神戸市がGovTechサミット開催、行政サービス効率化に挑戦したスタートアップ7社が登壇

神戸市は2月10日、「自治体 × スタートアップ企業 GovTechサミット」を東京・大手町にある三井住友銀行東館で開催した。

GovTech(ガブテック)とは、政府(Government)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた言葉。日本の行政機関には日本の巨大企業をも上回る300万人以上が従事しているが、残念ながら一般企業に比べると非効率という意見が多い。これら行政機関が提供するサービスをテクノロジーによってを効率化するのがGovTechサミットの目標だ。

同サミットの「自治体×スタートアップ 共創への取り組み事例」というセッションでは、神戸市が選んだ2018年度の「Urban Innovation KOBE」に選出された7社のスタートアップが、GovTechに関連するサービスを紹介した。

ためま

2014年設立で広島県を拠点とする「ゆるくつながる社会作りを目指す」スタートアップ。自治体や地域活動家ともに、公民館や児童館、商店街、商工会、道の駅など、さまざまな地域活動の支援している。具体的には、スマートフォンのGPS機能を利用して「今日、今からでも参加できるイベント情報を5秒で検索できる」という「ためまっぷ」サービスを提供。今回は神戸市長田区との協働開発によって自治体版の「ためまっぷながた」を開設した。

FlyData

米国・シリコンバレーで日本人が起業したスタートアップ。企業内の全データをクラウド内データウェアハウスサービス「Amazon Redshift」にリアルタイムで同期(転送、保管)するサービスを提供。低コストでのビッグデータの管理・分析を得意とする。同社は神戸市との取り組みで、月間20〜30万枚、年間250万枚のレセプト(診療報酬明細書)のチェック作業の効率化を推進。AIを使って手打ちデータからミスを含む可能性が高いものを探し出し、自動でミスを修正する技術を提案。最大で70%の作業効率の削減に成功したという。

コガソフトウェア

「地域コミュニティ交通の予約システムの実証開発」をテーマに、音声自動応答による公共交通機関の電話予約システムを開発。具体的には、同社の運行管理システム「孝行デマンドバス」をベースとして、輸送密度が低い神戸市北区淡河町で利用者が希望する場所や時刻に運行するシステムを開発した。

ディグランド

同社の地図まとめアプリ「Diground」を利用して、神戸の街中に隠されたヴィッセル神戸の選手動画を探すスタンプラリーを2018年11月3日~12月2日に開催。結果、1366人がアクセス、297人がアプリをインストール、48人が全9スポット制覇したそうだ。同社と神戸市職員が約4カ月間の協働開発を行い、市民によるテスト利用や試行導入、実証実験などを通じて新サービスの開発を目指すという。

トラフィックブレイン

「神戸から日本のバスロケを立て直す」テーマに、バスロケ(バスロケーションシステム)の情報の標準化・オープンデータ化に取り組んでいる。神戸市だけをとっても、神戸市交通局、神姫バス、阪急・阪神バス、みなと観光、神戸交通振興など運営団体、企業によって独自のバスロケサービスが提供されている。これらのバラバラのバスロケのデータを、横断的を扱うことで交通分析に役立てることを目指す。今回、導入しているバスロケシステムの機能不足などから、神戸市交通局だけは標準化をうまく進められなかったそうだ。

ACALL

2014年設立の神戸拠点のスタートアップ。「場をデジタル化すること」を使命として、iPadを使った無料受付アプリ「ACALL」(アコール)などを提供する。神戸市東灘区役所との実証実験を経て、窓口の案内をスムーズにするアプリ「ACALL FRONT)」(アコールフロント)を開発。実際に2018年12月より同区役所に導入されている。実証実験では、職員の案内不可件数が61.7%減少、1件あたりの平均案内時間も36.9%減少し、窓口業務の効率化を実現できたという。具体的には、埋火葬許可証の写し、マイナンバーカードの新規交付・紛失届・再交付、麻薬免許などの、区役所のさまざまな案内を自動化している。

モンスター・ラボ

レセプトのチェック業務を同社が開発したRPAツール「Monstar Robo」(モンスター・ロボ)を導入して実証実験を実施。具体的には、レセプトの原票を参照して正確にデータを再入力するRPAの技術を導入。この結果、これまでは職員の手作業のチェックで要していた時間を、年間で最大459時間削減(1カ月で約38時間)できたそうだ。今後はレセプトチェックの範囲の拡大なども目指すという。

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TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。