第2四半期の資金調達データから見る2020年後半の見通し

著者紹介:

Russ(ラス)氏は、DocSend(ドックセンド)の共同創立者兼CEOである。彼は彼自身のスタートアップ企業であるPursuit.comの買収を機にFacebook(フェイスブック)のプロダクトマネージャーに転身した経歴を持つ。Dropbox(ドロップボックス)、Greystripe(グレイストライプ)そしてTrulia(トゥルーリア)でもキャリアを積んでいる。ラス氏についての詳細は、@rheddlestonおよび@docsendからフォローいただける。

今年の資金調達市場の動向は誰も想定できなかったと言っても過言ではない。2019年の落ち着いた動きとは異なり、今年の初めは2018年同様に大好調なスタートとなる傾向が見られた。しかし、3月以降はVCや創設者のための明確なロードマップが無くなってしまった

我々は、2020DocSend Startup Indexの3つの主要データ指標を追跡し、資金調達市場の動向をリアルタイムで監視している。DocSendプラットフォームにおけるピッチデックでの何千ものやり取りから取得した集計データそして匿名データを使うことで、市場における需要と供給そしてピッチデックでのやり取りの品質を追跡できるのだ。

主な指標は、Pitch Deck InterestおよびFounder Links Createdの2つである。これらは、ピッチデックに関わる活動を測定するもので、資金調達市場の今後の動向を示す重要な指標となる。関心がピークに達すると、資金提供の量は数か月後に増加する傾向にある。Pitch Deck Interestは、プラットフォームで毎週実施される各創設者とのピッチデックのやり取りの平均数によって測定され、これは、需要に対する優れたプロキシである。

Founder Links Createdとは、毎週創設者がデックに作成している一意のリンク数である。DocSendで創設者がドキュメントを送信すると、その送信先の投資家に一意のリンクが付与されるため、創設者が1週間にデッキを共有している投資家の数を調べることにより、これを供給のプロキシとして使用できる。

我々が確認した第2四半期の傾向と今年後半への影響を以下にまとめた。

VCは投資先を求め品定め中である

VCの関心は、前四半期と比較して全面的に過去最高となっている。パンデミックが宣言され、自宅待機の指示が出されてから数週間の間に関心は元に戻った。しかし、関心がパンデミック前のレベルに戻った後、驚くべきことが起きた。上昇し続けたのである。実際、今年のVCの関心の上位10週間はすべて第2四半期が占めている。全体的に述べると、関心は前四半期比の21.6%そして、前年比の26%まで上昇している。これはつまり、VCが過去2年間のどの時期よりも多くのピッチデックを閲覧しているということを示している。

春の終わりから夏にかけてVCの関心が落ち、8月の最後の2週間で底を打つというのが従来の流れであるにもかかわらずである。春に来る初めのピークの後、VCの関心は通常10月まで回復しない。

しかし、現在VCが多くのデックとやり取りしている様子が見て取れるだけでなく、我々はこのようなやり取りの質を判断することもできる。VCがデックを読むのに費やす時間を測定するのである。以前の調査結果によると、ピッチデックでのやり取りの平均時間は、3分半以下であることが分かっている。しかし、第2四半期では、VCがデックを読むのに費やす時間は、着実に短くなっており、四半期の終わりに向かけては、2分を切った。 つまり、VCがデックの査読にあまり時間をかけていないことが分かる。要するに、VCは自分が何をしたいか知っていて時間を無駄にしたくないか、デックを詳しく読む時間を削減し、Zoomでの電話会議で創設者から話を聞くことを選んでいることになる。

創設者にとっては、簡潔なデックを用意するということが以前より重要になっているのである。スライドは20枚以下に留め、送信済みのデックに追加で補遺資料を送るのはやめるべきである。スライドは簡潔で十分考えられた内容にする(送信済みデックをまとめる方法を記したガイドをこちらでお読みいただきたい)。

ピークを迎えたショッピングシーズンに、依然としてVCとのミーティングに持ち込めない場合は、資金調達戦略を変更することを検討すべきである。

創設者のタイムラインに変化が

直近の四半期において、創設者が送信したリンクの数が明らかに急増している。第 1 四半期に比べ、第2四半期で創設者が送信したデックリンクは、11%上回っている。しかし、興味深いのは、3つの個別の状況において、作成されたリンク数が、2019年の数字を下回っていることだ。つまり、不安定な時期に創設者が急いでデックを送信していた一方で、彼らが送信を控えていた週も多くあったことになる。

この矛盾は、いくつかのことを物語っている。1つ目は、創設者が資金調達活動を短縮した可能性が高いことである。今年の初めに我々が行った調査によると、平均的なプレシードラウンドは完了までに3か月以上かかることが分かっている。パンデミックの最中に資金を調達する人々にとって、3か月は一生のように感じるられるだろう。これは、予定が詰まったVCとの会議を設定するプロセスが原因なだけでなく、潜在的な投資家からフィードバックをもらい、デックを作成し、新しいターゲットに送信するという繰り返しのプロセスが原因でもある。世界的に先行きが不透明な中、多くの創設者たちが、資金調達活動を数週間に留めることで、事業から離れる時間を短縮しようと判断する可能性は高い。

2つ目は、パンデミック初期に大幅なコストカットを行ったために、多くの創設者たちにとって予想よりランウェイが長くなったのである。最近行った調査によると、50 %近い創設者が資金調達活動を前倒し、または遅らせることでそのタイムラインを変更したことが分かっている。創設者は、自社の評価を維持するために、不安定な資金調達市場を避けるという判断をする余裕があったのである。

3月に生じるはずであった関心の代替以上のものがみられる見込み

3月に生じた混乱により、4月と5月始めの資金調達市場での動きが鈍化することは簡単に予測できた。しかし関心は持続しているため、特に季節性を考慮すると、これが依然として当てはまるとはいい難いだろう。第2四半期の最後の週では、2019年と比較して、37%、2018年と比較して18%関心の増加がみられた。資金調達における活動レベルでは、明らかにニューノーマル(新しい日常)の時代に入っている。

評価が変動する一方で、VCが投資先を求めて品定めをするのは明らかである。理由は、2008年の金融危機を調べれば一目瞭然である。危機から生まれた企業は、大規模かつ大胆な解決策を必要とする現実的で体系的な問題に取り組む傾向がある。またパンデミックにより、取り組む価値のある多くの社会的問題が表面化した。

現在の傾向から見る第3および第4四半期

VCが投資先を求めて品定めをすることが明白で、またこれが今年の初めの関心を代替するものではないことが明白である場合、これは将来的に何を意味するだろう?創設者は通常、夏の終わりごろ活動を活発化させ、秋ごろにVCの関心がピークに達する。創設者の活動は増減しているが、VCの関心は安定して上昇してきており、つまりこれは資本を展開するための累積需要が依然としてあることを示している。また数か月後には、資金調達を遅らせた多くの創設者が市場に参入していくのを目の当たりにするはずである。パンデミックの状況が悪化した場合は、資金調達活動を来年にしてタイムラインを繰り上げる創設者も見られるかもしれない。

現在のレベルの関心がVCのニューノーマルを表していると考えると、秋ごろに関心の増加がみられると予測される。また、初秋から晩秋にかけてさらに多くの創設者がオンラインでの活動を始めると、その累積需要は市場をより活発にするはずである。創設者の方々には、投資家の関心の上昇、そして少なくとも1回目のピッチ会議を持つための競争が沈静化している現在の状況を有効活用し、今すぐ資金調達を始めることをお勧めしたい。

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カテゴリー:VC / エンジェル

タグ:コラム

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(翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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