Pale Blueは10月21日、第三者割当増資(シードラウンド)および金融機関からの融資により、約7000万円の資金調達を発表した。引受先は、インキュベイトファンド、三井住友海上キャピタルの各社が運営するファンド。
同社は令和2年(2020年)4月に設立後、東大IPC 1st Roundや国および地方自治体の助成などを含め、創業半年で累計約1億4000万円を調達。これによって、世界初となる、水を推進剤とした超小型衛星向け統合推進システムの実用化に挑むとしている。
また、同ラウンドのリードインべスターであるインキュベイトファンドから、大学発スタートアップの立ち上げ支援経験を豊富に有する村田 祐介氏が同社社外取締役に就任した。
小型衛星製造企業NanoAvionicsとのMemorandum of Agreement(MOA)も締結。NanoAvionicsはアメリカ・イギリス・リトアニアに拠点を持ち、これまでに27ヵ国の企業・研究機関から75機以上の小型衛星の製造・インテグレーションを行ってきた実績を持つ。今回のMOAを契機とし、Pale Blueは水を推進剤とした超小型推進機の事業拡大を加速させる。
Pale Blueは、水を推進剤として用いた超小型推進機の技術を軸に、持続可能な宇宙開発・利用の実現を目指す、東京大学発スタートアップ。
同社によると、小型衛星のさらなる市場拡大には、宇宙空間で能動的に小型衛星を動かすための推進機が必要不可欠という。しかし、大型衛星用の推進機は高圧ガス・有毒物を推進剤として用いており、体積・重量・コストの観点から小型衛星に適用することは困難だった。
Pale Blueは、東京大学 小泉研究室で進めてきた安全無毒で取扱い性・入手性の良い水を推進剤とする小型推進機の技術を社会に実装することで、小型衛星の市場を拡大させつつ、持続的な宇宙開発・利用の実現を目指す。今回の資金調達を受け、まずは水推進機の複数の宇宙実証プロジェクトを推進する。
東京理科大学 木村研究室と水プラズマプルームの宇宙空間におけるカメラ撮影に関する共同研究を締結
またPale Blueは、東京理科大学 理工学部 電気電子情報工学科 木村研究室と、水を推進剤とする超小型統合推進システムから宇宙空間に排出される、プラズマ状態の水を指す「水プラズマプルーム」の宇宙空間におけるカメラ撮影に関する共同研究契約を締結。
Pale Blueは2020年5月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「革新的衛星技術実証3号機の実証テーマに選定され、水を推進剤とした超小型統合推進システムの開発を進めてきた。同システムは、「レジストジェットスラスター」および「イオンスラスター」の2種類の推進機をひとつのコンポーネントに統合したものになるという。レジストジェットスラスターは、推進剤を電気エネルギーにより加熱した後に宇宙空間に排出し、その反力で推力を生成する推進系。イオンスラスターは、イオンを引き出すイオン源と、電子を引き出す中和器が対となって構成され、中和器から電子を放出することで宇宙機の電位を保ちつつ、イオン源からのイオン引出しにより推力を生成する推進系。
東京理科大学 木村研究室は、スペースデブリの除去を主な研究対象として、その実現に必要な技術にシステム技術・自律制御技術など総合的に取り組んでいる研究室。スペースデブリに自律的に接近するための画像誘導技術に関連して、宇宙用超小型カメラにも注力しており、小惑星探査機「はやぶさ2」はじめ、これまでに30台以上の宇宙用カメラの開発経験を持ち、宇宙開発において日本を代表する研究室となっている。
同共同研究では、革新的衛星技術実証3号機に搭載される水を推進剤とした超小型統合推進システムに関し、特に水イオンスラスターが宇宙空間で動作している様子を、宇宙仕様に工夫が施された超小型カメラによって撮影。宇宙空間において動作中の水イオンスラスターから排出される水プラズマプルームの放出特性をカメラによって撮影し取得することを目指す。
過去に宇宙空間における水イオンスラスターの作動およびそのプルームが撮影された例はなく、実現に成功すれば世界で初めての成果となる。加えて、通常は見ることのできない宇宙での推進機の作動の様子を可視化することは、科学技術のアウトリーチや製品の付加価値を高める観点でも非常に意義のあるものとなるという。
東京大学は、宇宙推進機を長年研究しており、推進機内における複雑なプラズマ物理の解明や電気推進の性能評価に関して、世界をリードする研究機関のひとつ。Pale Blueのメンバーは、東京大学在籍時から推進機の基礎研究に加えて、高周波電源や高電圧電源の小型化・高効率化に取り組み、成果を上げ、さらには実際の小型衛星に搭載する推進システムの開発を多数経験。水統合推進システムの実現において、東京大学のエンジン基礎研究の成果を社会実装・実用化する役割を担い、その収益をアカデミアに還元することを目指す。
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