生産者と消費者を直接つなぐオンラインマルシェ「食べチョク」が2億円調達

ビビッドガーデン代表取締役CEOの秋元里奈氏(前列中央)と今回のラウンドに参加した投資家陣

生産者が作ったこだわりの食材を直接購入できるオンラインマルシェ「食べチョク」を展開するビビッドガーデンは10月2日、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により総額2億円を調達したことを明らかにした。

食べチョクには現在500軒以上の生産者が登録していて、直近では野菜のほか肉や魚、酒など扱う食材の幅も拡大。調達した資金を活用して人材採用や新規顧客獲得ためのマーケティングを強化し、さらなる事業成長を目指す計画だ。

なおビビッドガーデンは2018年に赤坂優氏や家入一真氏など数名の個人投資家から4000万円を調達済みで、今回はそれに続くシリーズAラウンドという位置付け。主な投資家は以下の通りだ。

  • マネックスベンチャーズ
  • 神明ホールディングス
  • iSGS インベストメントワークス
  • VOYAGE VENTURES
  • ディー・エヌ・エー
  • 松本龍祐氏(元メルペイ取締役CPOで現カンカク代表取締役)
  • 為末大氏(侍 代表取締役)
  • そのほか複数名の個人投資家

オンライン上で野菜や肉、魚、お酒を生産者から直接購入

ビビッドガーデンが手がける食べチョクは個人や飲食店が各地の生産者からオンライン上で直接食材を購入できるマーケットプレイスだ。

消費者の視点では生産者から直に食材を購入するため作った人の顔が見えるだけでなく、スーパーなどではあまり見かけないような“レアな品種”を手に入れることも可能。直送ならではの鮮度の高さもウリの1つだ。

一方の生産者にとっては従来に比べてより多くの収益をあげられるチャンスがある。通常の流通方法では多くの中間業者が存在するため粗利が少なくなる構造になっていたほか、価格が一律で決まってしまうという課題もあった。食べチョクは生産者自ら料金を決定することでこだわりの食材を適正な価格で販売できるのが特徴。直接消費者の声を聞けるというメリットもある。

創業者である秋元里奈氏の実家は以前農業を営んでいたものの、市場出荷のみで経営を維持することが難しくなり遊休農地に。他の農家にもヒアリングをする中で収益面や販路を始めとした生産者の課題を感じ、その現状を打破するべく2017年8月に食べチョクをローンチした。

当初はオーガニック農家の農作物を買えるプラットフォームとしてスタート。現在は扱う食材も拡張していて2019年7月からは牛肉や豚肉などの畜産物を扱う「肉チョク」、マグロやウニなど水産物を扱う「魚チョク」を始めた。つい先日には「酒チョク」も開始し、まさに“オンラインマルシェ”として進化を遂げている。

購入方法についても自分の好みに合った生産者から定期購入できる「食べチョクコンシェルジュ」や5月にスタートした複数人での「共同購入」機能、販売前に商品を取り置きできる「予約機能」など選択肢を拡大。飲食店向けにはコンシェルジュ機能をベースにした「食べチョク Pro」を昨年11月から展開している。

秋元氏によると現時点で登録生産者の数は500軒を突破。月にだいたい50件ほどの問い合わせがくる状態で生産者のネットワークは地道に広がっているとのこと。消費者側も通常の購入はもちろんコンシェルジュを通じて定期購入するユーザーが増えていて、月次の流通額は1年前から6倍になっているそうだ。

「手数料モデルで粗利が高いわけではないため、いかに継続して利用してもらえるかは大事にしてきた。その点では定期便を通じて野菜を買い続けてくれるユーザーが増え、良いサイクルが回り始めている。ラインナップが拡充することで『いつもの野菜に肉や魚をアドオンしてもらえる仕組み』も作れているので、生産者さんが作ったこだわりの品を買えるプラットフォームとして、例えば調味料など今後もどんどん横に広げていきたいと考えている」(秋元氏)

今後は蓄積してきた農家のデータも活用へ

今回の調達は事業が軌道に乗りつつある中で人材採用とマーケティングを強化し、成長スピードを加速させていくことが大きな目的になる。

投資家の1社である神明ホールディングスとは先月資本業務提携を発表済み。取扱農作物の拡大や食べチョク・食べチョクProのサービスを充実させることはもちろん、同社とタッグを組み物流面の最適化を進めていくという。

秋元氏が今後のポイントの1つとしてあげるのが「農家を中心とした生産者データの活用」だ。食べチョクでは「今農家でどんな野菜が取れているのか」といった栽培情報をキャッチアップしているからこそ、運営側主導で個人や飲食店にオススメの農家を提案するコンシェルジュ型のサービスも成立する。

現時点で詳細までは言えないとのことだが、必ずしもITに精通していない生産者もいる中で出品や運営をサポートする機能や、栽培情報が常に最新のものにアップデートされる仕組み作りなど、蓄積してきたデータを用いたサービス・取り組みに力を入れていく計画のようだ。

「もともと生産者側の課題を感じて会社を始めた。今は販売の部分に注力しているが、収入面や後継者不足、資材調達など課題はまだまだ山ほどある。販売以外の側面に関しても事業を通じて多くの生産者さんに貢献できる仕組みを作っていきたい」(秋元氏)

なお食べチョクと近しい領域では農家や漁師から食材を買える「ポケットマルシェ」や先日リニューアルをした「ukka」など複数のスタートアップがサービスを展開している。

ビビッドガーデンでは初期から力を入れている野菜を1つの軸に、上述したデータの活用や飲食店向けのサービスなども含めて事業を伸ばしていきたいとのことだ。

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TechCrunch Japan

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