火星探査車降下途中の「恐怖の7分間」がリアルに感じられる写真

火星探査車「Perseverance(パーセベランス)」は日本時間2月19日朝、無事に火星に着陸したが、その直前には火星の大気圏に高速で突入し、NASAのチームが「恐怖の7分間」と呼ぶ着陸に向けた一連の複雑な操作が行われた。NASAはその時に撮影されたゾクゾクする写真を公開している。火星の大地の上に、ジェットパックから細いワイヤーでぶら下がっている探査車を見れば、チームの「恐怖」を容易く理解することができるだろう。

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パーセベランスのTwitter(ツイッター)アカウントが、他の画像とともに投稿した(いつものように、一人称で)この写真は、探査車から最初に送られてきたものだ。ナビゲーション用カメラによって撮影されたモノクロの写真は、ほぼ着陸した瞬間を捉えたものと思われる。我々がこの視点から探査車(に限らないが)を見るのは初めてのことだ。

この写真を撮影したカメラは、「ジェットパック」と呼ばれるロケット動力の降下モジュールに搭載されている。火星の大気圏摩擦とパラシュートの両方を使って十分に減速した後、熱シールドが取り外され、パーセベランスは安全な着陸場所を探して大地をスキャンする。着陸場所が見つかったら、そこに探査車を運んで着陸させることがジェットパックの役目だ。

冒頭の画像は、Descent Stage(降下ステージ)の「Down-Look Cameras(見下ろしカメラ)」で撮影されたもの(画像クレジット:NASA/JPL-Caltech)

着陸地点から約20メートルの上空に達すると、ジェットパックは「スカイクレーン」と呼ばれる一連のケーブルを展開し、安全な距離から探査車を地上に降ろす。それによってジェットパック自身はロケットで離れた場所に不時着できるようになっている。

記事のトップに掲載した写真は、着陸の直前に撮影されたもので、火星の土壌の渦巻きが数百メートル下にあるのか、数十メートル下にあるのか、それとも数メートル下にあるのかは少し分かりにくいが、その後に撮影された画像を見ると、地面に見えるのが岩ではなく石であることが明らかになる。

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

これらの画像は、火星から何万キロメートルもの距離を、HQトラッキングテレメトリデータとして送られて来たもので、我々は間接的にしか見ることができないが、そこに至るまでの過程が、実際には非常に物理的で、高速で、時には残酷なものであることを思い出させてくれる。数百の物事が正しく行われなければ、単に火星のクレーターを1つ増やすだけで終わってしまうのだ。そんな時間と情熱を費やしたものが、秒速5キロメートルという速度から始まった降下の後、遠く離れた惑星の上空でぶら下がっているのを目の当たりにするのは……感動で胸が締めつけられる思いがする。

とはいえ、この一人称的視点は、今回の火星着陸で最も印象的な写真ではないかもしれない。これが公開された直後、NASAは火星探査機「Mars Reconnaissance Orbiter(マーズ・リコネッサンス・オービター)」から送られた驚くべき画像を公開した。それはパーセベランスがパラシュートで降下している瞬間を捉えたものだ。

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona

この写真が撮影された時点で、MROは700キロメートルも離れた位置にあり、秒速3キロメートル以上で移動中であったことに留意してほしい。「2つの宇宙船の非常に離れた距離と高い速度から、正確なタイミングを必要とする難しい状況でした。マーズ・リコネッサンス・オービターは上向きに傾斜するともに大きく左側に傾かせ、ちょうど良い瞬間にパーセベランスがHiRISEカメラの視野に入るようにしました」と、NASAは写真に付記した

今後、NASAがパーセベランスから十分な画像を収集すれば、さらに完全な「恐怖の7分」を捉えた写真を我々が目にするチャンスもあるだろう。だが、今のところ公開された数枚の画像は、そこにいるチームの創意と技術を思い出させ、人類の科学と工学の凄さに驚きと畏敬の念を感じさせるに違いない。

カテゴリー:宇宙
タグ:NASA火星惑星探査車

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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