砂の惑星タトゥイーンで乗りたいアウディのオフロード仕様の電動コンセプトカー

コンセプトカーはモーターショーには不可欠のもの。ほとんどの車は、結局生産されることなく終わってしまうが、自動車メーカーが何を考えているのか、そしてどこを目指しているのかを知る手がかりになる。

このAudi(アウディ)のコンセプトカーは、デザイナーやエンジニアが、地球から遠く離れた惑星を思い浮かべて開発したものかもしれない。少なくとも広大な荒野を想定したものだろう。

Audiは、米国時間9月10日に、フランクフルトのモーターショーで「Audi AI: TRAIL Quattro」を発表した。「オフロード車の未来」を念頭に設計された電動のコンセプトカーだ。この「TRAIL」は、同社が2017年以降、あちこちの自動車ショーで発表してきた4種のコンセプトカーのうちの1台で、オフロード車だ。他の3種のコンセプトカーは、スポーツカー、高級車、そして巨大都市を想定して設計されたもの。

Audiは、こうしたコンセプトカーは、無益な試みではないと主張している。こうした4種の車は、将来の同社の車が、特定のユースケースに対して、どのように設計されうるものかを示しているという。

「将来的には、お客様は、Audiのオンデマンドの車両プールの中から、お好みや目的に応じて特徴的なモデルを選び、一定期間だけリースできるようになります」と、同社は発表した。

Audiでは、このオンデマンドのサブスクリプション方式をさらに推し進めようとしている。そのため、まだこの世に存在しない、完全に概念的なオンデマンド製品を使用する顧客ごとの好みに合うよう、車の構成を変更可能なものとすることも考えている。同社によれば、重要な顧客情報は、すべてmyAudiと呼ばれるシステムと、それに付随するアプリに保存されるという。

以下のビデオでは、Audiのデザイン責任者マーク・リヒト(Marc Lighte)氏が、こうしたコンセプトの背後にある考え方を説明している。

Audi AI: TRAILの場合、デザイナーが重視したのは、探検心と、周囲の環境の眺望だ。この車には、5機のドローンが付属している。ヘッドライトの代わりになるだけでなく、たとえばキャンプする場所や、ピクニックスポットを照らし出したりすることができる。

このコンセプトカーは、フル電動で、航続距離は最大310マイル(約500km)だ。全長は約13.5フィート(約4.1m)、幅は7フィート(約2.1m)で、22インチのホイールを装着している。オフロード仕様なので、デザイナーは13.4インチ(約340mm)の最低地上高を確保した。この車がこの仕様のまま現実のものとなれば、50cmを超える深さの川でも渡ることができる。航続距離は、悪路の場合には約155マイル(約250km)と短くなる。これでは、この車が実在したとしても、実際に荒野を走破するのはちょっと躊躇するかもしれない。

  1. Audi AI:TRAIL quattro

    Static photo Color: Solar sky
  2. Audi AI:TRAIL quattro

    Interior
  3. Audi AI:TRAIL quattro

    Detail
  4. Audi AI:TRAIL quattro

    Static photo Color: Solar sky
  5. Audi AI:TRAIL quattro

    Interior
  6. Audi AI:TRAIL quattro

    Detail
  7. Audi AI:TRAIL quattro

    Interior
  8. Screen-Shot-2019-09-10-at-4.20.44-PM

  9. Audi AI:TRAIL quattro

    Static photo Color: Solar sky
  10. Audi AI:TRAIL quattro

    Static photo Color: Solar sky

バッテリーユニットは床面に組み込まれていて、定員の4人が乗っても広々とした室内を確保している。キャビンはガラスで囲まれているので、周囲の眺めは並ぶものがないほど良好だ。地球の風景はもちろん、タトゥイーンの砂漠に沈む2つの太陽の眺めもすばらしいはず。

車体の外装はハイテク鋼、アルミニウム、炭素繊維を組み合わせたもの。総重量は3858ポンド(約1750kg)に抑えられている。

この車は、4機の電動モーターによる4輪駆動方式を採用している。自動運転も可能な、運転アシスト機能も搭載する。ただし、移動中にストリーミングビデオを観るためのディスプレイは装備していない。この車のコンセプトは、あくまで外の世界の眺望を楽しむことにあるのだ。

リサイクル素材を使用した内装は、必要最小限のもの。ペダル、ヨーク型のハンドル、いくつかのボタンがあるだけ。あとは、ハンドルの中央にスマホをセットして、車の機能やナビゲーションのコントロールセンターとして使えるようになっている。

後席のシートは、ハンモックのようにして使うこともできる。また取り外して車の外に設置し、アウトドア用の椅子として利用することも可能。

ドローンをヘッドライトに

中でも最も興味深いのは、5機のローターレス電動ドローンを装備し、さまざまな目的に利用できることだろう。このドローンは、マトリックス状のLED照明を備えている。また屋根に取り付ければ、電磁誘導による充電機能を使って電力を供給することも可能だ。

Audiでは、こうしたドローンを「Audi Light Pathfinders(光の先導者)」と呼んでいる。飛行しながら車の前方の道を照らすことができるからだ。同社は、これらのドローンによって、車のヘッドライトを完全に置き換えることができるとしている。車を止めて駐車すると、ドローンは車の周囲を照らすこともできる。

このような仮想のユースケースでは、車の乗員がスマホを使って、ドローンをコントロールすることができる。ドローンに搭載されたカメラの映像は、Wi-Fiを介して送信し、ドライバーの前のディスプレイに表示できる。Audiでは、これを「空にある目」だとしている。

画像クレジット:Audi

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。