動画生成ツール「RICHKA(リチカ)」を提供するカクテルメイクは9月5日、ベンチャーキャピタルのNOWや佐藤裕介氏など複数の個人投資家を引受先とする第三者割当増資により、5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。
数100種類の独自フォーマットで知識なしでも動画を生成
RICHKAは動画制作の経験や専門スキルがない人でも、ブラウザ上から簡単に動画を生成できるクラウドサービスだ。
必要なのは動画の基となる素材(画像や動画)と、動画内で表示するテキストだけ。素材に関しては自分でアップロードすることもできるし、メディアの記事を動画にする場合などはURLを入力することで記事内の素材を抽出することもできる。
これらの素材をRICHKA独自のフォーマットに組み込むことで、複雑なものでなければ最短1分で動画を作成できるのがウリだ。
料金は月額10万円で20本の動画を作成できるプランをメインに提供。このプランではRICHKA側で毎月1本各社に合ったフォーマットをオーダーメイドで作成することで、ブランドイメージに合った動画を作れるようにサポートしている。加えて様々な用途に対応できるように数100種類のフォーマットを用意し、ユーザーが膨大な時間や手間をかけずとも、品質を担保した動画を制作できる環境を整えた。
カクテルメイク代表取締役の松尾幸治氏によるとリリースから約10ヶ月で累計100社への有償導入実績があり、現在は月間3000本以上の動画が生成されているそう。大まかな内訳としては動画広告用のクリエイティブ、Webメディアやプラットフォームでの利用、その他の用途がそれぞれ3分の1ずつを占めるのだという。
以下の動画は、以前TechCrunchでも紹介した車コミュニティアプリ「CARTUNE」の広告配信用に作られたもの。車の画像素材と車種のテキストのみを使ったシンプルなものなので、これなら確かに短時間で作れそうだ。
課題となっている“制作コスト”を抑える仕組みが必要
松尾氏の話では、RICHKAを導入している企業のほとんどが「以前から動画を作りたいという思いはあったものの、制作コストがネックで1度きりで断念してしまっていた、もしくはそもそも試せていなかった」のだという。
「外注すると1本あたり数十万円、1週間かかることもある。内製するにしても相応のコストはかかるし、そもそも人材が必要だ。費用や時間といった制作コストを抑える仕組みがないとPDCAを回せないので、動画広告などを作っても正解がわからず悪循環に陥る。制作コストの重さこそが、動画コンテンツの普及を妨げる要因になっていると感じていた」(松尾氏)
カクテルメイクは2014年の設立以来、映像制作会社として数千本の動画コンテンツ制作を行ってきた。松尾氏が「動画関連で来るといわれるものは一通りやってみた」と話すように、ライブ配信や分散型動画メディアのコンテンツなど、制作した動画の幅は広い。
さらにさかのぼれば、松尾氏は前職でも経営者のインタビュー動画メディア事業に携わっていたというから、カクテルメイク創業前から数年に渡って動画制作と向き合ってきたことになる。
動画の制作コストがネックとなりPDCAが回しづらいという課題は、松尾氏自身も現場で感じていたもの。同時にこれまでカクテルメイクで貯めてきた動画制作やトレンドに関する知見、それをフォーマットに落とし込むノウハウを活用することで、この課題を解決するプロダクトを作れるのではないか。そのような考えもあって、約1年前に開発したのがRICHKAだ。
「たとえば動画広告であれば、1個あたり数千円のコストで近しいクリエイティブを1日に十数パターン作ることもできるため、『動画広告のABテストがしやすくなった、PDCAが回しやすくなった』という反応はよく頂くようになった」(松尾氏)
もっとライトな価格帯だと試しやすいという声も多く、今後はより安価に動画コンテンツを作れる新プランの提供も予定しているそう。今回調達した資金を基に人材採用とプロダクトの改良を進め、まずは2019年中に1000社への導入を目指す。特に動画広告におけるニーズを軸に考えていて、動画広告用のクリエイティブ制作ツールにおいてトップシェアを狙っていく方針だ。
またその先には「誰でもクリエイターの知見や脳みその中身を使えるようになり、クリエイター側にはストックの収入が入る仕組み」を作るという構想がある。
たとえば現在はカクテルメイクと一部のクリエイターで作っている動画フォーマットを、より多くの動画クリエイターが登録・販売できる仕組みなどを考えているという(WordPressで有料テーマを販売する感覚に近いかもしれない)。
「クリエイターじゃない人がクリエイティブを作れるようになる。クリエイターは知見を提供することで収益を得て、ライスワークをしていたような時間を新しいチャレンジの時間に使えるようになる。インターフェイスを通じた新しい“スキルシェア”のようなサービスを作っていきたい」(松尾氏)