「Backlog」「Cacoo」「Typetalk」という3つのツールを通じて、チームのコラボレーションを支援するヌーラボ。同社は9月28日、East Venturesを引受先とする第三者割当増資により1億円を調達したことを明らかにした。
今回の資金調達により、オランダのアムステルダムに新たな拠点を開設。開発体制や海外でのマーケティングを強化していくことに加え、各プロダクトの機能改善やプロダクト間の連携を強めながら、さらなる成長を目指していく。
3つのサービスでチームのコラボレーションを促進
「チームのコラボレーションを促進する」という軸の下、現在ヌーラボでは3つのサービスを提供。中でもオンライン上でワイヤーフレームや組織図を手軽に作成できるCacooは現在280万人のユーザーを抱える。海外ユーザー比率は86.2%にのぼり、100ヵ国以上で使われている点が特徴だ。
リリースから10年以上が経過したプロジェクト管理ツールBacklog(2005年ベータ版リリース)は現在5万社、78万人が利用。有償版を利用する企業数は5000社を超え、同社の売り上げの8割以上を占める主力サービスとなっている。
2014年にリリースしたビジネスチャットツールTypetalkはCacooやBacklogに比べるとまだユーザー数は少ないが、「福岡市トライアル優良商品」に認定され福岡市役所にも導入されている。Slackやチャットワークを筆頭に競合するツールも多いが、単独での機能面やマーケティングの強化に加えて、他の2サービスとの連携を強めてシェア拡大を目指していく。
さらなる成長を目指して、投資家から初の資金調達
ヌーラボは2004年に代表取締役の橋本正徳氏ら3人が福岡で創業したスタートアップだ。現在も本社は福岡だが、東京と京都に加えニューヨークとシンガポールにも拠点を保有し、他地域で事業を展開。Cacooを筆頭に海外ユーザーも多く抱えている。
2013年に受託をやめ、それ以降は自社サービスに集中。2014年リリースのTypetalkだけでなく、長年提供してきたCacoo(2009年ベータ版リリース)やBacklogも継続的に成長している。ヌーラボの昨年度の売上高は約6億円。今季はさらに140%の成長を見込んでいるという。
実際のところ「自己資金だけでやれないこともない」と橋本氏は話すが、今後成長スピードをさらに加速させるため、今回初めて外部の投資家から資金調達を実施。オランダ・アムステルダムに拠点を新設することも決めた。
「国内、海外のようなロケーションを特に意識はしていない。それよりも自分たちの提供するツールを使ってくれる可能性のある人たちがいるから、世界にもでていこうという考え方。これまでグローバルで展開してきて、特に先進国では物価の差もあって資本力がすごく必要だということを実感した。今まで以上に海外展開にも力を入れていくことを踏まえて、外部からの資金調達を決めた」(橋本氏)
ヌーラボに出資したEast Venturesは、日本国内だけでなくアジアを中心に海外スタートアップにも投資をしている。グローバル展開の実績があるスタートアップ、VCというのが双方にとって好印象で、今回の話が実現したそうだ。
プロダクト間の連携を強化し、クロスセルを本格化
調達した資金はマーケティング及び開発体制の強化に用いる。現時点でもヌーラボにおける外国人(第一言語が日本語ではない)比率は25%ほど。ただ「作るチームがグローバライズされていないと、グローバルなプロダクトは作れない」(橋本氏)という考えの下、今後はさらにこの比率を高めるべく地域に問わず採用をしていくつもりだという。
プロダクトについては個々で機能改善をしつつ、近年は相互連携の強化にも力を入れている。9月にはそれまで対応できていなかったBacklog側の準備が整い、全サービスの契約や支払い、ユーザー管理などを1つのヌーラボアカウントでできるようになった。
これを機にヌーラボでは今後クロスセルを本格化する。たとえば海外のCacooしか使っていないユーザーにBacklogやTypetalkも合わせて使ってもらうなど、ユーザー数の多いCacooを起点にBacklogなどの有料ユーザーを獲得していくのが狙いだ。
Cacooは今のところ無料ユーザーが多く、「有料で使ってもらえるユーザーをいかに増やせるか」が目下の課題だそう。海外ユーザーの方が有料課金のハードルが高いというから、Cacooで顧客との接点を増やしつつ、BacklogやTypetalkで課金してもらうということもありえそうだ。
ちなみになぜ新拠点にアムステルダムを選んだのだろうか? 橋本氏によると「(スタートアップ文化が盛り上がってきているという)時代の流れ的にアムステルダムかベルリンかで悩んだが、福岡からのアクセスや英語の通じやすさなどを検討してアムステルダムに決めた」のだという。(橋本氏がテクノミュージック好きであることも、気持ちの面では多少影響しているそうだ)。
ヌーラボにとってはアジア展開におけるシンガポール拠点と同じような位置付けで、アムステルダムをハブとしてヨーロッパでも事業を拡げていく計画だ。