイデンティティ」が何を意味しているのかについては途方に暮れているが、うまくいくことを願っておこう。なにしろ私はOkta(オクタ)のパスワードを定期的に更新しなければならないことで、日頃残念な思いをしているのだ。
  • Ada Ventures5000万ドル(約52億ドル)のファンドを組成(未訳記事)。この欧州のグループは「社会的な問題に取り組む多様な創業者に投資すること」を意図している。そうしたミッションに参加しないでいることは難しい。

では今回はこの辺で。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:New Stack

画像クレジット:Nigel Sussman

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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