欧州議会、EU加盟国によるスパイウェア「Pegasus」の使用について調査を開始

欧州議会は11日、欧州加盟国が強力なモバイルスパイウェア「Pegasus(ペガサス)」を入手・使用した疑惑を調査するため、新たに「調査委員会」を設置することを決議した。

EU加盟27カ国におけるPegasusやその他の監視スパイウェアの使用を調査する委員会の設置について、議員たちは概ね賛成票を投じた。調査委員会は、議員が欧州法違反の可能性を調査することを可能にする。

欧州議会は声明の中で、同委員会は「監視を規制する既存の国内法を調査し、Pegasusスパイウェアが、例えばジャーナリスト、政治家、弁護士などに対して政治目的で使用されたかどうかを調査する予定である」と述べている。

Pegasusは、イスラエルのNSO Group(NSOグループ)によって開発された強力なモバイルスパイウェアで、ターゲットの端末内のデータにほぼ完全にアクセスすることができる。NSOは、より広範な監視シーンで有名なスパイウェアメーカーの1つで、デバイスのソフトウェアのセキュリティ上の欠陥や弱点を突くことで、政府や警察によるデバイスデータへのアクセスを可能にしている。だが研究者たちは、重大な犯罪者やテロリストのみが標的になっているという保証にもかかわらず、市民社会のメンバーであるジャーナリスト、活動家、人権擁護者などが、Pegasusスパイウェアを使用する政府によってターゲットにされていることを一貫して発見している。

この委員会の設立は、欧州データ保護監察機関(EDPS)が、ハンガリーとポーランドの2つのEU加盟国でこのスパイウェアが導入されたという報告を引用して「前代未聞のレベルの立ち入り」を恐れ、Pegasusとその他のモバイルスパイウェアの使用をEU全域で禁止するよう求めてから1カ月も経たないうちに行われた。

1月、Citizen Labの研究者は、野党議員のKrzysztof Brejza(クシシュトフ・ブレジザ)氏を含むポーランド与党の批判者が、このスパイウェアの標的になっていた証拠を発見した。ブレジザ氏の携帯電話から盗まれたテキストメッセージはその後流出し、改ざんされて国営テレビで放送され、その後彼は僅差で選挙に敗れた。ブレジザ氏はその後、ポーランド政府が選挙に介入したと非難している。

研究者たちは、フランス、ドイツ、スペインでもPegasus感染を報告している。

欧州の規則により、欧州議会のPegasus委員会は1年間運営されるが、最大で6カ月間延長が可能だ。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Den Nakano)

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TechCrunch Japan

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