職場でのハラスメントと孤立感、不屈の精神について4人の女性エンジニアに聞く

女性エンジニアはしばしば、職場やキャリアに関して男性エンジニアは経験しない障害に直面する。なぜなら、エンジニア人口の中で女性は今でも少数派であるためだ。数え方にもよるが、全エンジニア職のうち、女性が占める割合はわずか13~25%である。この偏りが力関係の不均衡につながり、女性にとって有害な職場を作り出している。

この点で非常に有名かつ悪質な事例は、Susan Fowler(スーザン・ファウラー)氏がUber(ウーバー)で経験したものだ。ファウラー氏は2017年2月に投稿したブログ記事の中で、入社初日に上司が社内チャットでセックスに誘ってきたことを暴露した。その後、ファウラー氏はUberでの体験を詳述した回想録「Whistleblower」(邦題仮訳:「内部告発者」)を出版した。

ファウラー氏の辛い経験は、女性エンジニアが職場で対処しなければならないハラスメントにスポットライトを当てることになった。男性優位になりやすい職種であるエンジニアとして女性が直面するハラスメントは、ファウラー氏の身に起きたような露骨なものから、日常的に起きるマイクロアグレッション(明らかな差別に見えなくとも、先入観や偏見を基に相手を傷つける行為)までさまざまだ。

本稿の執筆に際して、以下の4人の女性が自分の直面した試練について語ってくれた。

  • Tammy Butow(タミー・バットウ)氏、主任ソフトウェアリライアビリティエンジニア(SRE)としてGremlin(グレムリン)に勤務
  • Rona Chong(ロナ・チョン)氏、ソフトウェアエンジニアとしてGrove Collaborative(グローブ・コラボラティブ)に勤務
  • Ana Medina(アナ・メディナ)氏、シニアカオスエンジニアとしてグレムリンに勤務
  • Yury Roa(ユーリー・ロア)氏、SREテクニカルプログラムマネージャーとしてコロンビアのボゴタにあるADL Digital Labs(ADLデジタル・ラブズ)に勤務

ファウラー氏もSREとしてUberでメディナ氏(後にUberに1000万ドル[約11億円]の支払いを求めた差別訴訟の原告団に参加した)と同じチームで働いていたことは注目に値する。女性エンジニアの世界がどんなに狭いかを例証していると思う。上記の4人が受けたハラスメントの程度はそれぞれ異なるが、彼女たちは皆、日常的に試練に直面しており、中には精神的にかなり消耗したものもあると語ってくれた。しかし、彼女たちはまた、目の前に立ちはだかるどんな障害でも乗り越えてみせる、という強い決意を示していた。

職場での孤立感

彼女たちがどの職場でも直面した最大の問題は、少数派であるがゆえの孤立感だった。そのような孤立感は、時には自信喪失や居場所のなさという克服し難い感覚につながる場合があるという。メディナ氏は、男性エンジニアたちが意図的あるいは無意識に取った態度によって、職場で迷惑がられていると感じたことが何度もあったそうだ。

メディナ氏は次のように説明する。「私にとって本当につらかったのはマイクロアグレッションが日常茶飯事だったことです。そのせいで労働意欲が低下したり、出勤したくないと思ったり、ベストを尽くしたいという気持ちが薄れたりしました。その結果、自分の自尊心が傷ついただけでなく、エンジニアとしての自分の成長でさえも自分で認められなくなってしまいました」。

ロア氏は、孤立感はインポスター症候群につながる場合があると述べる。だからこそ、エンジニア職にもっと女性を起用し、職場に女性のメンターやロールモデル、仲間を作ることが重要なのだ。

ロア氏は次のように説明する。「チームの中で女性がたった1人という状況にある私たちの前に立ちはだかる障害の1つがインポスター症候群です。職場に女性が1人あるいは数人しかいない場合、これは本当に大変な試練となります。そのような時、私たちは自信を取り戻す必要がありますが、そのためには女性のロールモデルやリーダーの存在が非常に重要なのです」。

チョン氏も、自分と同じ思いをしつつも乗り越える道を見つけた人がいることを知ることは重要だという意見に同意する。

チョン氏は次のように語る。「他の人が自分の職場での仕事や試練、それを乗り越えた方法について真実を話してくれたのを聞いて、私もテック業界で働き続けようという励みを得られました。テック業界を離れるべきか悩んだ時期もありましたが、個人的に話せる人や先例になってくれる人が近くにいて、先ほど話したようなサポートを得られたことが本当に助けになりました」。

