1月20日、ドナルド・トランプ大統領の退任に世界が気を取られている間に、フロリダの無名企業が国防総省から大量のIPアドレスの管理権限を与えられたとWashington Postが伝えています。このGlobal Resource Systems(GRS)と名乗る企業は2020年9月に設立されたばかりでトランプ氏の退任後すぐに国防総省が持つ5600万のIPv4アドレス管理権を主張し、その数は3か月後に1億7500万件にまで増加しました。
1億7500万件といえば約43億あるIPv4アドレス総数の約6%に相当する数で、これほど大量のIPを持つのは民間企業では大手通信キャリアぐらい。米国防総省の「Defense Digital Service」のディレクター、ブレット・ゴールドスタイン氏はこの動きは軍が持つIPアドレスの不正使用を研究・防止するための「試験的な取り組み」の一環だと述べています。また国防総省はIPアドレスの管理権そのものは依然として所持していると述べています。
GRSが具体的に何をしているのかは定かではありません。また政府との契約情報は見当たらず、公開されたウェブサイトすらないため、いったい何をする会社なのかもわかりません。一説には、この会社は国防長官直属のDefense Digital Serviceと呼ばれるチームが関わっているともいわれている模様です。
国防総省や軍は、米国に敵対的な政府やサイバー犯罪者が、国防総省が抱えている未使用のIPアドレスを乗っ取るのを防止するため、専門チームの知識を利用しようとしているのかもしれません。これによって国防総省は、攻撃者がオンラインでどのように活動しているか、また、なにか起こる前に潰しておくべき設定ミスがないかといったことを得られるのかもしれないとセキュリティ専門家が推測していると、Washington Postは述べています。
(Source:Washington Post。Engadget日本版より転載)