米司法省がMastercardのオープンバンキングスタートアップFinicity買収を承認

米司法省は、Mastercard(マスターカード)によるユタ州ソルトレイクシティ拠点のオープンバンキングスタートアップ、Finicity(フィニシティー)の買収を承認した。買収金額は8億2500万ドル(約862億2000万円)と推定されている(Business Wire記事)。

「当社は司法省が私どもの計画しているFinicity買収の審査を終え、契約を進めることを承認したという通知を受けました。この節目に到達したことを大いに喜んでいます」とMastercardが声明で述べている

Finicityは、ユーザーが自分の財務情報がどのように共有され、誰が自分の金銭取引を代行できるかを、オープンAPIを通じて決められるサービスだ。この買収によってMastercardは、自ら力仕事をすることなく消費者や企業に提供する取引の選択肢を増やすことができる。

CrunchbaseによるとFinicityは、これまでに8000万ドル(約83億6000万円)のベンチャー資金を調達している。契約が完了すると、10億ドル(約1045億1000万円)近い2020年最大級のフィンテック買収になる。

今回の司法省の承認は、同省がVisa(ビザ)の53億ドル(約5539億2000万円)のPlaid(プレイド)買収を阻止する反トラスト訴訟(未訳記事)を起こしてから2週間後のことだった。Plaidは自社データネットワークを通じて、VenmoとAcronsなどの大規模な財務サービスを支えており、買収によってVisaはオンライン支払いサービスを独占すると訴えられている。

Plaidは一連の批判を否定し、「Visaはこの契約を強く保護する意向」であると発言している。当局は、Intuit(インテュイット)が2月に発表(未訳記事)した70億ドル(約7315億1000万円)のCredit Karma(クレジットカルマ)買収提案にも目を光らせている。

Mastercard – Finicity買収の承認は、フィンテックスタートアップの価値を高めるカンフル剤になるかもしれない。PlaidとCredit Karm両社の契約に対する規制当局の監視が強まる中、果たして大規模M&Aはフィンテックユニコーンの選択肢になりうるのかという疑問が投げかけられていた。

もし規制当局の関心によって道が閉ざされるのであれば、フィンテックスタートアップはもっと早くにに安く身売りするか、最終的なIPOまで待つかのいずれかになる。もしそうであれば、ベンチャーキャピタリストはこの分野への投資を避けるかもしれない。しかし、Finictyの買収承認によって価値5億ドル(約522億6000蔓延)以上のフィンテックM&Aがすべて監視の悩みに直面するわけではないことがはっきりした。これはレイトステージフィンテックの評価額にとって歓迎すべきニュースだ。

関連記事:米司法省が阻止しようとするVisaとPlaidの合併問題を理解するための「火山モデル」

カテゴリー:フィンテック
タグ:MastercardFinicity買収米司法省

画像クレジット:gmutlu/iStock / Getty Images

原文へ

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。