米国で国家安全保障リスクとなっている可能性があるとして、TikTokに厳しい精査の目が向けられている中、中国の人にとってなくてはならないメッセージングアプリのWeChatも米政府から非難を浴びている。
ホワイトハウスの通商アドバイザーであるPeter Navarro(ピーター・ナバロ)氏は米国時間7月12日に「TikTokとWeChatが中国本土で最大の検閲場所となっている。ゆえに断固たる措置を視野に入れている」とFox Businessに述べた。
ナバロ氏は「子供が楽しみ、便利そうなモバイルアプリに集まるデータはすべて中国にあるサーバーに保存される。つまり中国軍、中国共産党、我々の知的財産を盗みたがっている中国当局の管理下におかれる」と主張している。
WeChatは、この発言に対するコメントを控えた。TikTokはTechCrunchへの声明で「ユーザーのプライバシーを守ることは当社にとって重要な優先事項だ」とし、「TikTokユーザーのデータを中国政府と共有したことはなく、共有するよう依頼が行わない」と述べた。
この2つのアプリの使用制限に関する最大の違いは、影響を受ける場所だ。中国外では、WeChatは主に四散している中国人、そして中国で事業を展開していたり中国と何らかのつながりがある企業が使用している。一方のTikTokのメインユーザーは世界中の若者だ。
WeChatは中国において、レストランでの支払いや診察の予約まで日々のさまざまな活動に活用されているが、中国外でのWeChatの機能はメッセージだけにほぼ制限されている。その他の機能は外国の競合相手が提供している。
もし米政府による制限が導入されればの話だが、制限がどのようなものになるのかは不透明だ。WeChatユーザーはすでに、中国にいる家族や帰国した友人と連絡を取り合うための他の方法を検討している。Tencent(テンセント)所有のメッセンジャーアプリであるWeChatがAppleのApp StoreやGoogle Playから削除されても、米国拠点のユーザーは他の地域で展開されているストアからアプリをダウンロードすることはできる。IP制限がかかっても、ユーザーはVPNを通じてアプリにアクセスできるかもしれない。VPNは中国の多くの人にとって、中国政府のグレート・ファイアウォールでブロックされているオンラインサービスにアクセスするのになじみのあるツールだ。
VPNは検閲との戦いのためだけのものではない。海外居住の中国人が、ライセンス制限のために海外では利用できない中国のビデオプラットフォームの番組をストリーミングするためにIPアドレスを中国に設定するのは珍しくはない。
ナバロ氏のメッセージは、米政府がTikTokを禁止することを検討していると米国務長官Mike Pompeo(マイク・ポンペオ)氏が明らかにしてすぐのものだ。中国のインターネット新興企業であるByteDance(バイトダンス)が展開しているTikTokは、データを米国とシンガポールに保存したり、企業構造を徹底的に見直すなどして、中国企業と一線を画してきた。
声明の中でTikTokは「当社で情報安全を担う米国人の担当者は何十年も米国の法執行当局での経験があり、セキュリティに関する経験も持つ。TikTokの親会社は最も知られている米国の投資家の支援を受けている私企業であり、役員5人のうち4人がそうした投資家から送られている」と強調した。
にもかかわらず、米国の企業は安全上の懸念を理由とする政治家のTikTokボイコットの呼びかけに応じている。Wells Fargo(ウェルズファーゴ)は従業員にスマホからTikTokを削除するよう求め(Bloomberg記事)、Amazon(アマゾン)も同様の対応を従業員に指示したが、その後すぐに撤回した(The NewYork Times記事)。
画像クレジット:WeChat
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(翻訳:Mizoguchi)