渋谷のITベンチャーにじわり浸透、野菜版オフィスグリコ「OFFICE DE YASAI」

オフィスで長時間働くビジネスパーソンの小腹を満たす“置き菓子”サービスとして人気の「オフィスグリコ」。その野菜版といえる「OFFICE DE YASAI」が22日、都内の一部エリアで正式スタートした。企業に週1回、ハンディサイズの野菜や果物を届けるサービスで、今年1月にベータ版を開始。現在までにサイバーエージェントやクラウドワークス、nanapiなど渋谷のITベンチャーを中心に40社が導入しているのだという。

スタッフが毎週オフィスを訪問し、商品の補充と代金の回収を行う「富山の薬売り」方式のサービス。野菜や果物は農薬や化学肥料の使用を抑えたという産直品。これまでにトマトや金柑、自家製味噌で作ったディップ付きのきゅうりやにんじん、いちごなど、洗わずにそのまま食べられるミニサイズの商品を提供している。今後は、レンジの使用を前提とした「じゃがバターセット」などの新商品も投入する予定だ。

導入する企業は、商品の代金を企業が全額負担する「レギュラー」、従業員各自が代金を支払う「パーソナル」、企業と従業員が代金を折半する「ライト」の3種類のプランから選べる。商品は1パック100円〜300円。毎週約20パックが届き、1カ月に1万円程度で導入できるという。レギュラープラン以外では売れ残った商品の金額を運営元のKOMPEITOが負担し、売れ行きに応じて配送する数を調整する。無償貸与されるA3サイズ(幅340×奥行390×高さ475mm)の小型冷蔵庫を設置するスペースを準備すれば、商品と電気代以外に費用はかからない仕組みだ。

無償貸与されるA3サイズの小型冷蔵庫

企業としては、お菓子の代わりに野菜や果物を用意することで健康志向の従業員の満足度向上を図れるのがメリット。実際に導入したサイバーエージェントでは、朝食代わりに利用する社員がいたり、朝ミーティングの前に配っていたりしていて、手軽な栄養補給とともに組織の潤滑油としての効果を発揮しているのだとか。

KOMPEITO代表取締役の川岸亮造

一方、農家はこれまで「規格外品」として廃棄処分していたミニサイズの農作物を産直販売することで、高付加で販売できるのが利点。農家としては「大きくて見栄えの良い商品」に価値があるのが常識だが、オフィス向けでは「小さくて食べやすい商品」に価値が生まれるのは魅力といえそうだ。

現在の配送エリアは渋谷区や新宿区、港区、東京駅周辺。商品はサービスを運営するKOMPEITO代表取締役の川岸亮造の自宅と、オフィスの2拠点の冷蔵庫で保管し、3人が自転車で配送している。生鮮食品だけに夏場は商品の劣化も予想されそうだが、今後は「都内にある飲食店の業務用冷蔵庫の遊休スペースを借り受け、そこから配送する体制を整えたい」と川岸は話している。

野菜版オフィスグリコのようなサービスは健康志向もあいまってアイデアとしては面白いが、ビジネスがスケールするかが課題となりそう。例えば、現在導入済みの40社や、北海道から九州にある契約農家は、川岸ら同社のスタッフが直接足を運んで受注していたり、商品の一部は自社でパック詰めしている。今後はウェブ経由で企業や農家とやりとりできるようにしたり、配送スタッフを強化するための資金調達も視野に入れている。年内に1000拠点の導入を目指すという。

(文中敬称略)


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。