バットウ氏は、エンジニアになったばかりの頃、自分がコードを書いたモバイルアプリが賞を獲得した際にとある記事の取材を受けた時のことを語ってくれた。出版されたその記事を見て、バットウ氏は愕然とした。見出しが「Not just another pretty face……(このエンジニアは顔が美しいだけではない……)」となっていたからだ。

「『え、それが見出しなの?』と思いました。記事が出たら母に見せようと楽しみにしていたのですが、見せるのをやめました。私はあのアプリのコードを書くのに膨大な時間を費やしました。どう考えても私の顔は関係ありません。こういう小さなこと、一般的には大したことではないと言われるようなことの多くが、実は小さなマイクロアグレッションなのです」。

不屈の精神で乗り越える

これらすべてのことを経験してもなお、彼女たちはみんな、自信喪失を乗り越えてエンジニアとして成功するための専門的な技術スキルが自分たちにあることを示したいという強い願いを抱いている。

バットウ氏は10代の頃から前述のような誤解と戦ってきたが、そのせいで自分の進みたい道をあきらめることはなかった。「そのような誤解については気にしないようにしました。実はスケートボードをやっていたせいで、周囲の誤った見方に直面することがよくあったんです。同じことですよね。スケートボードに乗りたくて公園に行くと『トリックの1つでもできるのか?』って言われるので、私は『見てて』って答えて、実際にトリックをやってみせていました。同じようなことが世界中のさまざまな場所で頻繁に起きていて、ただひたすらにそれを乗り越えていかなければならない。私もそうです。やりたいことは決してあきらめません」。

チョン氏は、落胆の気持ちに負けたりはしないが、そんな時は、そういうことを話せる他の女性の存在が大きな力になると語る。

チョン氏は次のように回想する。「忍耐したい、あきらめたくないと強く願うと同時に、もう投げ出したいと思ったことも実際はありました。でも、他の人の経験を知る機会を得たり、自分と同じ経験をしている人が他にもいることを知ったり、そのような人たちが自分に合う環境を見つけて試練を乗り越えていくのを見たりしたこと、そして彼女たちに『あなたなら大丈夫』と言ってもらえたことによって、踏みとどまることができました。そうでなければ、テック業界で働くことをやめていたかもしれません」。

女性同士で助け合う

チョン氏のような経験は珍しくないが、チームの多様性が高まれば、少数派のグループ出身のチームメンバーが増えて、お互いに助け合える。バットウ氏がある時点でチョン氏を採用してくれたことが、チョン氏にとっては大きなきっかけになったという。

チョン氏は次のように語る。「他の女性を同じ職場に採用することによってネットワーク効果が生まれます。そして、その効果を拡大していくことができると思います。そうすることによって、変化を作り出したり、自分たちの望む変化を感じたりでき、より居心地の良い職場環境を作ることができます」。

メディナ氏は、テック業界で働くラテンアメリカ系や黒人の人材を増やすことを目指している。特に女子学生や若い女性たちにテック業界への興味を持ってもらうために、同氏はTechnolachicas(テクノラチカス)という団体を設立し、Televisa Foundation(テレヴィサ財団)と提携して一連のコマーシャル動画を制作した。合計6本の動画のうち、3本は英語、3本はスペイン語で制作された。女子学生たちにSTEM(科学・技術・工学・数学)分野でのキャリアの道を進む方法を紹介することが目的だ。

「どの動画も、18歳未満の女子だけではなく、その子に影響を与えうる大人および親、つまり18歳未満の若者たちの成長にとって絶対に欠かせない大人たちを対象に制作されています。若者たちがSTEM分野に興味を持ち、それをキャリアとして選択するよう励ますためにそのような大人たちができることについて紹介しています」。

バットウ氏によると、重要なのは人々のやる気を引き出すことだという。同氏はこう語る。「私たちは、自分たちの経験について話すことによって、他の女性たちにインスピレーションを与えることができればと思っています。そのようなロールモデルの存在はとてつもなく重要です。共感できるロールモデルが近くにいることが実は最も重要であるということは、多くの研究で証明されています」。

彼女たちは最終的に目指していること、それは、エンジニアとして自分のベストを尽くすことに集中できる職場環境を整えるためのサポートを、本稿で紹介したような苦労をしなくても得られるようにすることだ。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:エンジニアハラスメントインタビュー女性

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(文:Ron Miller、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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